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番外編 八心
番外編第三話 吸気
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「直巳、もう大丈夫だ。」
「はぁ…はぁ…やっぱり…怖い…。」
黎はお嬢と抱き合ってキスをしながらその言葉を聞いていた。
「もう誰も暴れてない。何かあっても俺が何とかする。」
「はぁ…はぁ…」
「『口すぼめ呼吸』をさせてみてください。」
転校生の男子生徒が黎の言葉が自分に対して言っているのだと気づいた。
「口すぼめ呼吸?」
「はぁ…私…わかる…ふぅぅぅぅぅ…」
「そうです。」
「はぁぁぁぁぁ…。」
「…どうだ直巳?落ち着いたか?」
「精神科の先生に聞いたから…知ってた…。」
「やっぱり精神科に通ってたんですね。」
「お前、どうして直巳が精神科に通ってるってわかったんだ?」
「生命の危機的状況に陥った時の過呼吸です。過換気症候群なのではないかと思いました。吸気の割合に対して呼気の割合を…」
「ねぇ黎…。」
「どうしましたか?お嬢。」
「どうしてちゅーやめちゃうの?」
「すみませんお嬢。」
黎は再びお嬢とのキスを再開する。
「直巳、お前のことを理解してくれそうな奴がいてよかったな。」
その言葉をお嬢は聞き逃さなかった。
「ちょっと!!私の黎にその可愛い子にちょっかい出させようとしないでよ!!」
「お前おっかねぇな…。」
「いい?私は南グループのお嬢なの。南グループの事なら何でも…あんっ♡」
「お嬢、どうしてキスを止めてしまうんですか?」
「黎…んっ…♡」
お嬢と黎はキスを再開する。
「アキ…私ちょっと落ち着いてきた…。私達自己紹介まだしてないけど…どうしよう…。」
「その状態だと体も労らないといけないだろうからボクが代わりに自己紹介するよ。可愛い子の方は相川直巳。私立南ヶ丘高等学高って言う男子校から転校してきたよ。そしてもう一人の大柄な方は桑原アキ、同じく私立南ヶ丘高等学校の男子校から…」
「やっぱり2人もカップルだったのね。」
「俺達は大親友だ。」
「アキ…私はアキのこと…。」
「わーってるよ。とりあえず話を合わせておけ。そんで先生、俺達の席はどこだ?」
「相川は橘の隣で桑原はその反対側の隣だよ。
「え…い…いや…私あの2人…怖い…」
「なぁ先生、俺と直巳の席交換してくれねーか?」
「それはできな…」
「いいわよ。私に任せなさい。」
「お嬢…やっぱりお嬢は…」
「そうすれば直巳ちゃんと黎との距離が遠くなるから私もその方がいいと思うわ。」
「お嬢…。」
「お…お嬢様…!」
先程から怯ていた菱沼がお嬢のもとに駆けつけてくる。
「私も…あの2人が凄く怖いです…。」
「晶ちゃん。私は晶ちゃんを信じてるわ。晶ちゃんなら出来るわよ。」
「お嬢様…。」
「それに何かあったらすぐに助けに駆けつけるわよ。」
「お嬢、やっぱり…」
「黎がね。」
「…ですよね。とりあえずクラスの身の安全は守りますよ。それにあの2人、特にこちらから刺激をしなければずっと大人しく勉強してるんですね。」
「何の勉強…してるんだろう…。」
「直巳、気になるのか?」
「ちょっとだけ…でも…怖いから近づけない…。」
「なら、俺が聞いてきてやろうか?」
「アキ…!それは危ないよ…!」
「大丈夫だ。心配するな。」
アキは伊織と光のもとに歩みよる。
「おいお前ら、何の勉強してるんだ?」
「解析幾何ですけど。」
「私は…三角関数です…。」
「わかった。邪魔して悪かったな。」
そう言ってお嬢達のもとに戻る。
「かいせき…きかい?とさんかく…かん…なんだっけな…。」
「アキ…!それ解析幾何と三角関数!どっちも高校2年生で勉強する科目を2人はまだ中学生なのにもう勉強してるんだよ…!」
「ちょっと黎…全然話がわからない…。」
「解析幾何というのは図形と式などという単元で表されており古代から研究されてきた幾何学を現代の方程式でグラフ化したりする分野ですね。三角関数は原点を中心とした半径rの円において円周上の座標のx座標を半径rで割ったものをcosθ、同じく円周上の座標のy座標を半径rで割ったものをsinθと定義されたものから始め…」
「そうですっ!黎さんって頭いいんですねっ!」
「ねぇ黎っ!なんで私に分からない言葉を使ってこんな可愛い子と楽しそうにお話しするの!?私を1人しないでっ!!」
お嬢が泣き出してしまう。
「すみませんお嬢、また俺はお嬢を悲しませてしまいましたね。」
お嬢が黎に抱きついて、黎がお嬢の背中を手を回す。
「お願い…1人にしないで…。」
「わかってますお嬢。俺はずっとお嬢の側にいますよ。」
