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第二十八章 探偵編

第百四十六話 迫真

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「ちょっと!また秘密って怪しいわね!?どういう事!?」

「恐らく二階堂が竈馬と約束したんですよね。南グループのメンバーが南グループを脱退した後の自分のことに干渉しないようにと。」

「その通りです。十の掟に拒否権はありません。私はお姉様と約束をしてしまった以上お2人をお姉様と干渉させるわけにはいかないのです。」

「…確かにそれは仕方ないですね。お嬢、諦めましょう。」

「あの子私のお屋敷をあんなことにしておいて!」

「お屋敷がどうかされたんですか?」

「何者かに巨大な針で何本も刺されて針頭には穴があり糸が通されていてその後高柳グループの土屋が爆発を起こしたことによって糸を伝ってすぐに燃え広がって大火事になったんです。」

「なるほど。それで針と糸を扱う者を身近で訪ねて周られているのですか?」

「はい、まだ手がかりは全く掴めていないのですが。」

「お姉様は針と言えば毒針、糸と言えば蜘蛛の糸ですが蜘蛛の糸は燃え広がりやすい成分ではなく、どちらかというと燃やすと途中で切れてしまいやすいとお姉様はおっしゃっていました。それにお姉様の毒針は人間の皮膚など軟部組織を貫通する程度のもので、建物を貫通するほどの強度はないかと思われますが…。」

「確かに言われてみればそうですね…。お嬢、どう思いますか?」

「むーーーっっっ!!!」

 お嬢は両頬を膨らませて怒っている。

「お嬢様かわいい~♡」

「怒った顔も可愛いなんて黎様にとって最高のお嫁さんじゃ~ん。」

「私はお姉様は無実だと思います…というより無実であってほしいというのが本音ですね…。それにしても折角お越しいただいたのにお力になれずすみません。代わりと言ってはなんですが…」

「なに!?何か私のご機嫌でもとってくれるような事をしてくれるのかしら!?」

「私のご自慢の怪談話をお聞きになっては…」

「それは絶対いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 お嬢が叫びながら黎に泣きついた。

「ありがとうございました二階堂。お嬢と俺はこれで失礼いたします。」

 そう言って黎は屍の塔2号を後にする。

「黎っ…怖い…。…また病院戻るの…?」

「お嬢、俺が側にいるので大丈夫ですよ。」

「でも…レナちゃん、この前幽霊がいるって…」

「いませんよ、お嬢。」

「…ほんとに…?黎…嘘ついてない…?私怖いよ…。病院帰るの怖いよ…。」

「本当ですよ。嘘ついてませんよ。そもそも幽霊って何ですか。人は自分が目で見たものや噂で聞いたことにありとあらゆる脚色を加えて信じたいように信じ、信じたくないものには否定しながら心のどこかで否定した自分を否定して信じてしまうだけなんです。お嬢は俺の言ってること、信じたいと思って信じて頂けませんか?」

「…わかった…黎…ごめんなさい…。でも…やっぱり…わかってても怖いから…ずっと側にいて…。」

「それは俺もわかってますし、最初から俺はお嬢の側を離れませんよ。今日はゆっくり休みましょう。」

「…夜…おトイレ行きたくなったら…抱っこして連れてってくれる…?」

「もちろんですよ。」

「…でも…女の子の…おトイレ黎入れない…どうしよう…私1人じゃおトイレ入れないよ…!」

「そんな悲しそうな顔しなくて大丈夫ですよ。病院には多目的トイレがあるのでそこに入れば大丈夫です。」

「…そ…そっか…よかった…。」

「なにか他に心配なことはありますか?」

「…ううん…黎が抱っこしててくれるなら…大丈夫…。…ありがと…。」

 お嬢はそう言って黎の腕の中で目を瞑った。

 ……………

「すみません…お嬢様…黎様…。」

 ……………

「グガアアアア…。」

 ……………

「…虫の知らせを感じます。」

 ……………

「犯人を3人に絞る事が出来たお嬢様と黎様ですがなかなか真実に迫る事は難しいようで…」

「お前が『3人に絞る事が出来た』って言う事はあの中にやっぱり犯人がいるのか!ぶわははははははッッッ!!!」

「…!!あなた一体どうやってここに!?」

「カチッ………」

「フゥー………。まぁお前がそんな事言わなくても私には分かるけどね。犯人は『あの人』で決まりっしょ。」

「………」

「申し訳ございませんアイ・カリン様!その不届き者を今すぐ神の領域から…」

「いえ、お待ちなさい。巫女。なぜあなたはここに来たのですか、アユメ。」

  


