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第十八章 惑星編
第九十五話 平行
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「ちょっと黎!どうしたの!?」
「お嬢…もしかしてこの星は…。」
「…あなたは…どちら様ですか?」
「…!?」
髪と瞳の色は黒だかそれ以外は高柳遥輝と瓜二つ。しかしあの男のように殺気はなく屈み込んで座っており口調もまるで違う。
「お前は…高柳遥輝ではないのですか…?」
「私は下柳遥輝と申します。女王様によってここに収容されてしまいました。」
「…下の名前があの男と一致している…。どうしてお前だけこんな厳重な扉に収容されていたんですか?」
「私は女王様、と言っても私の血縁の妹なのですがこの国を変えるために革命の運動を進め武力によって女王様と対峙したのですが敗北してこちらに収容されてしまいました。しかし他の者と比較して私は力があるようで普通の鉄格子では簡単に破壊できてしまうのです。」
性格は正義感が強く穏やかな様だが高柳遥輝と同様パワーはやはり相当な様だ。
「ねぇ、あなた女王様のやり方に反対してるなら私達と一緒に協力してよ。」
「…お嬢…。」
「女王様の力は私の力を遥かに凌ぎます。あまり現実的ではないということをこの身を持って体感しました。それに…」
下柳遥輝の続きの言葉を2人は待つ。
「女王様の側近には女王様と瓜二つの赤い髪をした男が影武者として存在します。彼の戦闘力も凄まじいんです。」
この言葉を聞いて黎はこの国の状況を何となく想像の範囲で予測できた。
「お嬢、お嬢と俺は格好や性別は違いますが見た目は髪色を除いてかなり似ています。そしてこの下柳遥輝という男が女王の兄であるということも含めて、この惑星、どうやらお嬢と俺のいる世界と平行しているような気がします…。」
「…どういうことよ?」
「簡単に言うとお嬢と俺の世界にいる人物がこの世界にもいて、それらは別の境遇で育っており、別の人格のお嬢がこの国でいう女王に当たる方なんだと思うんです。なのでこの国の人はお嬢を見ると女王と誤解したり高柳遥輝にそっくりな下柳遥輝がいたり、そして俺にそっくりの女王の影武者がいるということなんでしょう。お嬢と俺は元々そっくりなのでこっちの世界の俺を女王が影武者にし…」
黎がそんな推理をしていると、
「そこまでじゃ。」
と突然監禁部屋の通路の入口から女の声がする。
「ふむ、確かにそちは余に似たような顔をしておるな。」
「もしかしてあなたがこの国の女王!?どうして国の皆に酷いことするのよ!?」
「お嬢!いけません!相手は人を殺めることを躊躇わないのですよ!」
「私の顔で、私の声で、そんな酷いことしないでよ!私はあなたのしてる事、絶対に許さないんだからっ!!あと黎があなたにもし万が一惚れでもしたらどう責任とってくれるのよっ!!まああなたみたいな私のパチモンの劣化版の海賊版の粗悪品が黎の心を射止められるとは思えないけどねっ!!あっかんベーーーだっ!!」
「お嬢…最後ので全部台無しです…。」
「噂通りよくしゃべるおなごじゃのう。さて、貴様らも処刑される覚悟はできておるか?」
「…え…しょ…処刑…?」
「…お嬢…?どうしたんですか…?」
「…い…イヤ…黎…私達…死んじゃうの…?」
お嬢が黎にすがりつく。
「…そういう相手が覚悟である上で乗り込んだのではなかったのですか…?」
「…やだ…怖い…黎…助けて…!」
「わかってま…」
「バコッッッ!ドカーーーーーン!!!」
突然下柳が女王に殴りかかり、顔に直撃し、ふっ飛ばされる。
「ケホッッッ…!」
女王が吐血する。
「…これは…俺が高柳遥輝にやられた時の…」
下柳は女王を仰向けにして馬乗りになる。
「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」
下柳が女王の顔を殴り続ける。
その姿はまさにあの世界の高柳遥輝だった。
「あれだけ恐れられていた女王が、こんなに呆気なく…?」
下柳が黎の方に振り返る。
