上 下
114 / 167
第二十二章 学園編

第百十三話 目の敵

しおりを挟む
 そんなことをしていると、突然、

「ガラガラガラ」

 と教室の扉の開く音が聞こえてきた。

 3人組の男子がやってきた。

「おい、田本黎ってやつはどこのどいつだ?」

 その3人のうちの先頭にいた1人が教室で大声を上げる。

「俺ですけど。」

 3人とも鉄パイプを担いでいる。

「おいこら、てめぇ1年のくせに調子乗ってるみてぇじゃねぇかこの野郎。初日から女といちゃいちゃしやがって。誰の許可でそんなことしてやがんだ?あ?」

 クラス全員教室に入ってきた男子生徒に怯ていた様子だった。

「お嬢の許可ですけど。」

「あ?何言ってんだてめぇ?今日の放課後屋上に来い。逃げんじゃねぇぞこの野郎。」

「お嬢との時間を1秒でも無駄にしたくないので遠慮しておきます。」

「あ?だったら今すぐここでぶちのめしてやるよ!」

 そう言って男子の1人が黎に近づいてくる。

「お嬢、下がっていてください。」

「黎っ!」

「大丈夫ですよ、お嬢。」

「ブンッ!」

 男子の1人が鉄パイプを振りかざすが黎は簡単にかわす。

「ザシュッッッ!」

 黎は男子の右腕を切りつける。

「ぐあっ!くそっ!ナイフだと!?卑怯じゃねーか!?」

 男子は切りつけられた右腕を左手でおさえる。

「武器を持つのはお互い様ですよね。それに3人がかりでくるお前達のほうが余程卑怯だと思いますが…どうします?まだ続けますか?」

「おい…てめぇらやっちまえ!」

 残りの2人が黎に近づく。

「ブンッ!」

「カキンッ!」

 鉄パイプをナイフで弾く。

「ザシュッッッ!」

 黎は間髪入れずもう隙ができて襲いかかってきた男子の右腕を切りつける。

「ぐあっ!?」

 残りの1人は黎のその姿を見て後退りする。

 その男子のもとに黎は歩み寄る。

「あなたはどうしますか?この2人と同じ目に遭いたいですか?」

「ひ…ひぃっっっ!!」

 そう言って残りの男子は逃げ出して行ってしまった。

 残された男子2人にお嬢は、

「言っとくけど、黎はあなた達に全く本気を出してないわよ。バカな真似は止めて大人しく帰ることね。」

 と言われ、切りつけられた腕をかばいながら男子2人は教室を出ていった。

 そしてお嬢は教室中怯えてるクラスメイトに向かって、

「皆、怖い思いをさせてしまったわね。私達の生きている世界ではこれくらいのこと大したことないんだけど、皆にとってはきっと大事よね。これは私のせいよ。ごめんなさい。」

 とお嬢は皆の前で頭を下げる。 

「お嬢のせいではありませんよ。独断で凶器を用いて反撃したのは俺なので、皆の恐怖心を煽ったのは俺です。すみませんでした。」

 黎も皆の前で頭を下げる。

「あの…お2人とも…。」

「…どうしたの?晶ちゃん。」

「あの3人、この学校の『上級生』で、有名な不良グループなんです…。」

「じょうきゅうせい?」

「3人とも3年生なんですよ。あの人達は不良グループの中でも下の位らしくて、この学校の頭を張ってる人がとてつもなく強いらしいので…その方の目の敵にされてしまわないか私心配なんです…。」

「大丈夫ですよ。どんな相手だろうと俺がお嬢をお守りします。」

「…一応その方のお名前をお伝えしておきます…その方のお名前は…高柳遥輝という方です…。」

「!?」

「…い…イヤ…!…そんな…どうして…!」

「お嬢!仮想世界とは言え流石に危険です!ここは一旦現実世界へ戻って紅葉に話を聞いてみましょう!」

「…で…でも…私達…戻り方…わからない…!…黎…どうしよう…!?」

「何か方法があるはずです!とにかくあの男から逃げながら現実世界に戻る方法を模索しましょう!」

 ……………

「君たち、1年生に負けたって本当?」

「すみません…高柳さん…!1年A組の田本黎ってやつが予想以上に強く…」

「バコッッッ!」

「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
 グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」

「しかも武器まで使って3対1で負けたんだよね?」

「す…すみませ…」

「ドカッッッ!」

「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
 グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」

「そして最後にやられた2人の姿を見て君は恐怖のあまり逃げ出してしまったんだよね?」

「ひ…ひぃ…」

「バコーーーンッ!」

「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
 グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」

「1年A組の田本黎君か、面白そうだね。」

 ……………


「…どうしよう…現実世界への戻り方が全然わからない…。」

「…もしかしてこのゲームをクリアしないといけないのでしょうか。」

「…どうすればクリアしたことになるのよ…?」

「まだ…わかりません…しかし…」

「ガラガラガラ」

 お嬢と黎がそんなことを話し合ってると教室の扉が開く。

 そして2人は驚く。

「お前ら、席につけ、オレは国語を担当する八代楓…」

「楓ちゃん!このゲームどうやったらクリアできるの!?」

「…お…お嬢…ですから…」

「なに?ゲームだと?そんなもの学校に持ってくるな。没収だ没収。」

「違うわよ!この世界のこと!」

「何を言っている。お前、噂の南だな。紅葉先生から話は聞いているぞ。お前は生粋のバカだと。それと人の話は最後まで聞け。オレは国語を担当する八代…」

「なんですって!?あの子私のことバカにしてたなんて!絶対に許せないわっ!」

「それならこの『黒板』に『人』という字を書いてみろ。」

 そしてお嬢は楓に白くて細長い筒状の物を渡された。

「こくばん?これどう見ても緑じゃない!!」

「悪くないもっともな疑問だが今は一度それはおいておいてその『チョーク』で書いてみろ。」

「ちょーく?これでこの『壁』に書けばいいのね。」

「壁ではない。黒板だ。」

 そしてお嬢は楓に手渡されたチョークで『人』という字を書いた。

 つもりだった。

「それは『入る』だな。」

「…お嬢…。」

「………黎ーーーっっ!皆が私にいーじーわーるーしーてーくーるーーっっ!」

 お嬢が黎のもとに泣きついてきた。

 しかしそんなお嬢の姿を見ている周りの生徒が、

「ねぇ…南さんって…最初怖かったけど…なんか可愛くない…?」

「うん…私もそう思う…。なんか…世間知らずの天然のお嬢様って感じの子がみたい…。」

 と、お嬢に対する周りの見方が次第に変わっていった。


 次回 第百十四話 自習
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...