今までの会話を参考書を読みながら伊織は聞き逃さなかった。
次回 第四話 橈骨
「はぁ…はぁ…やっぱり…怖い…。」
黎はお嬢と抱き合ってキスをしながらその言葉を聞いていた。
「もう誰も暴れてない。何かあっても俺が何とかする。」
「はぁ…はぁ…」
「『口すぼめ呼吸』をさせてみてください。」
転校生の男子生徒が黎の言葉が自分に対して言っているのだと気づいた。
「口すぼめ呼吸?」
「はぁ…私…わかる…ふぅぅぅぅぅ…」
「そうです。」
「はぁぁぁぁぁ…。」
「…どうだ直巳?落ち着いたか?」
「精神科の先生に聞いたから…知ってた…。」
「やっぱり精神科に通ってたんですね。」
「お前、どうして直巳が精神科に通ってるってわかったんだ?」
「生命の危機的状況に陥った時の過呼吸です。過換気症候群なのではないかと思いました。吸気の割合に対して呼気の割合を…」
「ねぇ黎…。」
「どうしましたか?お嬢。」
「どうしてちゅーやめちゃうの?」
「すみませんお嬢。」
黎は再びお嬢とのキスを再開する。
「直巳、お前のことを理解してくれそうな奴がいてよかったな。」
その言葉をお嬢は聞き逃さなかった。
「ちょっと!!私の黎にその可愛い子にちょっかい出させようとしないでよ!!」
「お前おっかねぇな…。」
「いい?私は南グループのお嬢なの。南グループの事なら何でも…あんっ♡」
「お嬢、どうしてキスを止めてしまうんですか?」
「黎…んっ…♡」
お嬢と黎はキスを再開する。
「アキ…私ちょっと落ち着いてきた…。私達自己紹介まだしてないけど…どうしよう…。」
「その状態だと体も労らないといけないだろうからボクが代わりに自己紹介するよ。可愛い子の方は相川直巳。私立南ヶ丘高等学高って言う男子校から転校してきたよ。そしてもう一人の大柄な方は桑原アキ、同じく私立南ヶ丘高等学校の男子校から…」
「やっぱり2人もカップルだったのね。」
「俺達は大親友だ。」
「アキ…私はアキのこと…。」
「わーってるよ。とりあえず話を合わせておけ。そんで先生、俺達の席はどこだ?」
「相川は橘の隣で桑原はその反対側の隣だよ。
「え…い…いや…私あの2人…怖い…」
「なぁ先生、俺と直巳の席交換してくれねーか?」
「それはできな…」
「いいわよ。私に任せなさい。」
「お嬢…やっぱりお嬢は…」
「そうすれば直巳ちゃんと黎との距離が遠くなるから私もその方がいいと思うわ。」
「お嬢…。」
「お…お嬢様…!」
先程から怯ていた菱沼がお嬢のもとに駆けつけてくる。
「私も…あの2人が凄く怖いです…。」
「晶ちゃん。私は晶ちゃんを信じてるわ。晶ちゃんなら出来るわよ。」
「お嬢様…。」
「それに何かあったらすぐに助けに駆けつけるわよ。」
「お嬢、やっぱり…」
「黎がね。」
「…ですよね。とりあえずクラスの身の安全は守りますよ。それにあの2人、特にこちらから刺激をしなければずっと大人しく勉強してるんですね。」
「何の勉強…してるんだろう…。」
「直巳、気になるのか?」
「ちょっとだけ…でも…怖いから近づけない…。」
「なら、俺が聞いてきてやろうか?」
「アキ…!それは危ないよ…!」
「大丈夫だ。心配するな。」
アキは伊織と光のもとに歩みよる。
「おいお前ら、何の勉強してるんだ?」
「解析幾何ですけど。」
「私は…三角関数です…。」
「わかった。邪魔して悪かったな。」
そう言ってお嬢達のもとに戻る。
「かいせき…きかい?とさんかく…かん…なんだっけな…。」
「アキ…!それ解析幾何と三角関数!どっちも高校2年生で勉強する科目を2人はまだ中学生なのにもう勉強してるんだよ…!」
「ちょっと黎…全然話がわからない…。」
「解析幾何というのは図形と式などという単元で表されており古代から研究されてきた幾何学を現代の方程式でグラフ化したりする分野ですね。三角関数は原点を中心とした半径rの円において円周上の座標のx座標を半径rで割ったものをcosθ、同じく円周上の座標のy座標を半径rで割ったものをsinθと定義されたものから始め…」
「そうですっ!黎さんって頭いいんですねっ!」
「ねぇ黎っ!なんで私に分からない言葉を使ってこんな可愛い子と楽しそうにお話しするの!?私を1人しないでっ!!」
お嬢が泣き出してしまう。
「すみませんお嬢、また俺はお嬢を悲しませてしまいましたね。」
お嬢が黎に抱きついて、黎がお嬢の背中を手を回す。
「お願い…1人にしないで…。」
「わかってますお嬢。俺はずっとお嬢の側にいますよ。」
今までの会話を参考書を読みながら伊織は聞き逃さなかった。
次回 第四話 橈骨
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