「こいつは女王ではなく先程おつたえした影武者の『赤井夢幻』で、元の姿が女王に似ているだけでなく、自身をあらゆる姿の者に変装させることができる『紅のカメレオン』と呼ばれる者です。それにこいつは私なんかに呆気なくやられるはずがありません。なぜなら…」
「俺の正体に気づくとは流石ですね。」
「バシッ!ヒュンッ!」
馬乗のりにされた夢幻と言われた男の黒髪が赤くなり、力尽くで下柳をひっくり返す。
そして今度は、
「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」
と下柳が顔を殴られる。
「形勢逆転ですね。」
「…いや…止めて…!!」
お嬢はあの時黎が遥輝に殴られた時の出来事がフラッシュバックしてしまう。
下柳は気を失ってしまった。
夢幻はお嬢の方を振り返って立ち上がり、お嬢の方へ歩み寄る。
「…いや…やだ!来ないで…!来ないでください…!!」
お嬢と夢幻の間に黎が間に入る。
「カメレオンに本来の色はないはずなのに自らを紅と名乗らせるなんて、どんなトンチがきいてるんですかね。」
「ヒュンッ!」
黎がナイフを夢幻に振りかざすが夢幻にかわされる。
「ドカッッッ!!!」
「カハッッッ…!!」
黎は夢幻に腹を殴られ吐血する。
お嬢が黎の体を支える。
「黎っ!!いや…!ごめんなさい…!私達ここに来たばかりで…その…何も知なかったんです…!お願いです…!許してください…!」
お嬢は泣きながら夢幻に頭を下げる。
「命乞いしてももう遅いですよ。お2人とも処刑は免れないでしょう。」
「じゃあその…黎だけは…黎だけは許してあげてください…!私だけ罰を受けますから…!」
「お嬢…!それは…ダメです…!」
「…なるほど…。」
「ぐッ……くッ…!」
黎は夢幻に首元を掴まれそのまま持ち上げられ、黎は足が地面から浮いてしまう。
「黎っ…!だめっ!離してっ!!離してくださいっ!!イヤっ!!殺さないでっ!!黎を殺さないでっ!!お願いっ!!お願いですっ!!」
「ここであなたの前で彼を生殺しにしてやるのも悪くはないですね。」
黎の意識が遠のく。
「だめッ!だめええええええええええええ!!!!!」
お嬢はその場で泣き崩れてしまう。
……………
「そろそろ限界か…。」
次回 第九十六話 帰還
「お嬢…もしかしてこの星は…。」
「…あなたは…どちら様ですか?」
「…!?」
髪と瞳の色は黒だかそれ以外は高柳遥輝と瓜二つ。しかしあの男のように殺気はなく屈み込んで座っており口調もまるで違う。
「お前は…高柳遥輝ではないのですか…?」
「私は下柳遥輝と申します。女王様によってここに収容されてしまいました。」
「…下の名前があの男と一致している…。どうしてお前だけこんな厳重な扉に収容されていたんですか?」
「私は女王様、と言っても私の血縁の妹なのですがこの国を変えるために革命の運動を進め武力によって女王様と対峙したのですが敗北してこちらに収容されてしまいました。しかし他の者と比較して私は力があるようで普通の鉄格子では簡単に破壊できてしまうのです。」
性格は正義感が強く穏やかな様だが高柳遥輝と同様パワーはやはり相当な様だ。
「ねぇ、あなた女王様のやり方に反対してるなら私達と一緒に協力してよ。」
「…お嬢…。」
「女王様の力は私の力を遥かに凌ぎます。あまり現実的ではないということをこの身を持って体感しました。それに…」
下柳遥輝の続きの言葉を2人は待つ。
「女王様の側近には女王様と瓜二つの赤い髪をした男が影武者として存在します。彼の戦闘力も凄まじいんです。」
この言葉を聞いて黎はこの国の状況を何となく想像の範囲で予測できた。
「お嬢、お嬢と俺は格好や性別は違いますが見た目は髪色を除いてかなり似ています。そしてこの下柳遥輝という男が女王の兄であるということも含めて、この惑星、どうやらお嬢と俺のいる世界と平行しているような気がします…。」
「…どういうことよ?」
「簡単に言うとお嬢と俺の世界にいる人物がこの世界にもいて、それらは別の境遇で育っており、別の人格のお嬢がこの国でいう女王に当たる方なんだと思うんです。なのでこの国の人はお嬢を見ると女王と誤解したり高柳遥輝にそっくりな下柳遥輝がいたり、そして俺にそっくりの女王の影武者がいるということなんでしょう。お嬢と俺は元々そっくりなのでこっちの世界の俺を女王が影武者にし…」
