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第二十五章 お詣り編
第百三十一話 賽銭
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「さすがはあのお方のお目についた方です。最初から全てお見通しだったのですね。だからずっとお嬢様に腕を掴んでもらうよう…」
「ねぇ、黎。」
お嬢が巫女の言葉を遮り黎に話しかける。
「どうしましたか?お嬢。」
「どうして私とのちゅーやめて他の女の子とお話ししちゃうの…?」
「すみませんお嬢、俺としたことが。」
黎はお嬢とのキスを再開する。
「ちょっと!吾を無視して神聖な場でなんてことをするんですか!勿論あのお方も見て…」
「も…もう見ていられませんっ!」
お嬢は聞き覚えのある声を耳にしてハッとする。
「この声は!!」
「そこをどいてくださいお嬢様っ!!」
「いやよっ!!」
突然お嬢と黎の目の前にアイ・カリンが現れお嬢と揉み合いになる。
「ワタクシも黎様にお姫様として扱って頂きたいのでございますっ!」
「だめよっ!!私だけが黎のお姫様なのっ!!あなたは別の男を探しなさいっ!!」
「ワタクシには黎様しかいないのでございますっ!!」
「それはこっちのセリフよっ!!」
「アイ・カリン様ッ!!」
巫女がアイ・カリンに向かって強い忠誠心で跪く。
「巫女もそこに跪いていないでお嬢様をどかすのを手伝ってくださいっ!!」
「ちょっとっ!!2対1なんて卑怯よっ!!」
「吾にはとても恐れ多く、いくらアイ・カリン様の命令とあろうともそのような領域に踏み込むことは致しかねますッ!」
「…そんな…このままでは…またワタクシは黎様に近づく事が出来ないではありませんか…うぅ…。」
アイ・カリンは力が抜けていき、俯く。
「当たり前でしょ!!あなたは黎に一番近づいちゃだめなのっ!!」
「そろそろお嬢と俺をここから出して頂けませんか?」
「ここから出す…?そうですか…その手がありました…ウッフフフフフフフ…!巫女っ!この空間からお嬢様だけ追い出し…」
「それはできませんよ。」
「な…ど…どうしてでございますか…?」
「お嬢と俺が接触している限り巫女は個別に空間転移する事が出来ないことは先程ここに来る際に把握済みです。それと、俺はお嬢を抱きかかえてる限りは巫女の攻撃は俺には当たらないですし、目も瞑ればいくら光が乱反射しても関係ありませんから、さっきの続きをするだけです。もっとも、アイ・カリンがその光景を見続ける事に耐えられるならの話ですが。」
「………ど…どうして巫女の空間にお嬢様と入る方法を見つけ出すことができたのですか…?」
「お嬢と俺はずっと離れませんから。心も体も。それに天宮が目を瞑って目的地に着けるかとお嬢と俺に聞いた時に気づいたんです。迷子になるのは視界に映る目先のものばかり追いかけ、見えない何かを視覚に頼って探し続けるから目的地に辿り着けないのではと思い、もしかしたら逆に目を瞑った先に到達点があるのではないかと…」
「ねぇ、黎。」
お嬢が黎の言葉を遮って黎に声をかける。
「どうしましたか?お嬢。」
「さっきのやつ、貸して。」
「天宮に貰ったやつですね。目的地に着いたら箱らしきものに入れろと言われた…」
黎が左手を離してお嬢の足を地面に一度下ろして左手でポケットから何かを取り出す。
「ジャランッ」
「これですね。」
黎がお嬢の両手のひらに銅でできた円形で平らなものを複数枚渡した。
黎が再び左手でお嬢の足を持ち上げる。
「そ…それはまさか…。」
「花梨ちゃん、あなたこれが欲しいんでしょ?」
「どうして…それを…。」
「神様のいるところのじんじゃってところのおさいせんばこにこれを入れて願い事を言うのが世界線Ⅰにあるって楓ちゃんに聞いた黎に聞いたのよ。」
「………」
「しかもこれ、じゅうえんだまって言って、こっちの世界で言う10メラの価値しかないみたいじゃない。あなた知らない人に自分の住むおうちに突然土足で入られて何かと思えば、これを投げつけられて何でも願いを叶えろって言われたら叶えてあげるの?」
「…あの…それは…。」
「ビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュン!」
「バチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチン!」
「痛いっ!痛いですお嬢様っ!やめてくださいっ!」
お嬢が右手のひらにじゅうえんだまを添えて左手でじゅうえんだまをアイ・カリンに向けて一枚ずつ目にも止まらぬ速さで一つも外さず投げつける。
「こんなものいくらでもくれてやるわよっ!!今すぐ黎の事を諦めなさいっ!!それが私の神様へのお願いよっ!!」
「こ…これはアイ・カリン様が非常に危険です!直ちにこのお2人をこの空間から追い出します!」
「ブーーーン…。」
お嬢と黎は元いた場所に戻された。
「…!?消えたわ…!………全く!花梨ちゃんがこんな事で諦める訳がないわ!これは女の勘よ!」
「さすがお嬢ですね。」
「なにがよっ!もうっ!本当に危ないところだった…」
黎が唇でお嬢の唇に触れお嬢の言葉を遮る。
「どうしてキスをやめてしまうんですか?」
お嬢の顔が赤くなる。
「…れ…黎のばかっ…♡…ばかばかばかっ♡」
