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第十四章 偶像編
第七十一話 投稿者
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「お嬢…いくらなんでも流石にそれは…」
「何よ!無理だっていうの!?」
お嬢と黎がやり取りをしていると楓が部屋から広間に出てくる。
「随分騒がしいな。」
「楓ちゃん!楓ちゃんももしかしてこの萌美って子のこと知ってるの!?」
「ああ、最近流行りの有名なアイドル歌手で世界一可愛…」
楓が次の言葉を言いかけた途端、お嬢からとてつもない殺気を感じとった。
「…世界一可愛そうなヤツだと言われている。」
「え?この子可愛そうなの?」
お嬢が楓の意外な言葉に疑問を抱く。
「ああ、アイドル歌手として舞台に立つことで有名になることは羨望の眼差しをを浴びることが多いのは事実だが本人にとってはかなり過酷な事でな。同じアイドル歌手などのライバルとの競争はもちろんだがその他にも過激なファン同士での衝突や陰湿な者であればアイドルへのストーカーや精神的に傷つけることを目的とした誹謗中傷も必ずと言っていいほどあるのだ。だから世界一可愛そうなやつなのだ。」
お嬢の怒りから逃れる為の退路を即興で見つけ出し、表明した楓を黎は心の内側で褒めた。
「なによそれ!酷すぎるじゃない!」
しかしお嬢が今度は別の理由で怒り始めた。
「だが表舞台に立ってファンを元気づけるために歌って踊るという活動をするという夢を追いかけ努力に励み続けること自体は悪いことではない。本人が自らの意思でそれを決めたのならオレはむしろ背中を押してやりたいぐらいだ。」
お嬢は楓の話を聞いて今度は何かを真剣に考え始めた。
「…アイドル…。」
「…お嬢…?」
そしてお嬢は何か思い立ったようだった。
「決めたわ!私もアイドル歌手を目指すわ!」
「…お嬢…本気で言ってるんですか…?」
「なによ!?私にはできないって言うの!?黎は私のこと応援してくれないの!?」
「いえ…そういう訳では…」
「デビューは明日よ!早速手配をよろしくね!」
次の日…
「君だけの天使はいつだって~♪あなたを見守り続けるの~♪これが恋なのかどうかは~♪天使はわからぬけ~れ~ど~♪この歌はきっと君~への♪…一途の、愛だと思うの♡」
お嬢は舞台で歌って踊っていた。
それにかなり盛り上がっている。
流石世界最大の組織南グループだ。
そして流石はお嬢、一度やると決めた事は必ずやる。
そしてお嬢の披露が終わり、お嬢は舞台裏に戻る。
舞台裏には黎、楓、紅葉がいた。
「黎っ!どうだった!?私の晴れ舞台っ!」
「はい、とても素晴らしかったです。歌も踊りも素晴らしかったです。確かに…確かに素晴らしかったんですがお嬢…」
「何よ!!何か不満でもあるの!?」
お嬢が両手を腰に当てている。
「パクリなんですよお嬢…。さっきの…歌も踊りも全て萌美のパクリなんです…。そしてこれ全て紅葉が映像を各箇所のカメラを設置してライブ配信してましてその内容を紅葉が今自前のノートパソコンでチェックしてるのですが…」
「炎上のコメントが凄いきてるね…。」
『もえみんの偽物が!』
『萌美ちゃんのパクリじゃない!』
『何だコイツは!?俺の萌美ちゃんを侮辱しやがって!』
「でも観客はいっぱい来てたじゃない!!皆私に夢中になってたわよ!!」
「あれ全員南グループの舎弟なんですよお嬢…。さっき菱沼に確認したら南グループの舎弟達だったんです…。この劇場の司会も菱沼がやってますし彼女が全員把握してたんですよ…。ほとんど『サクラ』みたいなもんなんですよお嬢…。」
「さくら!?さくらってあの暖かくなると咲く綺麗な花のことじゃない!それっていい事じゃないの!?」
「いや、この意味でのサクラはその綺麗に咲いては儚く直ぐに散ってしまうことから転じてあらかじめ協力者にその場に居合わせる観客が多いと思わせ社会的な信用度を勝ち取ろうと協力するその者たちのことだ。その者達は協力を終えれば直ぐにその場から去ってしまうことからそう呼ばれるようになったのだ。」
「何よそれ!やってることほぼ詐欺じゃない!じゃあ私の観客は実質1人もいなかったってこと!?」
「いえお嬢、俺はずっとお嬢だけを観ていました。お嬢の歌う姿も踊る姿も非常に妖艶で魅力的でしたよ。」
黎がお嬢のもとへ歩み寄る。
「黎…。」
お嬢も黎のもとへ歩み寄る。
そして互いに抱きしめ合う。
「それに悪いことばかり書かれてる訳じゃないみたいだよ?」
『確かに完全にパクリだけど、なんかこの子、綺麗じゃない?』
『俺、本家よりこっちの方が好きかも。』
『この子、名前なんて言うんだろう?』
お嬢に対する称賛のコメントもあった。
一方で同じ投稿者がかなり短いスパンで、
『下手すぎ。』
『ルンルン気分で歌うな。』
『プハハハッ!マジうける!』
と書かれたコメントに黎は直ぐに違和感を感じた。
「自動送信ツール?同じ視聴者から連続で3件コメントが来た。」
「しかし妙だな。上手いか下手かは見る側の主観的な評価だとしてお嬢はルンルン気分で歌っていた訳ではなく寧ろ黎がさっき言っていたように妖艶、つまりなまめいて美しい様であったことだ。さらに笑い方をこのように先の2件に続けて文字でわざわざ表現するとは…」