「あい?そりゃあだってここは仕事をサボってても誰にも気づかれない絶好の場だろう?カリン。」

「………」

「いやぁ~ここならあの口うるさいメイド長もいないし私の推し活を邪魔するやつもいないってわけよ~はっはーーーッッッ!!!」

「見つけたぞポンコツメイド。」

「………あれぇ…?」

「ベシッッッ!!」

「いってぇ~…。」

「こ…これは一体…!?アイ・カリン様…!何が起きているのですか…!?」

「…?『カリン様』?」

「そうだぞ~。こいつは神様でめちゃくちゃえらいんだぞぉリサラ氏よ。フゥー………。」

「『リサラ様』でしょうが!それに神様って…」

「っていうかあなたはさっきから何をされているんですか!神の領域は禁煙です!」

「神の領域…?」

「そうだぞ~。ここは仕事をサボっていても誰にも見つからない絶好の場なんだぞ~。」

「あなたはもっと仕事に対して真面目に向き合いなさい!それよりこの方は宮之内財閥のメイド長室に飾ってある初代メイド長様の写真と顔がそっくりですしその方のお名前も『カリン』だったと思うのですが…。」

 


「………」

「えぇ~。そうなのぉ~?もしかして同一人物だったりしてぶわははははははッッッ!!!」

「まさか…!でも初代メイド長様の伝説は数多くて宮之内財閥では当時のご主人様はその方をなくしては宮之内財閥の存続は無理だったと言われてます。その事からなんでも、表立った行動よりも持ち前の頭脳で宮之内財閥をまとめあげていたことから宮之内財閥の『裏の頭』と呼ばれていたかなり頭のキレるお方だったと聞きます!」

「フゥー………。『裏の頭』ねぇ…。なんか私の今いる南探偵事務所にも昔そんな異名で呼ばれてた人がいたって聞いたことがあるなぁ…。探偵の仕事は潜入とかもするんだけどそういう場面で潜入先の機器のハッキングやターゲットの行動の先読みがメンバーの中で並外れて優れていつも裏方に徹してた事からそうなんだよなぁ…。名前は確かぁ…」

「………」

「お2人とも!アイ・カリン様をそのように凝視するのは失礼にあたります!その方とアイ・カリン様は無関係です!お引き取りください!」

「そっかぁ~。それじゃあリサラに見つかっちゃったから私はこれで失礼するねぇ~。」

「『様』をつけなさい!『様』を!全く…こちらの下品なポンコツメイド共々お邪魔してしまって申し訳ございません。この者は私が責任をもってあとできつぅぅぅく言い聞かせておきますのでどうかお赦しください。」

「ええ。かまいません。それでは巫女、案内を。」

「はい!」

「またねぇ~。」

「こらポンコツメイド!もっと礼節を弁えなさい!あのお方は神様なんでしょう!?」

「うん、でもこうやってたまに遊びに来るんだよ。」

「はぁ!?神様のところに遊びに行くってあなた一体何者なのよ!?」

「世界一可愛い探偵アユメちゃんに決まってるでしょーが。それにしても探偵のコスプレしてたお嬢ちゃんはともかくあの『黎』って子はなかなか良い目をしてると思うよ。カリンが惚れるのも納得だわ。」

 ……………

 お嬢はすっかり黎の腕の中で眠っていた。

「お嬢…今日のお嬢は世界一可愛い探偵でしたね。」


 第二十八章 探偵編 ~完~

 ……………

「ポンコツメイド!それは本当なのですか!?」

「うん、間違いないよ。初代メイドのカリンも南探偵事務所の『裏の頭』も同一人物でさっきのカリンで間違いないよ。」

「どうしてそんな事がわかったのですか!?」

「カリンの側にいた巫女って子が言ってたんだよ。『その方とアイ・カリン様は関係ない』と。宮之内財閥と南探偵事務所に2人いた人間のことを『その方』と単数で呼んでしまったのは巫女の頭の中でその人物を1人の同一の者とみなしていて無意識にそれが口から出てしまったからである可能性が高いしそれは巫女の知っている人物で且つそんな事が出来るのなんてあのカリンぐらいだよ。なにしろあいつは神様なんだから。」

「一体…なんの目的でそんな事を…」

「あいつは事の成り行きを観察する、つまり高みの見物が大好きなやつで暇つぶしに平気でそういう事をして世界を動かすんだよ。」

「あなたは…ポンコツメイドは一体あの神様とどういう関係なんですか!?」

「カチッ………」

「フゥー………。ただの腐れ縁だよ。」


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