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第三十三章 怪物編

第百七十二話 水鉄砲

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「それにしても…」

「えーーーーーん!!!」

「こらっ!!そんなに暴れたらちゃんと髪が洗えないでしょ!?」

「まさかここまで面倒を見てもらえることになるとはな…。それにエマが風呂場からの泣き叫ぶ声がこんなところまで聞こえるとはお嬢と黎には本当に申し訳ないな…。」

「ボクもお風呂嫌いだから気持ちはわかるよ。」

「それとは何か違うような気がしますけど…。」

「大丈夫ですよ~♡あの2人ならきっと♡」

 ……………

「ピュッ!ピュッ!」

 湯船から黎が水鉄砲を放つ。

「ちょっと黎!あなたも遊んでないで手伝いなさい!」

「手伝ってますよ。」

「ピュッ!ピュッ!」

「いやっ♡ちょっと何するのよっ!それのどこが手伝ってるのよ!」

「お嬢の体に水鉄砲を撃ってるんです。援護射撃です。」

「何ふざけたこと言ってるのよっ!エマちゃんが暴れまわってって…あれ?」

「えへへ、へへ。」

 エマが黎の方を向いて楽しそうにしている。

「ピュッ!ピュッ!」

「なんで!?さっきまで嫌がってたのに喜んでる!?」

「子供の気を引くには遊びの要素を取り入れるなど工夫が必要なこともあるんですよ。」

「ピュッ!」

「キャッ♡私には当てなくていいわよっ!っていうかどこ狙ってるのよっ!」

「お嬢が気持ちいいと思うところです。」

「このっ…変態っ!こんな時まで…」

「ピュッ!ピュッ!ピュッ!」

「いやっ♡やめてっ♡」

「えへへへへへ。」

「お嬢もエマも嬉しそうじゃないですか。」

「黎のばかっ!もうっ!私はエマちゃんの体を洗わなくちゃいけないのよっ!」

 お嬢がそう言うと今度は黎は水鉄砲をエマに渡す。

「ピュッ!ピュッ!ピュッ!ピュッ!ピュッ」

「ちょっと♡やめなさいっ♡」

「なかなか狙いを定めるのが上手いですね。仮想世界で拳銃が好きだっただけはあります。」

「もうっ♡こっちだってっ!こしょこしょこしょこしょ!」

「えへ!えへへへへへっ!」

 ……………

「本人たちは自分達の子供が出来た時の子育ての練習のためだと言っていたがオレも周りに頼ってばかりはいられないな。」

「大丈夫だよ楓お姉様。お嬢様は南グループの事を家族のように思ってくれてるから。なんでも自分一人で背負う必要ないから。」

「…本当に頭が上がらな…」

「こらーーーっ!ちゃんと体を拭いてお洋服を着てから髪を乾かすわよー!」

「えへへへ~、おじょうさまおもしろ~い。」

「ピュッ!ピュッ!ピュッ!」

「それもお風呂場に戻しなさーい!!床がびしょびしょになっちゃうでしょーーー!!」

「カチャ…カチャ…」

「あれ~?でなくなっちゃった~。」

「捕まえたわよ!!ほら!まずは体を拭くわよ!!黎も手伝って!!」

 お嬢がエマを抱えてお風呂場の前まで連れ戻す。

「…やっぱりお嬢様って面倒見すごくいいじゃん。」

「お嬢様は怒ると確かに怖いですけど、根は凄く優しいですからね!」

「萌美もそんなお嬢様が大好きです~♡」

 黎がバスタオルでエマを抱きかかえ体の水滴を拭く。

 エマが心地よさそうに大人しくしている。

「な…なんか黎のに前ではやけに大人しいわね…。まさか黎…こんな幼い子にまで好かれちゃうの!?」

「考えすぎですお嬢…。好かれると言っても異性として好かれる訳ないでしょう…。お嬢の体を拭くときよりも柔らかく肌を撫でるように拭いてるだけです。幼少期の肌はデリケートなので。」

「じゃ…じゃあ次!私がお洋服を着せるわ!」

 そしてお嬢はエマにパジャマを着せる。

 その後エマのドライヤーを乾かして一度エマを楓のもとに連れて行ってから、お嬢と黎は互いの髪を乾かす。

「黎、子供ってやっぱり可愛いわね。」

「お嬢も可愛いですけどね。」

「もうっ♡いつもそうやってっ♡黎のばかっ♡」

 お嬢と黎はキスする。


 次回 第百七十三話 絵本
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