「…これは暗号ですね。」
次回 第七十二話 昏睡
「何よ!無理だっていうの!?」
お嬢と黎がやり取りをしていると楓が部屋から広間に出てくる。
「随分騒がしいな。」
「楓ちゃん!楓ちゃんももしかしてこの萌美って子のこと知ってるの!?」
「ああ、最近流行りの有名なアイドル歌手で世界一可愛…」
楓が次の言葉を言いかけた途端、お嬢からとてつもない殺気を感じとった。
「…世界一可愛そうなヤツだと言われている。」
「え?この子可愛そうなの?」
お嬢が楓の意外な言葉に疑問を抱く。
「ああ、アイドル歌手として舞台に立つことで有名になることは羨望の眼差しをを浴びることが多いのは事実だが本人にとってはかなり過酷な事でな。同じアイドル歌手などのライバルとの競争はもちろんだがその他にも過激なファン同士での衝突や陰湿な者であればアイドルへのストーカーや精神的に傷つけることを目的とした誹謗中傷も必ずと言っていいほどあるのだ。だから世界一可愛そうなやつなのだ。」
お嬢の怒りから逃れる為の退路を即興で見つけ出し、表明した楓を黎は心の内側で褒めた。
「なによそれ!酷すぎるじゃない!」
しかしお嬢が今度は別の理由で怒り始めた。
「だが表舞台に立ってファンを元気づけるために歌って踊るという活動をするという夢を追いかけ努力に励み続けること自体は悪いことではない。本人が自らの意思でそれを決めたのならオレはむしろ背中を押してやりたいぐらいだ。」
お嬢は楓の話を聞いて今度は何かを真剣に考え始めた。
「…アイドル…。」
「…お嬢…?」
そしてお嬢は何か思い立ったようだった。
「決めたわ!私もアイドル歌手を目指すわ!」
「…お嬢…本気で言ってるんですか…?」
「なによ!?私にはできないって言うの!?黎は私のこと応援してくれないの!?」
「いえ…そういう訳では…」
「デビューは明日よ!早速手配をよろしくね!」
次の日…
「君だけの天使はいつだって~♪あなたを見守り続けるの~♪これが恋なのかどうかは~♪天使はわからぬけ~れ~ど~♪この歌はきっと君~への♪…一途の、愛だと思うの♡」
お嬢は舞台で歌って踊っていた。
それにかなり盛り上がっている。
流石世界最大の組織南グループだ。
そして流石はお嬢、一度やると決めた事は必ずやる。
そしてお嬢の披露が終わり、お嬢は舞台裏に戻る。
舞台裏には黎、楓、紅葉がいた。
「黎っ!どうだった!?私の晴れ舞台っ!」
「はい、とても素晴らしかったです。歌も踊りも素晴らしかったです。確かに…確かに素晴らしかったんですがお嬢…」
「何よ!!何か不満でもあるの!?」
お嬢が両手を腰に当てている。
「パクリなんですよお嬢…。さっきの…歌も踊りも全て萌美のパクリなんです…。そしてこれ全て紅葉が映像を各箇所のカメラを設置してライブ配信してましてその内容を紅葉が今自前のノートパソコンでチェックしてるのですが…」
「炎上のコメントが凄いきてるね…。」
『もえみんの偽物が!』
『萌美ちゃんのパクリじゃない!』
『何だコイツは!?俺の萌美ちゃんを侮辱しやがって!』
「でも観客はいっぱい来てたじゃない!!皆私に夢中になってたわよ!!」
「あれ全員南グループの舎弟なんですよお嬢…。さっき菱沼に確認したら南グループの舎弟達だったんです…。この劇場の司会も菱沼がやってますし彼女が全員把握してたんですよ…。ほとんど『サクラ』みたいなもんなんですよお嬢…。」
「さくら!?さくらってあの暖かくなると咲く綺麗な花のことじゃない!それっていい事じゃないの!?」
「いや、この意味でのサクラはその綺麗に咲いては儚く直ぐに散ってしまうことから転じてあらかじめ協力者にその場に居合わせる観客が多いと思わせ社会的な信用度を勝ち取ろうと協力するその者たちのことだ。その者達は協力を終えれば直ぐにその場から去ってしまうことからそう呼ばれるようになったのだ。」
「何よそれ!やってることほぼ詐欺じゃない!じゃあ私の観客は実質1人もいなかったってこと!?」
「いえお嬢、俺はずっとお嬢だけを観ていました。お嬢の歌う姿も踊る姿も非常に妖艶で魅力的でしたよ。」
黎がお嬢のもとへ歩み寄る。
「黎…。」
お嬢も黎のもとへ歩み寄る。
そして互いに抱きしめ合う。
「それに悪いことばかり書かれてる訳じゃないみたいだよ?」
『確かに完全にパクリだけど、なんかこの子、綺麗じゃない?』
『俺、本家よりこっちの方が好きかも。』
『この子、名前なんて言うんだろう?』
お嬢に対する称賛のコメントもあった。
一方で同じ投稿者がかなり短いスパンで、
『下手すぎ。』
『ルンルン気分で歌うな。』
『プハハハッ!マジうける!』
と書かれたコメントに黎は直ぐに違和感を感じた。
「自動送信ツール?同じ視聴者から連続で3件コメントが来た。」
「しかし妙だな。上手いか下手かは見る側の主観的な評価だとしてお嬢はルンルン気分で歌っていた訳ではなく寧ろ黎がさっき言っていたように妖艶、つまりなまめいて美しい様であったことだ。さらに笑い方をこのように先の2件に続けて文字でわざわざ表現するとは…」
「…これは暗号ですね。」
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