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「なんなんだ・・・これは・・・」
信じられないと言った顔を浮かべる東條。青ざめるような顔に絶望が色濃い。
そうだ、その顔だ。俺が求めていたのはその顔だ。
一度も砕けたことのない人間が、初めて絶望にうちひしがれるその姿。ゾクゾクと俺の背が痺れるような快感に飲まれる。
これだ!これだ!!!
「大河!何してるんだ!早く合流しろ!」
停止してしまった東條に檄を飛ばす槍本。無駄だ、そいつにはもう戦う気力は残っちゃいない。その絶望から立ち直るには、そいつはあまりに遅すぎた。
何よりもまず、18歳の今の今まで一度も挫折したことがないこと事態がおかしいのだ。
どこかでつまづいたことのある人間が相手だったなら 、この作戦は通用しなかったに違いない。出来ない自分を想像できない東條だから、万能で、尚且つ周りに恵まれて有言実行が全てだった彼だから『一度きりの失敗』で精神を崩壊させることができたのだ。
一度目の敗走で違和感を持ち、二度目の敗走で心が乱れ、三度目の敗走で自信が消える。
ましてや自分より劣っていると思っていた味方が一度も敗走していないのだ。俺たちの作戦は、確実に東條に刺さっていた。
俺は手を緩めることなく、大きく口元を歪ませる。
学校一の美男が、優秀で聡明な東條大河が、俺の手によって、俺の目の前で絶望している。己の無力さに震えている。
あぁ、これのためだけに俺は生きてきた。そういっても過言ではない。俺の歪んだ心が正常に満たされる。
「たっくん、これもう詰めちゃっても良いよね?」
「こちらも準備万端でござる。」
両隣から楽しそうな2人の声がする。いいぞ、それでいい。ゲームは楽しんでなんぼだ。楽しく、気持ちよく、美しく、蹂躙する。それがこのFPSゲームの醍醐味だ。オフライン対戦で相手の顔が見えるからこそ、得られる快感。
まあ、この二人は純粋に画面の中だけのゲームを楽しんでいるが、きっとその方が精神衛生的には良いだろう。
俺の楽しみ方は諸刃の剣だ。相手を傷つけ得られる快感も大きければ、自分が傷つき沸き上がる不快感もバカでかい。もし俺がこの場で東條にボコボコにされていたら、絶望していたのは俺の方だったかもしれない。
・・・いや、そうじゃないか。
数々の絶望を、数々の不快感を味わってきた俺にはこの程度の敗北はなんともない。
負けることが当たり前。不快なのが日常。負け続けてきた俺の人生。諦め続けてきた俺の人生。
勝つことが当たり前。快適なのが日常。勝ち続けてきた奴の人生。前だけ見ていればよかった東條の人生。
だから、俺が、東條の心を砕くことができた。
俺という敗者の属性が勝者に対する明確な勝利への回答だったのだ。そのほのかな毒気が着実に奴を蝕む。
勝利は目前だった。
「よし、一気に詰めるぞ。各個集中撃破で敵本陣を叩く!」
「「了解!!」」
「大河!!早くしろ!!」
槍本が俺たちの挙動に素早く反応し、その後の行動を瞬時に理解したのかより声を荒げる。東條は、ぶつぶつとなにかを呟いていた。
このFPS対決。俺たちの勝ちだ。
俺はコントローラーを一際強く握りしめた。
信じられないと言った顔を浮かべる東條。青ざめるような顔に絶望が色濃い。
そうだ、その顔だ。俺が求めていたのはその顔だ。
一度も砕けたことのない人間が、初めて絶望にうちひしがれるその姿。ゾクゾクと俺の背が痺れるような快感に飲まれる。
これだ!これだ!!!
「大河!何してるんだ!早く合流しろ!」
停止してしまった東條に檄を飛ばす槍本。無駄だ、そいつにはもう戦う気力は残っちゃいない。その絶望から立ち直るには、そいつはあまりに遅すぎた。
何よりもまず、18歳の今の今まで一度も挫折したことがないこと事態がおかしいのだ。
どこかでつまづいたことのある人間が相手だったなら 、この作戦は通用しなかったに違いない。出来ない自分を想像できない東條だから、万能で、尚且つ周りに恵まれて有言実行が全てだった彼だから『一度きりの失敗』で精神を崩壊させることができたのだ。
一度目の敗走で違和感を持ち、二度目の敗走で心が乱れ、三度目の敗走で自信が消える。
ましてや自分より劣っていると思っていた味方が一度も敗走していないのだ。俺たちの作戦は、確実に東條に刺さっていた。
俺は手を緩めることなく、大きく口元を歪ませる。
学校一の美男が、優秀で聡明な東條大河が、俺の手によって、俺の目の前で絶望している。己の無力さに震えている。
あぁ、これのためだけに俺は生きてきた。そういっても過言ではない。俺の歪んだ心が正常に満たされる。
「たっくん、これもう詰めちゃっても良いよね?」
「こちらも準備万端でござる。」
両隣から楽しそうな2人の声がする。いいぞ、それでいい。ゲームは楽しんでなんぼだ。楽しく、気持ちよく、美しく、蹂躙する。それがこのFPSゲームの醍醐味だ。オフライン対戦で相手の顔が見えるからこそ、得られる快感。
まあ、この二人は純粋に画面の中だけのゲームを楽しんでいるが、きっとその方が精神衛生的には良いだろう。
俺の楽しみ方は諸刃の剣だ。相手を傷つけ得られる快感も大きければ、自分が傷つき沸き上がる不快感もバカでかい。もし俺がこの場で東條にボコボコにされていたら、絶望していたのは俺の方だったかもしれない。
・・・いや、そうじゃないか。
数々の絶望を、数々の不快感を味わってきた俺にはこの程度の敗北はなんともない。
負けることが当たり前。不快なのが日常。負け続けてきた俺の人生。諦め続けてきた俺の人生。
勝つことが当たり前。快適なのが日常。勝ち続けてきた奴の人生。前だけ見ていればよかった東條の人生。
だから、俺が、東條の心を砕くことができた。
俺という敗者の属性が勝者に対する明確な勝利への回答だったのだ。そのほのかな毒気が着実に奴を蝕む。
勝利は目前だった。
「よし、一気に詰めるぞ。各個集中撃破で敵本陣を叩く!」
「「了解!!」」
「大河!!早くしろ!!」
槍本が俺たちの挙動に素早く反応し、その後の行動を瞬時に理解したのかより声を荒げる。東條は、ぶつぶつとなにかを呟いていた。
このFPS対決。俺たちの勝ちだ。
俺はコントローラーを一際強く握りしめた。
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