【R18】世界線Ⅱ〜恋するお嬢とその舎弟達〜

石原歩

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第二十三章 海陸風編

第百二十一話 空

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「海斗お兄ちゃん!陸斗お兄ちゃん!外の風はこんなに気持ちいいんだよ!僕もいつかはこの風に乗って空を舞いたいんだ!」

「…お前なら出来ますよきっと。私にはできませんが。」

「…なんとかなるんじゃねーの…?…俺にはできねーけど…。」

 海斗と陸斗には年の離れた弟がいた。

 名前は風斗。

 外の風が好きでいつか風とともに空を舞うことが夢だった。

 そんな風斗の夢を海斗と陸斗は一度も否定をした事がなかった。

 自分の好きなことのために全力で生きるならそれが一番本人にとっていいことだと2人も分かっていたし、2人も得意な事や苦手な事がある。

 海斗は普段から風斗に勉学を教えたり課題を与えたりしていたがそれは基本的には本人のやりたい事を見つける為の視野を広げるための手段だと思っていた。

 陸斗はゲームを一緒にやったり海斗よりも外で一緒に遊んだりする事が多く、風斗に多くの刺激を与えてこの世界で楽しめる事を一緒に探してあげたいと思っていた。

 海斗も陸斗も接し方は違うが風斗に対しての面倒見がよく、海斗と陸斗が喧嘩をしても風斗が間に入るとすぐにお互いに冷静になる。

 2人は口には出さないが風斗は、いなくてはならない存在だった。

「この空に、僕の存在するべき場所はあるのだろうか。」

 風斗のこの言葉の意味を海斗と陸斗はまだ深く理解していなかった。

 いや、本当は理解していたのかもしれないが、まさかそんな事はないだろうという心の奥底にあるなにかしらの可能性をかき消していたのかもしれない。

「それじゃあ帰ろっか!海斗お兄ちゃん!陸斗お兄ちゃん!」

 そしてその日の外出から帰った後風斗は約束通り海斗に与えられた課題を終わらせた。

 これが海斗が風斗に与えた最後の課題になるとは3人は誰も思わなかった。

 翌日の早朝のことだった。

「陸斗、起きてください。風斗が家にいないみたいなのですが知りませんか?」

「…あ?…知らねーよ…。…俺はもう少し寝るぞ…。」

「全く、世話の焼ける弟達です。」

 海斗家を後にして風斗を探しに外へ出た。

「………ったく…。…めんどくせー…。」

 陸斗も海斗に言われた事が頭に引っ掛かって起き上がり、家を後にして風斗を探しに外へ出る。

 ……………

「いつも外出してるところには…いないみたいですね。一体どこへ行ってしまったんですか…。」

 ……………

「…ここにもいねーじゃん…アイツ…どこで何してんだ…?」

 ……………

「…昨日彼が言っていたあの言葉…。」

 ……………

「…まさかマジでやったわけじゃねーよな…。」

 ……………

 海斗と陸斗が風斗が昨日言っていた言葉を思い出す。

『この空に、僕の存在するべき場所はあるのだろうか。』

 そして2人が向かった先は家から最も近い崖のある場所だった。

 そして崖の上で2人はばったり出くわした。

「…陸斗…!」

「…お前…!」

 そして2人は崖の下を見下ろす。

 そこには白髪の少年が倒れてる姿が2人の視界には映った。


 次回 第百二十二話 受容
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