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第十八章 惑星編
第九十二話 旅
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暫くお嬢は黎にキスをしていた。
しかし黎は心の中で思った。
これが旅なのかと。
そしてお嬢が黎を見つめ、辺りを見回してようやく異変に気づく。
「ここ…どこ…?」
……………
「お嬢様と黎様が行き着いた場所。それは荒廃したような何もない場所でした。それはとてもとてもさみしい場所です。実はあのプラネタリウムでは男女の2人で夜の映像が映し出された際に性行為においてどちらか一方が絶頂に達した事で夜空の中で宙を舞う事となり、宙の中で男女が抱きしめ合ってキスをし続ける事でこちらにたどり着くという仕組みになっていました。それらの条件を太陽様の説明もなくいともあっさり達成されてしまう事を太陽様は見抜いてお2人をお招きしたのでしょうか?」
……………
「お嬢、大丈夫ですよ。きっとこれは旅の始まりです。」
「これが…旅の始まり…?すごくさみしい所だね…。」
「俺はお嬢がいればどこにいてもさみしくありません。さぁ、行きましょう。2人きりの旅行ですよ。」
お嬢が顔を赤らめる。
「…もうっ♡」
お嬢が黎の腕を組んで地平線へと歩き出す。
辺りは人1人いない。
所々小さな草が生えているだけで生命の存在をほとんど感じられない。
黎が太陽に皆既日食をした時の景色に近いかもしれない。
しかし歩いている最中お嬢はあることに気づいていた。
「…ねぇ…黎…。」
「どうしました?」
「…どうして記憶共有してくれないの…?」
「…え?」
黎はこの違和感に気づくのが遅れた。
「…!?…俺も…お嬢からの記憶が送られて来ません…!」
「黎が自分でやってるんじゃないの?」
「そんなはずありません!…まさかこの世界…魔法の類が存在しないのですか…?」
「それって…世界線Ⅰのこと…?」
「いや…まだ確信はありませんが…それにしても…お嬢と記憶を共有しないことに俺が気づくのがこんなに遅れてしまうなんて…。」
「それって心が通じ合ってるからじゃない?私達。比喩じゃなくて本当に通じ合ってるような気がするの。」
「…お嬢…。」
「なんか私は嬉しいよ。そういうの。」
「お嬢…俺も同じです。」
お嬢と黎は抱きしめ合う。
そして暫くしてから再び歩き始める。
すると地平線から何か石でできたオブジェクトのような物が見えてくる。
2人はそれに近づく。
「これは…文明があった証ですね…。知性を持った生命がいたのでしょうか。」
「…ここに何か書いてあるけど…全然読めない…。」
お嬢が地面に刻まれた物を見ながら言う。
「確かに解読は出来ませんが文字でしょうか。ここはかつて生命活動が行われていた可能性が高いです。ですが辺りに人のような者はいないようですね。」
「…もう誰もいないのかな…。」
「まだ断定するのは早いですよ。少し休憩しますか?」
「…うん…。」
2人はオブジェクトの岩に腰をかける。
結構な距離を歩いた。
「…黎…。」
「どうしました?お嬢。」
「ずっと側にいてね…。」
「もちろんです。約束しますよ。」
「…うん…。」
お嬢が黎の腕にすがりついて黎に体を寄せる。
黎は考えていた。
南源蔵がいた世界線Ⅰにしては随分書物に書かれていた内容と異なる。
源蔵のいた日本とは異なる国なのか、そもそも世界線Ⅰではないのか。
共通点は魔法の類が一切使えないことから、今いる場所は魔法が実在しないということ。
或いはもっと別の何かか…。
黎は原点に立ち返った。
そもそもなぜ夜空の映像を映し出すプラネタリウムだったのか。
突然太陽は見せたいものがあると言って屋敷を訪れた。
見せたいものとはきっとこの場所だ。
何故こんなさびれた場所にお嬢と黎を2人だけ呼んだのか。
お嬢と黎でなくてはならなかった理由があったのだろうか。
……………
「いいですね。黎様の頭の回転は全く知らない場所に連れてこられたとは思えない程の順応さです。ワタクシますます黎様が欲しくなってしまいました…。」
……………
