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第二十五章 お詣り編

第百三十話 日暈

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「…っ♡…そ…そんなことしても…お姫様のご機嫌はとれないよーだ…。」

「では、こういうのはいかがですか?」

 黎は額をお嬢の額に付け見つめる。

「姫様、俺は姫様の笑顔を見ることが生きがいなのです。どうかその笑顔をお見届けするまで、このままお待ちしてもよろしいでしょうか?」

「…え…♡…ば…ばか…♡ばかばかばかばかばかっ♡何考えてるのよっ♡」

 お嬢は照れた顔を隠すように目を瞑ってそのまま黎にキスをした。

 そして黎もお嬢と同じく目を瞑る。

 暫くお嬢と黎がキスを続けていると辺りの空間が歪み始める。

 2人はそんなことにも気づかずにキスを続ける。

「ちょっと!あなた方!あの方の前でなんてことをされてるんですか!?」

 お嬢と黎の声に女の声が聞こえたような気がしたがそんなことは気のせいだろうと思いキスを続ける。

「聞いているのですか!?おやめさない!おやめさないったら!」

 女が直接止めにかかろうとするが、

「うるさいわね!!今いいところなんだから邪魔しないでよ!!」

 とお嬢に叫ばれ再び黎とお嬢はキスをする。

 女はその圧力に思わず後退る。

「これがあの方が仰るお嬢様…こうなれば…手段を選んではいられませんね…。」

「チリンッ!」

 女は錫杖を両腕を伸ばして横に持つ。

 すると複数の銅鏡が見えない透明の壁のような面から出現する。

 状況は変わってもお嬢と黎は目を瞑ったままキスを止めない。

 銅鏡がそれぞれお嬢と黎を監視するように鏡面を向ける。

「カチッ!」

 その後、複数の銅鏡が一見不規則に見える鏡面に向きを変える。

「反射光っ!」

「キーンッ!」

 女の掛け声で光源をもつ直線上の光る何かが鏡に一瞬跳ね返るのを黎はかわす。

 光は乱反射し辺りは強い光で何も見えなくなる。

「カチッ」

 銅鏡がそれぞれ再び鏡面を変える。

「キーンッ!」

 そして先とは別の軌跡の直線上の光る何かが鏡に一瞬跳ね返るがそれも黎はかわす。

「なっ!?」

 お嬢は黎にお姫様抱っこされたままであり、お嬢と黎はずっと目を瞑ったままキスをしている。

「カチッ」

「キーンッ!」

「カチッ」

「キーンッ!」

 同じことを別の向きに銅鏡を向けて光の軌跡を変えて何度も繰り返すが一向にお嬢にも黎にも当たらない。

「な!なぜなのですか!?」

「ガタンッ!」

 銅鏡は一斉に地面に落ちて女は戦意喪失した。

 そしてお嬢と黎は遂に目を開け互いの口を離す。

「お前が巫女ですね。天宮を利用し俺だけを呼び出すということと、お前が巫女であるということ、お前が言うあの方というのはアイ・カリンです。巫女というのは一般的に神様に仕える女性の事を世界性Ⅰの資料で見ました…って楓が言ってました。そしてここはお前が作った空間、楓が言っていた日本の『神社』に近いですね。お前は魔力で光の反射を利用して視覚では認知できないこの空間をどこでも自在に作り出すことができ、お嬢と俺をここに呼んだんですね。もっとも、正確には俺だけを呼びたかったみたいですがお嬢と俺が常に密着していたためそれは難しかったみたいですね。」

「………どうしてここが吾の作った空間だとお分かりになったのですか?」

「日暈です。日の周りに光の輪があるのが闇属性を纏う俺には目を瞑っていても分かります。お前の思考なんて読まなくても光源の軌跡も分かりますし光速を避けることもお嬢を抱き抱えてる俺にとっては朝飯前です。」


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