【R18】世界線Ⅱ〜恋するお嬢とその舎弟達〜

石原歩

文字の大きさ
上 下
95 / 208
第十八章 惑星編

第九十五話 平行

しおりを挟む
「ちょっと黎!どうしたの!?」

「お嬢…もしかしてこの星は…。」

「…あなたは…どちら様ですか?」

「…!?」

 髪と瞳の色は黒だかそれ以外は高柳遥輝と瓜二つ。しかしあの男のように殺気はなく屈み込んで座っており口調もまるで違う。

「お前は…高柳遥輝ではないのですか…?」

「私は下柳遥輝と申します。女王様によってここに収容されてしまいました。」

「…下の名前があの男と一致している…。どうしてお前だけこんな厳重な扉に収容されていたんですか?」

「私は女王様、と言っても私の血縁の妹なのですがこの国を変えるために革命の運動を進め武力によって女王様と対峙したのですが敗北してこちらに収容されてしまいました。しかし他の者と比較して私は力があるようで普通の鉄格子では簡単に破壊できてしまうのです。」

 性格は正義感が強く穏やかな様だが高柳遥輝と同様パワーはやはり相当な様だ。

「ねぇ、あなた女王様のやり方に反対してるなら私達と一緒に協力してよ。」

「…お嬢…。」

「女王様の力は私の力を遥かに凌ぎます。あまり現実的ではないということをこの身を持って体感しました。それに…」

 下柳遥輝の続きの言葉を2人は待つ。

「女王様の側近には女王様と瓜二つの赤い髪をした男が影武者として存在します。彼の戦闘力も凄まじいんです。」

 この言葉を聞いて黎はこの国の状況を何となく想像の範囲で予測できた。

「お嬢、お嬢と俺は格好や性別は違いますが見た目は髪色を除いてかなり似ています。そしてこの下柳遥輝という男が女王の兄であるということも含めて、この惑星、どうやらお嬢と俺のいる世界と平行しているような気がします…。」

「…どういうことよ?」

「簡単に言うとお嬢と俺の世界にいる人物がこの世界にもいて、それらは別の境遇で育っており、別の人格のお嬢がこの国でいう女王に当たる方なんだと思うんです。なのでこの国の人はお嬢を見ると女王と誤解したり高柳遥輝にそっくりな下柳遥輝がいたり、そして俺にそっくりの女王の影武者がいるということなんでしょう。お嬢と俺は元々そっくりなのでこっちの世界の俺を女王が影武者にし…」

 黎がそんな推理をしていると、

「そこまでじゃ。」

 と突然監禁部屋の通路の入口から女の声がする。

「ふむ、確かにそちは余に似たような顔をしておるな。」

「もしかしてあなたがこの国の女王!?どうして国の皆に酷いことするのよ!?」

「お嬢!いけません!相手は人を殺めることを躊躇わないのですよ!」

「私の顔で、私の声で、そんな酷いことしないでよ!私はあなたのしてる事、絶対に許さないんだからっ!!あと黎があなたにもし万が一惚れでもしたらどう責任とってくれるのよっ!!まああなたみたいな私のパチモンの劣化版の海賊版の粗悪品が黎の心を射止められるとは思えないけどねっ!!あっかんベーーーだっ!!」

「お嬢…最後ので全部台無しです…。」

「噂通りよくしゃべるおなごじゃのう。さて、貴様らも処刑される覚悟はできておるか?」

「…え…しょ…処刑…?」

「…お嬢…?どうしたんですか…?」

「…い…イヤ…黎…私達…死んじゃうの…?」

 お嬢が黎にすがりつく。

「…そういう相手が覚悟である上で乗り込んだのではなかったのですか…?」

「…やだ…怖い…黎…助けて…!」

「わかってま…」

「バコッッッ!ドカーーーーーン!!!」

 突然下柳が女王に殴りかかり、顔に直撃し、ふっ飛ばされる。

「ケホッッッ…!」

 女王が吐血する。

「…これは…俺が高柳遥輝にやられた時の…」

 下柳は女王を仰向けにして馬乗りになる。

「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
 グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」

 下柳が女王の顔を殴り続ける。

 その姿はまさにあの世界の高柳遥輝だった。

「あれだけ恐れられていた女王が、こんなに呆気なく…?」

 下柳が黎の方に振り返る。

「こいつは女王ではなく先程おつたえした影武者の『赤井夢幻』で、元の姿が女王に似ているだけでなく、自身をあらゆる姿の者に変装させることができる『紅のカメレオン』と呼ばれる者です。それにこいつは私なんかに呆気なくやられるはずがありません。なぜなら…」

「俺の正体に気づくとは流石ですね。」

「バシッ!ヒュンッ!」

 馬乗のりにされた夢幻と言われた男の黒髪が赤くなり、力尽くで下柳をひっくり返す。

 そして今度は、

「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
 グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」

 と下柳が顔を殴られる。

「形勢逆転ですね。」

「…いや…止めて…!!」

 お嬢はあの時黎が遥輝に殴られた時の出来事がフラッシュバックしてしまう。

 下柳は気を失ってしまった。

 夢幻はお嬢の方を振り返って立ち上がり、お嬢の方へ歩み寄る。

「…いや…やだ!来ないで…!来ないでください…!!」

 お嬢と夢幻の間に黎が間に入る。

「カメレオンに本来の色はないはずなのに自らを紅と名乗らせるなんて、どんなトンチがきいてるんですかね。」

「ヒュンッ!」

 黎がナイフを夢幻に振りかざすが夢幻にかわされる。

「ドカッッッ!!!」

「カハッッッ…!!」

 黎は夢幻に腹を殴られ吐血する。

 お嬢が黎の体を支える。

「黎っ!!いや…!ごめんなさい…!私達ここに来たばかりで…その…何も知なかったんです…!お願いです…!許してください…!」

 お嬢は泣きながら夢幻に頭を下げる。

「命乞いしてももう遅いですよ。お2人とも処刑は免れないでしょう。」

「じゃあその…黎だけは…黎だけは許してあげてください…!私だけ罰を受けますから…!」

「お嬢…!それは…ダメです…!」

「…なるほど…。」

「ぐッ……くッ…!」

 黎は夢幻に首元を掴まれそのまま持ち上げられ、黎は足が地面から浮いてしまう。

「黎っ…!だめっ!離してっ!!離してくださいっ!!イヤっ!!殺さないでっ!!黎を殺さないでっ!!お願いっ!!お願いですっ!!」

「ここであなたの前で彼を生殺しにしてやるのも悪くはないですね。」

 黎の意識が遠のく。

「だめッ!だめええええええええええええ!!!!!」

 お嬢はその場で泣き崩れてしまう。

 ……………

「そろそろ限界か…。」


 次回 第九十六話 帰還
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...