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第二十章 乙女編

第百二話 降伏

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 空前絶後の無敗を叩き出し続け、ひたすら戦に出続ける1人の女がいた。

 その女は戦場で生きる者と死ぬ者を決める権利がある程の圧倒的な強さからこう呼ばれるようになった。

 ヴァルキリー。

 左手に盾を持ち、右手に槍を構え、どんな攻撃も受け付けず、その槍の動きに無駄はない。

 しかしその女の元にある1人の男が姿を現す。

「君、負けたことがないんだってね。ちょっと興味あるんだけど。」

「…お前もただ者ではないらしいな。」

 女はその男の言っている意味をすぐに理解することになる。

「バコッッッ!」 

「ぐッ!?」

「俺の拳を受けて立ってられる人はなかなかいないよ。」

「コイツ…!?」

「ドカッッッ!!!」

「ぐあっっ!?」

 女は蹴られてふっ飛ばされた。

 しかし直ぐに立ち上がる。

「お前…オレに膝をつかせるとは…」

「バコッッッ!」

「無駄口叩いてないで続けるよ。」

「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」

「カハッ………!」

「なかなか頑丈だね。気に入ったよ。君、高柳グループの一員にならない?」

「高…柳…グ…ルー…プ…。」

 女は知っていた。

 目的の為なら手段を選ばない冷酷無慈悲な高柳遥輝が創立したグループで、女はそのようなグループに入ることが自身の心念を曲げることに繋がることは予測できていた。

 それに何より女には2人の妹がいた。

 2人の妹をこのようなグループに近づける訳にはいかなかった。

「こと…わ…る。」

「そう。」

「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」

 女は顔を殴られ続け気絶してしまった。

 こうして女は人生史上初めての敗北を経験することとなった。

 ……………

「楓お姉様、遅い…何か嫌な予感する…なんとなくだけど…。E6(イーシックス)、E7(イーセブン)、見てきて。」

「E6(イーシックス)…マイマスターズシスター…サーチモード…。」

「E7(イーセブン)…捜索開始…目的地…八代楓…。」

「ボクも探そう…。花梨お姉様には言わないでおこう…。」

 少女は雨の中傘を持たずに家を飛び出し辺りを見回しながら走り続けた。

「なんとなく分かる…楓お姉様の行くところ…ボクなら…。」

 そして少女は女が倒れてる姿が目に映った。

「…ッ!?」

 女の顔の辺りからは血が出ているが雨に降られた水で滲んでいる。

「楓お姉様ッ!」

 少女が女に呼びかけても返事がなかった。

「楓お姉様ッ!どうしたの!?楓お姉様ッ!」

「『お姉様』ってことは君はこの人の妹なのかな?」

 突然少女の後ろから男の声がした。

 少女が振り向くとその男は恐らく年は少女に楓お姉様と呼ばれている倒れた女と同じぐらいで赤い瞳と髪をしていた。

「お前…誰…?」

「俺は高柳遥輝だよ。」

「…お前が…お姉様を…?」

「この人いくら殴っても全然動じないから大したものだよね。もう何回気絶したか覚えて…」

「ドカンッッッ!!!」

「君、体小さい割にそんな巨大な斧振り回せるんだね。」

「バコッッッ!ドカーーーーーン!」

 少女は顔を殴られふっ飛ばされて気絶した。

 男は少女のもとへ歩み寄る。

 そして少女の髪を掴み持ち上げる。

 すると、

「ま…て…!」

 と倒れていた女が男に声をかける。

「ん?起きたんだ。どうしたの?」

「そい…つに…手を…出すな…!」

「なるほどね。」

 男が少女の髪を掴んで体を持ち上げ、女のもとへ歩み寄る。

「それじゃあもう一度聞くよ。高柳グループの一員にならない?」

 女は迷う。

 女は少女の安全を最優先したいと思っていた。

 手段を選んでいられないことぐらいわかっている。

 そうこう考えているときだった。

「バキューンッ!」

 と銃声が鳴り響き、男の肩に直撃する。

「ん?まだ誰かいるみたいだね。」

「キュイイイイイン!!!」

 男に先端を目掛けて回転するドリルを男はかわす。

「イーセブン(E7)…捜索完了…後…敵探知…戦闘開始…。」

「イーシックス(E6)…マイマスターズミッションクリア…バット…エネミーエンカウント…ロックオン…。」

「お前ら…危険だ…下がれ…!」

「バコッッッ!ガシャーン」

「ドカッッッ!ガシャーン」

 男はやってきた者を殴り、蹴り、次々と牽制していく。

「全員君の味方?」

 男は女に問いかける。

「ああ…頼む…オレ以外の者を…見逃してやってくれ…。」

「じゃあ、高柳グループの一員に…」

「お姉様…ダメだよ…。」

「紅葉…!」

 髪を掴まれたままの少女が目を覚ました。

「姉妹揃って中々芯が強いんだね。それじゃあまずは妹の方から…」

「待ってくれ!わかった!入ろう!入ればいいのだろう!?」

「…賢い選択だね。おめでとう。これで今日から君は高柳グループの一員だよ。」

「待って…お姉様が入るなら…ボクも…。」

「紅葉!それはだめだ!オレだけでいい!」

「ボクはお姉様と一緒じゃなきゃ…嫌だ…。」

「それじゃあ、決まりだね。」

 ……………

「ウッフフフフ…。」

 ……………

「そんな…お2人は力尽くで高柳グループに入れさせられてたなんて…。」

「高柳遥輝…大会の舞台で突然姿を現した方ですよね…。萌美も怖いです…。」

 菱沼と萌美が高柳遥輝の恐ろしさを改めて実感する。

 それを聞いて紅葉が、

「それで終わりじゃないよ。」

 と続きを語り始める。


 次回 第百三話 奴隷
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