ごめんなさい。俺の運命の恋人が超絶お怒りです。2

しーぼっくす。

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 第17話:こういうことは、理屈じゃないのね。

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 着替えを終えた愛那は自室へと戻っていた。
 一人になりたいと伝え、ナチェルとモランには部屋の中にいてもらっている。
 そして自分はバルコニーの椅子に座って夕暮れ時の空を見上げていた。
(どうしよう・・・・・・)
 救世主だからという驕りか、あんなに楽しみにしていた初の魔物討伐にこんな結果が待っていようとは・・・・・・。

 あんなに気持ち悪く、おぞましい思いをしたのは生まれて初めての経験だった。
 もし自分が猫だったら、あの時全身の毛を逆立てていたことだろう。
(今だったら、あの時のみんなの気持ちがよくわかる・・・・・・)
 以前愛那は、部活の合宿所で現れたゴキブリに、みんなが阿鼻叫喚する姿に驚かされたことがあった。あの時はまかせろとばかりに率先して退治し、ヒーローのようにみんなに尊敬され感謝されたものだ。
(ゴキブリなんて、特に害があるわけでもなし、直接触るのは病原菌があるかわからないから遠慮したいけど、あそこまで嫌われる意味がまったくわからなかった。けど、こういうことは、理屈じゃないのね)
 スライムの時は気配があまりに微弱なものだったので、上手く魔物の気配を感じることが出来るか不安だったというのに・・・・・・。
(本当にどうしよう・・・・・・。訓練すればあの気配に慣れて平気になることが出来るのかな?)
 愛那は憂鬱な気分でがっくりと肩を落とし、溜め息を吐いた。

「というわけで、マナは今すごく落ち込んでいるんです。明日も行く予定でしたが、今日のような暴発の危険を考えると、中止した方がいいかもしれません」
「人的被害の可能性を考えれば、その方がいいだろうな」
 ライツの意見にリオルートが同意する。
「こういった前例はないので、魔物の気配に慣れてもらうまでにどれくらいの時間がかかるのか、わかりませんね」
 ハリアスの言葉にライツが頷く。
「救世主としての役目を果たすということに前向きなマナのことだから、頑張ってはくれるだろうが、正直、俺としては彼女に無理はさせたくない」
「あの・・・・・・」
 そこに、ずっと無言で聞いていた神官長がおずおずとした口調で会話に参加してきた。
「ということは、救世主様の活躍は当分先のことになると、理解しておいた方がいいということですか」
 神官長として、魔物被害が長引くだろうというこの重要な情報は、国王へと持ち帰らなくてはならない。
「いや・・・・・・」
 そこで何か考えついたのか、神官長に否定の言葉を吐いたのはライツだ。
「その必要はないだろう。マナに無理を強いることなく、救世主としての役目を果たす方法がある」
「え?」
「本当ですか!?」


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