お嬢が黎にキスをする。
誰もいない自然のど真ん中にいることを2人は既に忘れていたのかもしれない。
第二十五章 お詣り編 ~完~
次回 第百三十二話 豪雨
「ねぇ、黎。」
お嬢が巫女の言葉を遮り黎に話しかける。
「どうしましたか?お嬢。」
「どうして私とのちゅーやめて他の女の子とお話ししちゃうの…?」
「すみませんお嬢、俺としたことが。」
黎はお嬢とのキスを再開する。
「ちょっと!吾を無視して神聖な場でなんてことをするんですか!勿論あのお方も見て…」
「も…もう見ていられませんっ!」
お嬢は聞き覚えのある声を耳にしてハッとする。
「この声は!!」
「そこをどいてくださいお嬢様っ!!」
「いやよっ!!」
突然お嬢と黎の目の前にアイ・カリンが現れお嬢と揉み合いになる。
「ワタクシも黎様にお姫様として扱って頂きたいのでございますっ!」
「だめよっ!!私だけが黎のお姫様なのっ!!あなたは別の男を探しなさいっ!!」
「ワタクシには黎様しかいないのでございますっ!!」
「それはこっちのセリフよっ!!」
「アイ・カリン様ッ!!」
巫女がアイ・カリンに向かって強い忠誠心で跪く。
「巫女もそこに跪いていないでお嬢様をどかすのを手伝ってくださいっ!!」
「ちょっとっ!!2対1なんて卑怯よっ!!」
「吾にはとても恐れ多く、いくらアイ・カリン様の命令とあろうともそのような領域に踏み込むことは致しかねますッ!」
「…そんな…このままでは…またワタクシは黎様に近づく事が出来ないではありませんか…うぅ…。」
アイ・カリンは力が抜けていき、俯く。
「当たり前でしょ!!あなたは黎に一番近づいちゃだめなのっ!!」
「そろそろお嬢と俺をここから出して頂けませんか?」
「ここから出す…?そうですか…その手がありました…ウッフフフフフフフ…!巫女っ!この空間からお嬢様だけ追い出し…」
「それはできませんよ。」
「な…ど…どうしてでございますか…?」
「お嬢と俺が接触している限り巫女は個別に空間転移する事が出来ないことは先程ここに来る際に把握済みです。それと、俺はお嬢を抱きかかえてる限りは巫女の攻撃は俺には当たらないですし、目も瞑ればいくら光が乱反射しても関係ありませんから、さっきの続きをするだけです。もっとも、アイ・カリンがその光景を見続ける事に耐えられるならの話ですが。」
「………ど…どうして巫女の空間にお嬢様と入る方法を見つけ出すことができたのですか…?」
「お嬢と俺はずっと離れませんから。心も体も。それに天宮が目を瞑って目的地に着けるかとお嬢と俺に聞いた時に気づいたんです。迷子になるのは視界に映る目先のものばかり追いかけ、見えない何かを視覚に頼って探し続けるから目的地に辿り着けないのではと思い、もしかしたら逆に目を瞑った先に到達点があるのではないかと…」
「ねぇ、黎。」
お嬢が黎の言葉を遮って黎に声をかける。
「どうしましたか?お嬢。」
「さっきのやつ、貸して。」
「天宮に貰ったやつですね。目的地に着いたら箱らしきものに入れろと言われた…」
黎が左手を離してお嬢の足を地面に一度下ろして左手でポケットから何かを取り出す。
「ジャランッ」
「これですね。」
黎がお嬢の両手のひらに銅でできた円形で平らなものを複数枚渡した。
黎が再び左手でお嬢の足を持ち上げる。
「そ…それはまさか…。」
「花梨ちゃん、あなたこれが欲しいんでしょ?」
「どうして…それを…。」
「神様のいるところのじんじゃってところのおさいせんばこにこれを入れて願い事を言うのが世界線Ⅰにあるって楓ちゃんに聞いた黎に聞いたのよ。」
「………」
「しかもこれ、じゅうえんだまって言って、こっちの世界で言う10メラの価値しかないみたいじゃない。あなた知らない人に自分の住むおうちに突然土足で入られて何かと思えば、これを投げつけられて何でも願いを叶えろって言われたら叶えてあげるの?」
「…あの…それは…。」
「ビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュン!」
「バチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチン!」
「痛いっ!痛いですお嬢様っ!やめてくださいっ!」
お嬢が右手のひらにじゅうえんだまを添えて左手でじゅうえんだまをアイ・カリンに向けて一枚ずつ目にも止まらぬ速さで一つも外さず投げつける。
「こんなものいくらでもくれてやるわよっ!!今すぐ黎の事を諦めなさいっ!!それが私の神様へのお願いよっ!!」
「こ…これはアイ・カリン様が非常に危険です!直ちにこのお2人をこの空間から追い出します!」
「ブーーーン…。」
お嬢と黎は元いた場所に戻された。
「…!?消えたわ…!………全く!花梨ちゃんがこんな事で諦める訳がないわ!これは女の勘よ!」
「さすがお嬢ですね。」
「なにがよっ!もうっ!本当に危ないところだった…」
黎が唇でお嬢の唇に触れお嬢の言葉を遮る。
「どうしてキスをやめてしまうんですか?」
お嬢の顔が赤くなる。
「…れ…黎のばかっ…♡…ばかばかばかっ♡」
お嬢が黎にキスをする。
誰もいない自然のど真ん中にいることを2人は既に忘れていたのかもしれない。
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