黎がそんな推理をしていると、
「そこまでじゃ。」
と突然監禁部屋の通路の入口から女の声がする。
「ふむ、確かにそちは余に似たような顔をしておるな。」
「もしかしてあなたがこの国の女王!?どうして国の皆に酷いことするのよ!?」
「お嬢!いけません!相手は人を殺めることを躊躇わないのですよ!」
「私の顔で、私の声で、そんな酷いことしないでよ!私はあなたのしてる事、絶対に許さないんだからっ!!あと黎があなたにもし万が一惚れでもしたらどう責任とってくれるのよっ!!まああなたみたいな私のパチモンの劣化版の海賊版の粗悪品が黎の心を射止められるとは思えないけどねっ!!あっかんベーーーだっ!!」
「お嬢…最後ので全部台無しです…。」
「噂通りよくしゃべるおなごじゃのう。さて、貴様らも処刑される覚悟はできておるか?」
「…え…しょ…処刑…?」
「…お嬢…?どうしたんですか…?」
「…い…イヤ…黎…私達…死んじゃうの…?」
お嬢が黎にすがりつく。
「…そういう相手が覚悟である上で乗り込んだのではなかったのですか…?」
「…やだ…怖い…黎…助けて…!」
「わかってま…」
「バコッッッ!ドカーーーーーン!!!」
突然下柳が女王に殴りかかり、顔に直撃し、ふっ飛ばされる。
「ケホッッッ…!」
女王が吐血する。
「…これは…俺が高柳遥輝にやられた時の…」
下柳は女王を仰向けにして馬乗りになる。
「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」
下柳が女王の顔を殴り続ける。
その姿はまさにあの世界の高柳遥輝だった。
「あれだけ恐れられていた女王が、こんなに呆気なく…?」
下柳が黎の方に振り返る。
「こいつは女王ではなく先程おつたえした影武者の『赤井夢幻』で、元の姿が女王に似ているだけでなく、自身をあらゆる姿の者に変装させることができる『紅のカメレオン』と呼ばれる者です。それにこいつは私なんかに呆気なくやられるはずがありません。なぜなら…」
「俺の正体に気づくとは流石ですね。」
「バシッ!ヒュンッ!」
馬乗のりにされた夢幻と言われた男の黒髪が赤くなり、力尽くで下柳をひっくり返す。
そして今度は、
「グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!」
と下柳が顔を殴られる。
「形勢逆転ですね。」
「…いや…止めて…!!」
お嬢はあの時黎が遥輝に殴られた時の出来事がフラッシュバックしてしまう。
下柳は気を失ってしまった。
夢幻はお嬢の方を振り返って立ち上がり、お嬢の方へ歩み寄る。
「…いや…やだ!来ないで…!来ないでください…!!」
お嬢と夢幻の間に黎が間に入る。
「カメレオンに本来の色はないはずなのに自らを紅と名乗らせるなんて、どんなトンチがきいてるんですかね。」
「ヒュンッ!」
黎がナイフを夢幻に振りかざすが夢幻にかわされる。
「ドカッッッ!!!」
「カハッッッ…!!」
黎は夢幻に腹を殴られ吐血する。
お嬢が黎の体を支える。
「黎っ!!いや…!ごめんなさい…!私達ここに来たばかりで…その…何も知なかったんです…!お願いです…!許してください…!」
お嬢は泣きながら夢幻に頭を下げる。
「命乞いしてももう遅いですよ。お2人とも処刑は免れないでしょう。」
「じゃあその…黎だけは…黎だけは許してあげてください…!私だけ罰を受けますから…!」
「お嬢…!それは…ダメです…!」
「…なるほど…。」
「ぐッ……くッ…!」
黎は夢幻に首元を掴まれそのまま持ち上げられ、黎は足が地面から浮いてしまう。
「黎っ…!だめっ!離してっ!!離してくださいっ!!イヤっ!!殺さないでっ!!黎を殺さないでっ!!お願いっ!!お願いですっ!!」
「ここであなたの前で彼を生殺しにしてやるのも悪くはないですね。」
黎の意識が遠のく。
「だめッ!だめええええええええええええ!!!!!」
お嬢はその場で泣き崩れてしまう。
……………
「そろそろ限界か…。」
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