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第二十八章 探偵編
第百四十一話 初歩
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南病院に着いた黎はずっと気になっていた。
あの針山といい、今回の屋敷への土屋の襲撃といい、地軸の傾きといい、不可解な事が多すぎる。
お嬢と黎は萌美と菱沼の病室にいた。
「お嬢、一つ気になったんですけど南病院一の名医でありA級舎弟のレフトスってどんなやつなんですか?」
「うーん、実は人前に出ることはほとんどなくて本人も一部の医療スタッフ以外の人と関わりを持たず、本人の意思で自分のことは口外しないで欲しいと言ってるみたいよ。だから私もほとんど干渉しないしあまり情報は出回らないのよね。彼がやるのは専ら手術だけで、助手の看護師の手伝いも必要とせずに1人で病院で圧倒的な手術成果を出すのよ。でも手術を受けた患者は麻酔をして眠ってしまうし、目を覚ました頃には手術も終わってるから彼のことを知ることもないのよ。」
「A級舎弟であるからには戦闘も可能なんですよね。それに彼って事は、男であることは分かってるのですか。…そして俺が気になってるのは…」
「手術は針と糸を使う…っていうことでしょ?記憶共有してるんだからわかってるわよ。でも彼は南グループよ?仲間を疑うの?」
「…あくまで可能性の話です。楓や紅葉も言っていましたが高柳グループに黒いフードを被った針を扱う者が高柳グループに居たかどうか分からないという点からもやはり気になります。屋敷が針山のようになってた時に彼の名が思い浮かんだのは確かです。しかし疑わしいのは彼だけではありません。」
「…そこまで言うならわかったわ…。」
お嬢がそう言って病室を後にしてしまった。
「…お嬢…?」
するとしばらくまつとお嬢が戻ってきた。
しかしお嬢は茶色ベースのハンチングハットを被って同じ色のインバネスコートを身にまとって左手に虫眼鏡を持っている。
「初歩的なことよ、黎君。」
「…今度はなにしてるんですか…。」
「この名探偵お嬢にお任せなさい!」
お嬢がその場でくるりと一回転する。
「…お嬢。」
「どう?似合っ…」
「とても可愛いです。服装もそうですが、考える事も全て。」
お嬢の顔が赤くなる。
「まだ言いかけてる途中でしょっ!?♡もうっ!♡」
お嬢が黎に抱きついてキスする。
「相変わらずおあついですね♡萌美も元気が出てきます♡」
「も、萌美ちゃん!?気づいてたの!?もしかして今のやり取り見てたの!?」
「はい♡最初から最後までこっそり全部見てました♡」
「は…恥ずかしい…。」
お嬢の顔が真っ赤になる。
「恥ずかしがってるお嬢様も可愛いです♡そのお洋服、お嬢様に似合うかと思って萌美がライカさんのお店で買ったんです♡」
黎は自分が言いかけてた事を思い出した。
「そうですお嬢。ライカは戦闘できるのかわからないですが彼女も針と糸を使う仕事をしていますよね。」
次回 第百四十二話 容疑者
あの針山といい、今回の屋敷への土屋の襲撃といい、地軸の傾きといい、不可解な事が多すぎる。
お嬢と黎は萌美と菱沼の病室にいた。
「お嬢、一つ気になったんですけど南病院一の名医でありA級舎弟のレフトスってどんなやつなんですか?」
「うーん、実は人前に出ることはほとんどなくて本人も一部の医療スタッフ以外の人と関わりを持たず、本人の意思で自分のことは口外しないで欲しいと言ってるみたいよ。だから私もほとんど干渉しないしあまり情報は出回らないのよね。彼がやるのは専ら手術だけで、助手の看護師の手伝いも必要とせずに1人で病院で圧倒的な手術成果を出すのよ。でも手術を受けた患者は麻酔をして眠ってしまうし、目を覚ました頃には手術も終わってるから彼のことを知ることもないのよ。」
「A級舎弟であるからには戦闘も可能なんですよね。それに彼って事は、男であることは分かってるのですか。…そして俺が気になってるのは…」
「手術は針と糸を使う…っていうことでしょ?記憶共有してるんだからわかってるわよ。でも彼は南グループよ?仲間を疑うの?」
「…あくまで可能性の話です。楓や紅葉も言っていましたが高柳グループに黒いフードを被った針を扱う者が高柳グループに居たかどうか分からないという点からもやはり気になります。屋敷が針山のようになってた時に彼の名が思い浮かんだのは確かです。しかし疑わしいのは彼だけではありません。」
「…そこまで言うならわかったわ…。」
お嬢がそう言って病室を後にしてしまった。
「…お嬢…?」
するとしばらくまつとお嬢が戻ってきた。
しかしお嬢は茶色ベースのハンチングハットを被って同じ色のインバネスコートを身にまとって左手に虫眼鏡を持っている。
「初歩的なことよ、黎君。」
「…今度はなにしてるんですか…。」
「この名探偵お嬢にお任せなさい!」
お嬢がその場でくるりと一回転する。
「…お嬢。」
「どう?似合っ…」
「とても可愛いです。服装もそうですが、考える事も全て。」
お嬢の顔が赤くなる。
「まだ言いかけてる途中でしょっ!?♡もうっ!♡」
お嬢が黎に抱きついてキスする。
「相変わらずおあついですね♡萌美も元気が出てきます♡」
「も、萌美ちゃん!?気づいてたの!?もしかして今のやり取り見てたの!?」
「はい♡最初から最後までこっそり全部見てました♡」
「は…恥ずかしい…。」
お嬢の顔が真っ赤になる。
「恥ずかしがってるお嬢様も可愛いです♡そのお洋服、お嬢様に似合うかと思って萌美がライカさんのお店で買ったんです♡」
黎は自分が言いかけてた事を思い出した。
「そうですお嬢。ライカは戦闘できるのかわからないですが彼女も針と糸を使う仕事をしていますよね。」
次回 第百四十二話 容疑者
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