【R18】世界線Ⅱ〜恋するお嬢とその舎弟達〜

石原歩

文字の大きさ
上 下
144 / 208
第二十八章 探偵編

第百四十三話 調査

しおりを挟む
「まずは紅葉の病室にいる楓達と合流をしましょうか。情報を共有しなければなりませんから。」

 そう言って黎は紅葉の病室へと足へ運ぶ。

 そして紅葉の病室の前へと辿り着く。

「楓ちゃーん、紅葉ちゃーん、入るわよー?」

 お嬢が病室の扉越しに呼びかける。

「ああ、お嬢か。かまわん。」

「ガラガラガラ」

 お嬢が引き戸を開ける。

 楓がお嬢と黎の姿を見て驚く。

「…どういう状況だ?」

「屋敷を襲ってきた針と糸を扱う黒いフードの者について情報共有をしたくてやってきました。」

「………。」

 紅葉はずっと俯いたまま黙っていた。

「…紅葉ちゃん…。」

 お嬢が紅葉を気にかける。

「………あいつが来てから全てが始まったんだ…。…そして始まった頃にはボク達の終わりはもう決まっていた…。」

「そうね。私達の終わりはもう決まってるわよ。」

「…お嬢…?」

「いい?私は南グループのお嬢なの。南グループに不可能なことなんてないの。私達が終わる時はいつだって皆笑って終わる時なのよ。だから紅葉ちゃんを含めて皆が笑ってない時はまだ終わりじゃないの。だから皆が力を合わせるの。そのために南グループがあるのよ。」

「…お嬢………お嬢の言う通りです…。」

「…お嬢様…ボク…ごめんなさい…。」

 紅葉は涙を流す。

「大丈夫よ紅葉ちゃん。あなたにはあなたのお姉さんの楓ちゃんを含めて南グループの皆がいるんだから。あなたは黎にちょっかいを出して私を怒らせなければいいのよ。」

「お嬢…最後ので全部台無しなんです…。」

「お嬢の言う通りだ。お嬢を怒らせる様な事だけは気をつけるんだぞ紅葉。」

「…うん…お姉様…ごめんなさい…。」

「2人もお嬢の言葉の重要なところをしっかりと捉えてください…。紅葉の謝罪がお嬢を怒らせたことに対する謝罪みたいになってますがそんなことしてないじゃないですか…。」

 そして黎は菱沼と萌美の病室でお嬢と話し合った経緯について2人に話した。

「なるほど…容疑者は南病院一の名医のレフトス、洋服ブランド店のシェーハのオーナーのライカ、そして元南グループA級舎弟で屍人使いの二階堂レナの腹違いの姉である蟲使いの竈馬リナの3人か。」

「それ以外の者の可能性ももちろんありますが、身近で思いつく限りではこの3人と言った感じでしょうか。屋敷が襲われ始めたのは昨日の夜中の23時頃だったんですよね。今は既に20時を周っていて、この時間ともなると手術しかしていないレフトスも仕事を終えてるでしょうし、洋服ブランド店のシェーハも既に店を閉めてる時間ですね。竈馬は何をしてるのか知りませんが…。」

「…竈馬昆虫博物館の館長、竈馬リナ。」

 紅葉が自前のパソコンの画面をお嬢と黎に向けながら呟く。

「キャーーーーーッッッ!!!」

 お嬢が画面を見た途端急に叫びだして画面から目を逸らして目を強く瞑る。

「お嬢…これこの前俺と一緒に見た蝶ですよ…。黒い蝶ですか…。カラスアゲハの類でしょうか…。それにしても腹違いとは言え顔が二階堂に似てますね。」

 黎が竈馬リナのプロフィール写真を見ながら言う。

 本人は写真の右側に映り右手のひらを掲げてその上に蝶が舞っている写真を載せている。

 髪は二階堂と同じ黒色だが二階堂は二つ結びなのに対し竈馬はショートヘアだ。

 


「いずれにしてもこの時間は閉館してる様ですし彼女も夜中23時には動けそうな感じですね。…お嬢、もう目開けて大丈夫ですよ。」

「もうっ!びっくりしたわよっ!黎のばかっ!」

「…俺ですか…?そう言えばお嬢、今日の宿どうしますか?屋敷は完全に燃えてしまったと思うので帰るとこないですけど…。」

「そんなの病室で寝ればいいのよ。」

「またそんな勝手なことをしていいんですか…。」

「私はお嬢なんだからいいの!」

 黎はふとあることに気づいた。

「お嬢、もしレフトスが犯人だとしたらお嬢と俺が病院で宿を取ることはおろか、南病院は危険なのではないですか?」

「確かにそれはそうかもしれないな。レフトスが犯人だとしたらレフトス自身の目的は分からないが土屋は南グループを壊滅させると言っていた。もしレフトスが土屋に加担しているなら真っ先に狙われるのはお嬢だな。」

「ボク達が南病院に来ることも予測してここからが本番っていう可能性もあるし警戒した方がいいよね。」

「どうしよう!?皆の命が危ないの!?」

 そして何より黎が一番気がかりな事がまだあった。


 次回 百四十四話 潜入
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...