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第16話:新たな御神託を賜りましたので。
しおりを挟む「俺は、救世主の居場所を誰からも悟らせぬよう気をつけてくれと伝えたつもりでしたが?」
部屋に入った挨拶無しの開口一番、ライツが怒気を込めてそう問いかけると、神官長は青ざめた顔で深く頭を下げた。
「だ、大丈夫です。身代わりを置いてきました。私は王城の神殿にいることになっておりますので」
「大体、何をしに来たんですか?」
「新たな御神託を賜りましたので、それを救世主様にお伝えしたく」
「御神託?」
ライツは土下座をして神に謝罪し、それ以後、神の間に足を運び続けている愛那のことを思い出し怒気をおさめた。
ライツ自身、愛那と出会うことが出来て以後、神託付きだった【鑑定】が【鑑定】のみになったため、神の言葉をきくことが出来なくなっていた。
「神は何と?」
「申し訳ございません。今回の御神託は救世主様のみに伝えるよう、いわれてますので」
「・・・・・・マナを悲しませるような内容ではないだろうな?」
「それは・・・・・・大丈夫でございます」
「ライツ」
そこにソファに座るリオルートから声がかけられた。
「とりあえず、座れ。緊急の内容ではないようなので、御神託は後にさせてもらう。ルザハーツ家当主として、今後の方針について話し合いが必要だと感じていたところだ」
部屋の中には四人のみ。
リオルートと神官長、ライツとハリアスだ。
レディルは正体を明かさないまま、とりあえず別室に隠れているよう言われていた。
「そういえばマナの初討伐はどうだった?」
「・・・・・・それが、スライムの討伐までは順調だったのですが」
「何か問題が?」
「草むらの中にいて姿が見えず、はっきりとは言えませんが、おそらくラグマッツだと思います」
「ラグマッツ? あの? いきなり突進してくるのはやっかいだが、危険性は低いし、討伐に苦労するような魔物ではないだろう?」
「ええ。討伐はしたんです。したんですが・・・・・・」
「?」
首をかしげるリオルートへ、ライツがその時の状況を話す。
「マナが魔物の気配に異常に反応して、魔法を暴発・・・・・・というか、それこそ通常騎士10名で討伐するメディラルを、一撃で討伐する位の魔力で一撃・・・・・・。その後、その場所の形状が少し変わってしまったので、元に戻すのに少々時間がかかってしまいました。・・・・・・と言っても、地の魔法に長けたハリアスがいたので殆ど任せてしまったが」
ライツの視線を受け、ハリアスが微笑する。
「・・・・・・そうか」
「マナの魔法の才能はとても高いものです。魔力操作の覚えも早い。平常心であれば、どんな魔物でも討伐は容易だと感じます。しかし・・・・・・」
「魔物の気配に異常な反応、だったか?」
「えぇ。魔物の気配の殆ど感じないスライムでは全く問題なかったのですが、あの反応は異常です。おそらく、俺達が感じているものとは違うのではないかと思います。すごく気持ち悪く感じるらしく。全身で拒否反応を示していました」
「・・・・・・それは、困ったな」
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