黎が色々考えている時お嬢は目を瞑って黎に寄りかかって眠っていた。
「…黎…好き…。」
お嬢は寝言を言っていた。
「お嬢、俺もお嬢が好きです。」
お嬢の寝顔を見ていると黎は不思議と元気が出てくる。
眠っているお嬢を黎は抱きしめた。
そして黎は考え続ける。
色々な疑問を抱いていると黎はここから元の場所に戻ることよりもここのことについてもっと知りたいと思う気持ちが勝った。
暫く考えているとお嬢が目を覚ます。
「…あれ…黎…私…寝てた…?」
「ええ。少し休めましたか?」
「…うん…ごめんね…。」
「どうして謝るんですか?」
「黎も疲れてるのに私だけ休んじゃって…。」
「お嬢の寝顔を見てたら疲れなんてとれますよ。」
お嬢の顔が赤くなる。
「…黎っていつも優しいよね…。」
「俺は普通にしてるつもりです。それより、ここはなんだか俺が知らないことが沢山ある気がします。もう少し歩いてみませんか?」
「…うん。黎はもう少し休まなくて本当に平気…?」
「大丈夫ですよ。さぁ、行きましょうか。」
黎がお嬢を抱きしめたまま2人で一緒に立ち上がる。
そしてさっき来た道と反対方向へと歩き始める。
魔法が使えないため黎はシャドームーブのように素速く移動することもできない。
体力も温存しながら進まなければならない。
日が暮れてしまうと暗くなって何も見えなくなってしまうため明るいうちに移動しなければならない。
もちろん可能なら宿を見つけたい。
食事は幸い2人とも少食であるため空腹はそこまで苦痛ではない。
1日中何も食べないことぐらい大したことない。
そして暫く歩いていると遠くの方から何やら人影らしきものが見えてくる。
それも1人ではない。
「…あれは…人…!?黎っ!あの人達の所に行って色々聞いてみましょう!」
「待ってくださいお嬢。あれは…。」
お嬢と黎の目に映ったのは合計12人の斧や剣などの武器を持った集団だった。
「お嬢…!逃げましょう…!」
黎がお嬢の腕を引いて走る。
「…!?ちょっと!黎…!?」
集団の1人がお嬢と黎を指差して集団が追いかけてくる。
「黎!一体どういう事なの!?」
「あれは恐らく、『山賊』です!」
次回 第九十三話 山賊
しかし黎は心の中で思った。
これが旅なのかと。
そしてお嬢が黎を見つめ、辺りを見回してようやく異変に気づく。
「ここ…どこ…?」
……………
「お嬢様と黎様が行き着いた場所。それは荒廃したような何もない場所でした。それはとてもとてもさみしい場所です。実はあのプラネタリウムでは男女の2人で夜の映像が映し出された際に性行為においてどちらか一方が絶頂に達した事で夜空の中で宙を舞う事となり、宙の中で男女が抱きしめ合ってキスをし続ける事でこちらにたどり着くという仕組みになっていました。それらの条件を太陽様の説明もなくいともあっさり達成されてしまう事を太陽様は見抜いてお2人をお招きしたのでしょうか?」
……………
「お嬢、大丈夫ですよ。きっとこれは旅の始まりです。」
「これが…旅の始まり…?すごくさみしい所だね…。」
「俺はお嬢がいればどこにいてもさみしくありません。さぁ、行きましょう。2人きりの旅行ですよ。」
お嬢が顔を赤らめる。
「…もうっ♡」
お嬢が黎の腕を組んで地平線へと歩き出す。
辺りは人1人いない。
所々小さな草が生えているだけで生命の存在をほとんど感じられない。
黎が太陽に皆既日食をした時の景色に近いかもしれない。
しかし歩いている最中お嬢はあることに気づいていた。
「…ねぇ…黎…。」
「どうしました?」
「…どうして記憶共有してくれないの…?」
「…え?」
黎はこの違和感に気づくのが遅れた。
「…!?…俺も…お嬢からの記憶が送られて来ません…!」
「黎が自分でやってるんじゃないの?」
「そんなはずありません!…まさかこの世界…魔法の類が存在しないのですか…?」
「それって…世界線Ⅰのこと…?」
「いや…まだ確信はありませんが…それにしても…お嬢と記憶を共有しないことに俺が気づくのがこんなに遅れてしまうなんて…。」
「それって心が通じ合ってるからじゃない?私達。比喩じゃなくて本当に通じ合ってるような気がするの。」
「…お嬢…。」
