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第三十二章 親権編
第百七十話 黒光
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「今回の件、できるなら多賀結月と下田未来とは和解したいのだ…。これはオレとあの男の間の親権問題において、あの男のもとでエマが育てられることをみかねて晶もこの行為に及んだのだろう…。」
「その通りです。私はエマちゃんとゲームの世界で仲良くなって、楓さんがエマちゃんをずっと見守っていて、それでやはりエマちゃんは責任感の強い実の母親である楓さんのもとにいるべきだと考えたのです。」
「なるほど!確かにその通りね!あんな男にこんな幼い子を任せておけないわよね!」
「おじょうさま~。」
「………」
エマが楓に抱かれながらお嬢に両手を伸ばす。
「この子ってばやっぱり可愛い~♡♡♡こっちにおいで~♡♡♡」
楓が抱きかかえてるエマをお嬢に抱っこさせる。
昨晩…
「いいか?エマ、あの赤い髪の方の事は何があっても『おじょうさま』と呼ぶんだぞ。『おばさん』ではない。オレをあの方だと思って呼んでみろ。」
「う~ん、ママが~、おばさん~?」
「違う!やり直しだ!『おじょうさま』だ!」
「おばあさまあ~。」
「それはもっと良くない!オレもお前も命がいくつあっても足りない!やり直せ!『おじょうさま』!言ってみろ!」
「おじいさま~。」
「性別まで変えるな!!南グループが、いや、この世界が滅びる!!ゆっくりでいいから頑張って発音してみろ!!『お!じょ!う!さ!ま!』!!」
「お、じょ、う、さ、ま。」
「そうだ!今度は少し速く言ってみろ!」
「おじう…」
「だめだだめだ!!やり直しだ!!」
そして現在…
お嬢は心底喜んでいたが楓は心臓が張り裂けそうになり冷や汗をかく。
そして楓は思う。
全ての部屋が防音の壁で良かったと。
「エマちゃん可愛いね~もう一回私の事呼んでみて~♡」
「おじうさま~。」
「うおっほん!!んん!!んん!!」
楓がエマの呼びかける声を途中から被せて大きな咳払いをする。
「………」
辺りの空気が凍りつく。
「黎。」
「はい。」
「私達の子供もこの子みたいに可愛いのかしら~♡♡♡楽しみになってきちゃった~~~♡♡♡」
楓の咳払いに重なってお嬢にはエマの発音が上手く聞き取れてなかったみたいだ。
「お嬢は自分の子供を溺愛すると思いますよ。人の子をこれだけ可愛いと思えるんですから。」
「そうだよねっ♡私と黎の子供楽しみっ♡」
お嬢がエマを抱きかかえて楽しそうにはしゃいでいると、突然昼の空が暗くなり始める。
「こ…これは一体なんでしょうか…!?」
「いきなり夜みたいになっちゃったですね~。もうお嬢様と黎様のエッチの時間が始まってしまうんでしょうか~♡」
「言ってる場合!?紅葉さん!辺りに誰かいたりしませんか!?世話係の者らしき人物とか…!」
「誰かいるどころか、この辺り全体が水で覆われてるよ。成分はほぼ海水だね。」
「海水だと?境界はどうなっているんだ?」
「この家の周辺だけが空気の層で出来ててそこを中心にかなり分厚い層の海で覆われてる感じ。人工的に作られた海の中の空気の層に閉じ込められたみたい。」
「日の光が入らないぐらい分厚い海の層という事は、環境は深海に近いんでしょうか。」
「水の中で何か黒い光源が移動してるのが見えるよ。」
「光源の正体はなんですか?」
「雷に近いものだと思うけど物質は分からない。触れたらヤバいと思う。」
「え…雷…?…黎…また雷が来るの…?」
「お嬢、俺がいるから大丈夫ですよ。こっちに来てください。」
「…うん…。」
黎がお嬢を抱き寄せる。
「おうじさま~。」
エマが黎に向かって言う。
「な!オレはそんな呼び方は教えては…あ…」
楓がエマの咄嗟の言葉に反応してしまう。
「…子育ては大変ですね。」
「いや…その…なんでもない…。」
「エマのおうじさま~?」
それを聞いた瞬間お嬢の顔つきが突然鋭くエマに向けられる。
「違うわよエマちゃん!私の王子様よ!!手を出しちゃだめだからね!?」
「そうなんだ~。」
「お嬢…さすがに幼子にまで本気になりすぎでは…」
「年なんて関係ないわ!私は誰に対しても本気よっ!!」
「それにしても…光源が観測できるだけで相手から何も仕掛けて来そうにないのか?紅葉。」
「多分仕掛けたくても、できないんだと思う。目的がエマの奪還で、この光源は世話係によるものの可能性が高いから。下手に攻撃してエマまで傷つけたら目的が達成できない。」
「私達はずっとこの水の囲いの中に閉じ込められたままなのでしょうか…?」
「…オレが行ってくる。」
楓が表に出ようとする。
「楓お姉様!危ないよ!」
「そうです!いくら何でもお1人では!」
