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第三十一章 催し物編

第百五十六話 片手間

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 お嬢と黎と紅葉は萌美の家に入りスイートルームへ移動した。

「…随分クーラーが効いてますね…。寒くないんですか…?」

「至急最優先に修理した。設定温度摂氏0℃まで下げられる。」

「せしぜろどってなに?」

「丁度水が氷になるぐらいの温度の事だ。」

「紅葉さんのおかげ生き返りましたー!」

「萌美も~♡でもこれちょっと冷凍庫みたい~♡」

「…身体壊しますよ…。」

「それよりこれ、家を改造する片手間に続き創ったんだけど。」

 そう言ってお嬢と黎は紅葉から機械を手渡された。

「これはまさか。」

「また…始まるのね…。」

「なんですか?それは…。」

「機械みたいですけど~?」

「これは…黎を殺した憎き相手よ…!」

 お嬢の真剣な眼差しが菱沼と萌美に向く。

「いえ…それは仮想の世界で…」

「そ…そんな恐ろしいものをどうして紅葉さんが持ってるんですか!?」

「萌美怖いよ~~~!!!」

「ボクはこの世界を自由自在に操る、いわば神…」

「紅葉、それぐらいにしておけ。ゲームだと普通に説明してやれ。」

「ゲーム…ですか?」

「そうです。俺はゲームの世界の中で最後に死んだだけです。」

「死んだだけって!黎っ!あなた!私は凄く悲しかったんだからっ!!」

「すみませんお嬢、次は死なないので。…ていうか片手間で創ったって…前回も相当完成度高かったですけど今回はどんな感じなんですか?」

「それはやってからのお楽しみだよ。シナリオ2では様々なイベントがお嬢様と黎を待ち受けているよ。」

「面白そうです~♡萌美もやりた~い♡」

「お前さっき怖がってませんでした…?ていうかお前がゲームに参加したら保健室は…」

「2人の分もあるよ。」

 菱沼と萌美にも機械が手渡された。

「え?お嬢と俺だけじゃなくて菱沼と萌美も合わせて4人で参加できるんですか?」

「やった~♡晶ちゃんもできるって~♡」

「わ、私は死ぬのとか怖いんですけど!?」

「大丈夫。ゲームクリアしたら生き返るから。それ目元につけて寝るだけ。」

「え!?クリアできなかったらどうな…」

「晶ちゃん♡早く早く~♡」

 萌美が機械を菱沼にセットして自分のもセットし、ソファで菱沼と一緒に横になる。

「ちょっとー!!萌美ちゃん!!私は死ぬのはイヤーー!!」

 菱沼と萌美の身体が段々抜けていく。

「菱沼と萌美は先にゲームの中に入ってしまいましたね…。お嬢、俺達も…」

「ライバルが…」

「お嬢…?」

「また恋のライバルが増えちゃったーーーっっっ!!!ただでさえあの学校は黎の事を狙う子がいっぱいいた世界なのよっ!!!黎のばかばかばかばかばかっっっ!!!」

「パチンパチンパチンパチンパチンッッッ!」

「バタンッ!」

 お嬢にわけも分からず往復ビンタされた黎は当然のように気絶した。

「ゲームの世界でも黎は私だけのものよっ!!」

 お嬢が黎に機械を装着して、お嬢も自分に機械を装着して床に横になった黎を抱きしめながら自分も横になる。

「楓お姉様は本当に参加しなくてよかったの?」

「オレはゲームの世界では教師なのだろう?例えゲームの世界だろうと上につく者を呼び捨てにするのは気が引けるからな…。」

「全く昔からそういう所真面目だよね。ゲームぐらい片手間に肩の力抜いて楽しくやればいいのに。」

「片手間か…。不器用なオレには困難を極めることだ…。」


 次回 第百五十七話 瀕死
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