「なんか私は嬉しいよ。そういうの。」
「お嬢…俺も同じです。」
お嬢と黎は抱きしめ合う。
そして暫くしてから再び歩き始める。
すると地平線から何か石でできたオブジェクトのような物が見えてくる。
2人はそれに近づく。
「これは…文明があった証ですね…。知性を持った生命がいたのでしょうか。」
「…ここに何か書いてあるけど…全然読めない…。」
お嬢が地面に刻まれた物を見ながら言う。
「確かに解読は出来ませんが文字でしょうか。ここはかつて生命活動が行われていた可能性が高いです。ですが辺りに人のような者はいないようですね。」
「…もう誰もいないのかな…。」
「まだ断定するのは早いですよ。少し休憩しますか?」
「…うん…。」
2人はオブジェクトの岩に腰をかける。
結構な距離を歩いた。
「…黎…。」
「どうしました?お嬢。」
「ずっと側にいてね…。」
「もちろんです。約束しますよ。」
「…うん…。」
お嬢が黎の腕にすがりついて黎に体を寄せる。
黎は考えていた。
南源蔵がいた世界線Ⅰにしては随分書物に書かれていた内容と異なる。
源蔵のいた日本とは異なる国なのか、そもそも世界線Ⅰではないのか。
共通点は魔法の類が一切使えないことから、今いる場所は魔法が実在しないということ。
或いはもっと別の何かか…。
黎は原点に立ち返った。
そもそもなぜ夜空の映像を映し出すプラネタリウムだったのか。
突然太陽は見せたいものがあると言って屋敷を訪れた。
見せたいものとはきっとこの場所だ。
何故こんなさびれた場所にお嬢と黎を2人だけ呼んだのか。
お嬢と黎でなくてはならなかった理由があったのだろうか。
……………
「いいですね。黎様の頭の回転は全く知らない場所に連れてこられたとは思えない程の順応さです。ワタクシますます黎様が欲しくなってしまいました…。」
……………
黎が色々考えている時お嬢は目を瞑って黎に寄りかかって眠っていた。
「…黎…好き…。」
お嬢は寝言を言っていた。
「お嬢、俺もお嬢が好きです。」
お嬢の寝顔を見ていると黎は不思議と元気が出てくる。
眠っているお嬢を黎は抱きしめた。
そして黎は考え続ける。
色々な疑問を抱いていると黎はここから元の場所に戻ることよりもここのことについてもっと知りたいと思う気持ちが勝った。
暫く考えているとお嬢が目を覚ます。
「…あれ…黎…私…寝てた…?」
「ええ。少し休めましたか?」
「…うん…ごめんね…。」
「どうして謝るんですか?」
「黎も疲れてるのに私だけ休んじゃって…。」
「お嬢の寝顔を見てたら疲れなんてとれますよ。」
お嬢の顔が赤くなる。
「…黎っていつも優しいよね…。」
「俺は普通にしてるつもりです。それより、ここはなんだか俺が知らないことが沢山ある気がします。もう少し歩いてみませんか?」
「…うん。黎はもう少し休まなくて本当に平気…?」
「大丈夫ですよ。さぁ、行きましょうか。」
黎がお嬢を抱きしめたまま2人で一緒に立ち上がる。
そしてさっき来た道と反対方向へと歩き始める。
魔法が使えないため黎はシャドームーブのように素速く移動することもできない。
体力も温存しながら進まなければならない。
日が暮れてしまうと暗くなって何も見えなくなってしまうため明るいうちに移動しなければならない。
もちろん可能なら宿を見つけたい。
食事は幸い2人とも少食であるため空腹はそこまで苦痛ではない。
1日中何も食べないことぐらい大したことない。
そして暫く歩いていると遠くの方から何やら人影らしきものが見えてくる。
それも1人ではない。
「…あれは…人…!?黎っ!あの人達の所に行って色々聞いてみましょう!」
「待ってくださいお嬢。あれは…。」
お嬢と黎の目に映ったのは合計12人の斧や剣などの武器を持った集団だった。
「お嬢…!逃げましょう…!」
黎がお嬢の腕を引いて走る。
「…!?ちょっと!黎…!?」
集団の1人がお嬢と黎を指差して集団が追いかけてくる。
「黎!一体どういう事なの!?」
「あれは恐らく、『山賊』です!」
次回 第九十三話 山賊
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