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転生〜統治(仮題)

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城へと戻ったルークとティナであったが、カレンはナディアの送迎中で不在だった。カレンが戻るまでの間、各自の自由時間となり、ルークはランドルフの残した手帳を読み進める事にする。没頭するあまり、つい独り言が大きくなっているのだが、本人は気付く様子もない。

「こんな方法があったのか!流石はランドルフさんだよなぁ・・・。いや、そもそもこの世界じゃきゃ、こんな製法は無理だろ!!だけど、これなら絶対に壊れないよな。美桜を優先するとして、次は雪椿・・・いや、まずは古代竜の所に向かったナディアの分かな?」
「でしたらセラとシェリーの分もお願い出来ますか?」
「別にいいけど、一体どうして?」
「お2人には、事前に竜人の国へ向かって頂いておりましたので・・・。」
「ふ~ん、そうなんだ・・・ってカレン!いつの間に!?」

ソファーに座って手帳を読んでいたのだが、いつの間にか正面にはカレンが座っていた。ニコニコしているのは気のせいだろうか?

「ほんの少し前に戻って来たのですが、真剣なルークの表情を見ていたら声を掛けるのが躊躇われまして・・・。率直に申し上げて、見惚れておりました。」
「そ、そうなんだ・・・。」
「それで、私に何か用ですか?」
「あぁ。折角だから、来れる人だけでも集まって貰った方がいいかな。」

こうしてオレは嫁さん達に声を掛け、ティナと共にエリド村での事を説明した。ちなみに集まったのは、ティナ、カレン、スフィア、ルビアである。他の者達は、学園やら仕事やらで不在であった。一通りの説明を受け、何時になく真剣な眼差しのカレンが呟き始める。

「あの子達は、そんな事を考えていたのですね。そうですか、私の把握していない生存者が・・・。魔の森にある転移門は監視していますから、残る方法は・・・」
「あの・・・カレン?」
「はい?あぁ、すみません。うるさかったでしょうか?」
「カレンさん、1人で整理せずに私達にも話しては頂けませんか?」
「それもそうですね。では、1つずつ整理してみましょう。」


この後、オレ達の間で共有された情報は次の通りである。

まず神々の遺産と呼ばれる武器や魔道具は、今も新大陸に置き去りとなっているそうだ。魔物や魔族には扱えない仕組みらしく、これは特に問題が無いとの事だった。詳しい場所について、カレンは知らないとの事である。

次に魔族の済む新大陸へ渡る方法だが、1つは転移魔法と魔の森にある転移門。そしてもう1つは、ライム魔導大国にあるダンジョンとの事であった。そこが最高難易度と呼ばれているのは、新大陸へと繋がっている為らしい。新大陸の魔物が迷い込んで来るが故に、最高難易度のダンジョンなのだと説明された。

一応裏技として、海を渡るという方法もあるらしい。しかし海には未確認の魔物が多数生息している為、現実的では無いとの事である。矛盾するのだが、エリド村の住人が新大陸へ向かう方法としては、海を渡るのが1番現実的との事だった。

最高難易度のダンジョンは厳重に封鎖されているが、強行突破すれば潜入は可能。海を渡るのも理論的には不可能ではない。よって、エリド村の住人達の居場所を特定する事は難しいとの事だった。

寝耳に水だった事もあり、生存者が何処の国にいるのかも不明。現状では、情報収集以外に出来る事は無さそうだという結論に達した。

ここでオレは、幾つか気になっている事を聞いてみる。話が多方面へ飛んでしまうのだが、それは勘弁して貰おう。

「質問なんだけど、セラとシェリーはどんな仕事をしているの?」
「えっ!?あ、あの2人には、この国の親書を届けて頂くのと、竜人国の視察を依頼してあります。」
「親書と視察?それって外交官の仕事だよね?」
「ほ、本来ならばそうなりますね。」

この時まで、スフィアは楽観的に考えていた。しかし、政治に無関心だったルークの口から突然『外交官』という役職名が飛び出したのだから、その動揺は凄まじい。

「あの2人は側室とは言え王妃でしょ?・・・使えない外交官がいるって事になるのかな?あとで会いに行ってみるか。」
「そ、それはやめておいた方がいいと思いましゅ!」
「「「「(噛んだ・・・)」」」」

普段見る事の無いスフィアの異変に、全員の心が通じ合う。しかし、当のスフィアはそれどころではない。ルークを誤魔化す為に、その頭脳をフル回転させる。

(2人が竜人の嫁探しに向かっていたなどと知られたら、ルークが何を言い出すかわかったものではありません。それに外交官に会ってしまえば、すぐに親書と視察が方便だとバレてしまいます。不本意ですが、誰かに助けて頂くしか・・・)

当然スフィアの焦りは、その場にいる全員に伝わっている。そしてそれは、スフィア自身も理解していた。しかし今のスフィアでは打開策が見出だせないのも事実。誰かに助けを求めようと考え、この場にいる者を見やる。

(カレンさんは・・・バカ正直に話してしまうでしょうから却下。ティナさんは・・・食べ物で釣られてしまうので論外。残るは・・・くっ!あの女に頼るしかないなんて・・・。)

ちなみにカレンとティナに対する扱いが酷いのだが、事実なので誰も口を挟む事は無い。ともあれ、スフィアは屈辱に満ちた視線をルビアへと向ける。その意図を汲み取ったルビアは、不敵な笑みを浮かべながらスフィアを見やると、ルークへと話し掛ける。