「萌美の家にいてください!」
「楓ちゃん…。」
「楓…。」
「ママ、どこ行くの~?」
全員の声を後に楓はそのまま黙って行ってしまった。
次回 第百七十一話 責務
「その通りです。私はエマちゃんとゲームの世界で仲良くなって、楓さんがエマちゃんをずっと見守っていて、それでやはりエマちゃんは責任感の強い実の母親である楓さんのもとにいるべきだと考えたのです。」
「なるほど!確かにその通りね!あんな男にこんな幼い子を任せておけないわよね!」
「おじょうさま~。」
「………」
エマが楓に抱かれながらお嬢に両手を伸ばす。
「この子ってばやっぱり可愛い~♡♡♡こっちにおいで~♡♡♡」
楓が抱きかかえてるエマをお嬢に抱っこさせる。
昨晩…
「いいか?エマ、あの赤い髪の方の事は何があっても『おじょうさま』と呼ぶんだぞ。『おばさん』ではない。オレをあの方だと思って呼んでみろ。」
「う~ん、ママが~、おばさん~?」
「違う!やり直しだ!『おじょうさま』だ!」
「おばあさまあ~。」
「それはもっと良くない!オレもお前も命がいくつあっても足りない!やり直せ!『おじょうさま』!言ってみろ!」
「おじいさま~。」
「性別まで変えるな!!南グループが、いや、この世界が滅びる!!ゆっくりでいいから頑張って発音してみろ!!『お!じょ!う!さ!ま!』!!」
「お、じょ、う、さ、ま。」
「そうだ!今度は少し速く言ってみろ!」
「おじう…」
「だめだだめだ!!やり直しだ!!」
そして現在…
お嬢は心底喜んでいたが楓は心臓が張り裂けそうになり冷や汗をかく。
そして楓は思う。
全ての部屋が防音の壁で良かったと。
「エマちゃん可愛いね~もう一回私の事呼んでみて~♡」
「おじうさま~。」
「うおっほん!!んん!!んん!!」
楓がエマの呼びかける声を途中から被せて大きな咳払いをする。
「………」
辺りの空気が凍りつく。
「黎。」
「はい。」
「私達の子供もこの子みたいに可愛いのかしら~♡♡♡楽しみになってきちゃった~~~♡♡♡」
楓の咳払いに重なってお嬢にはエマの発音が上手く聞き取れてなかったみたいだ。
「お嬢は自分の子供を溺愛すると思いますよ。人の子をこれだけ可愛いと思えるんですから。」
「そうだよねっ♡私と黎の子供楽しみっ♡」
お嬢がエマを抱きかかえて楽しそうにはしゃいでいると、突然昼の空が暗くなり始める。
「こ…これは一体なんでしょうか…!?」
「いきなり夜みたいになっちゃったですね~。もうお嬢様と黎様のエッチの時間が始まってしまうんでしょうか~♡」
「言ってる場合!?紅葉さん!辺りに誰かいたりしませんか!?世話係の者らしき人物とか…!」
「誰かいるどころか、この辺り全体が水で覆われてるよ。成分はほぼ海水だね。」
「海水だと?境界はどうなっているんだ?」
「この家の周辺だけが空気の層で出来ててそこを中心にかなり分厚い層の海で覆われてる感じ。人工的に作られた海の中の空気の層に閉じ込められたみたい。」
「日の光が入らないぐらい分厚い海の層という事は、環境は深海に近いんでしょうか。」
「水の中で何か黒い光源が移動してるのが見えるよ。」
「光源の正体はなんですか?」
「雷に近いものだと思うけど物質は分からない。触れたらヤバいと思う。」
「え…雷…?…黎…また雷が来るの…?」
「お嬢、俺がいるから大丈夫ですよ。こっちに来てください。」
「…うん…。」
黎がお嬢を抱き寄せる。
「おうじさま~。」
エマが黎に向かって言う。
「な!オレはそんな呼び方は教えては…あ…」
楓がエマの咄嗟の言葉に反応してしまう。
「…子育ては大変ですね。」
「いや…その…なんでもない…。」
「エマのおうじさま~?」
それを聞いた瞬間お嬢の顔つきが突然鋭くエマに向けられる。
「違うわよエマちゃん!私の王子様よ!!手を出しちゃだめだからね!?」
「そうなんだ~。」
「お嬢…さすがに幼子にまで本気になりすぎでは…」
「年なんて関係ないわ!私は誰に対しても本気よっ!!」
「それにしても…光源が観測できるだけで相手から何も仕掛けて来そうにないのか?紅葉。」
「多分仕掛けたくても、できないんだと思う。目的がエマの奪還で、この光源は世話係によるものの可能性が高いから。下手に攻撃してエマまで傷つけたら目的が達成できない。」
「私達はずっとこの水の囲いの中に閉じ込められたままなのでしょうか…?」
「…オレが行ってくる。」
楓が表に出ようとする。
「楓お姉様!危ないよ!」
「そうです!いくら何でもお1人では!」
「萌美の家にいてください!」
「楓ちゃん…。」
「楓…。」
「ママ、どこ行くの~?」
全員の声を後に楓はそのまま黙って行ってしまった。
次回 第百七十一話 責務
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