「突然ルークが部下に会いに行くのは問題よ?まずは上司に話を通さないと。」
「あぁ、それもそうだね。ちなみに上司って誰になるのかな?」
「教えてもいいんだけど、ルークの場合は宰相になる予定のユーナが最初。それ以外にも、実権を握ってるスフィアがいるでしょ?だから、スフィアに任せておくのが1番ね。(これは、貸し1ね?)」

ルビアは悪い笑みを浮かべ、スフィアを横目で見る。ルビアを毛嫌いしているスフィアは、屈辱のあまり顔を真っ赤にしてプルプルと震えているが、ルークは全く気付いていない。

「そういうものか・・・わかった。なら次の質問。ドワーフの件はどうなってるの?」
「そっちは場所の選定をして貰ってる最中よ?2、3日で終わると思うから、ルークに声を掛けるわ。」
「流石はルビアだね。残るは学園長とベルクト王国の者達の処遇かな?」
「呼んだかのぉ!?」
「普通に登場出来ないのかよ・・・。」
「「「「・・・・・」」」」

オレの『学園長』という言葉に反応したのか、窓の外には逆さまになった学園長の姿があった。相手にすべきではないのだが、学園長の話は避けて通れない。しかし、今後の為にもお仕置きは必要である。

「あ~!マドノソトニフシンシャガ~!!・・・炎よ来たれ。」
「ひぃっ!!」

棒読みで大声を上げてから禁呪を詠唱するフリをすると、学園長は悲鳴を上げると同時に上へと姿を消す。暫く待っていると、ドタバタと音をたてながら廊下を走る音が聞こえてくる。

勢い良く扉を開け、学園長が書斎に入って来ると同時にジャンピング土下座を披露した。スピード、高さ共に文句のつけようがない。着地の姿勢も美しく、流れるような動作は見ている者の心を奪う。

採点基準の厳しいオレであるが、今回は100点をあげよう。今のはオレが求めるジャンピング土下座である。いつかあの境地に辿り着く必要がある。今後の為にも。いや、土下座する予定は無い。無いのだが、身につけておいても損はあるまい。

まさか満点を貰ったとは思っていない学園長は、そのままの流れでオレに対して言い訳を始める。

「すまんかったのじゃあ!高い所を見ると、つい登ってみたくなるのじゃ!!」
「てめぇはバカか!?あ、ごめん、バカだったな・・・。」

何とかと煙は高い所が好きって言うもんな。じゃあ仕方ない。しかし学園長は、オレの言葉にモジモジし始めた。

「褒められると照れるのじゃ・・・。」
「褒めてねぇよ!危ないし警備の者が困るから、城の高い所に登るなって言ったよな?」
「確かに言われたが、だからと言って我慢出来ぬ事もあるのじゃ!」

学園長は肩幅より大きく両足を開き、右腕を真横に振りながら叫ぶ。カッコつけてるつもりだろう。しかし言動はカッコよくない。

「お前は子供か!」
「何を言うか!お主こそ、美女に迫られてもチ○コを大きくさせぬと言い切れると申すのか!?朝だって、勝手にチン○が大きくなるであろう!?」
「そっちは生理現象だ!」
「ならば私の場合も○ンコと同じく生理現象じゃ!朝勃ちならぬ、朝登りじゃ!!」

朝登りって何だよ・・・。ご来光を拝みに行く登山者じゃあるまいし。そんな事より、叱っておかなければならない事がある。

「やかましいわ!大体いい年した女が、公衆の面前でチ○コ○ンコ言うな!!」
「何を目くじら立てておるのじゃ!?お主のこ~んなにちっさいチ○コなど、よ~く探さねば何処にあるのかもわからぬわ!」

学園長が、親指と人差し指を合わせるようジェスチャーをする。いや、豆粒程度に隙間が開いているようだ。流石にそこまで小さくはない。そして何故オレの話になった?色々と否定しようとしたが、思わぬ方向から援護射撃が入る。

「あら?私は城で男性の股間を見る機会が多かったけど、ルークのは特大サイズよ?世界一じゃない?」
「ぶふぅ!ルビアさん!?」

ルビアのとんでもない発言に、オレの精神が三分の一ほど削られる。

「私も冒険者のモノを何度も見ていますが、確かにルークのは特大ですね。・・・初めての時は、アレが入り切るのか不安でした。」
「ぐふっ!ティナさん!?」

さらに三分の一削られる。このままでは危険である。早く学園長を止めなければ。

「ホ、ホントか!?」

顔を真っ赤にしながらも、鼻息を荒くして学園長がティナ達に歩みよる。

「私も未だに不安になりますが、ルークと過ごす夜は快楽に溺れてしまいそうになりますね。特大のアレで突かれる度に、意識が飛びそうになりますから。」
「ぐはっ!カ、カレンさん!?お願いだから、もうやめて!!」
「そ、その辺をもっと詳しく教えて欲しいのじゃ!!」

オレの静止も虚しく、学園長はルビア・ティナ・カレンを引っ張って部屋の外に消えてしまう。瀕死のオレに、皆を引き止める気力など無い。

残されたスフィアを見ると、顔を真っ赤にして視線を逸していた。オレが何とも言えない表情をしていると、突然頭を下げられる。これ以上の辱めに耐えるだけの精神力は残っていない。こっちが頭を下げたいくらいだ。そしてスフィアから告げられたのは、およそ見当違いの言葉であった。

「私は他の男性のアレを見る機会がありませんでしたから・・・比較は出来ません。ごめんなさい!!」
「聞いてねぇし!」


その後、冷静さを取り戻したスフィアによって、ベルクト王国から受け入れた者達の元へと案内されるのであった。なお暫くの間、学園長が頬を赤らめて逃げるようになったのは、本当にどうでもいい事である。
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