【R18】世界線Ⅱ〜恋するお嬢とその舎弟達〜

石原歩

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第十四章 偶像編

第七十三話 崇拝

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「萌美は確かにアイドル歌手として活動してはいるんです。その一方である協会の教祖として崇められているみたいなのです。」

「みたいという事は…自覚はないのですか?」

「はい…いつも決まった時間になると薬で眠らされて、崇められる儀式というものも萌美自身…何をされているのかもわかりません…。ですがいつも目を覚ますと凄くとても嫌な気持ちになるんです…。萌美も何度か彼らに問いかけました。でも彼らの言うことはいつも同じで、アイドルというのは偶像、つまり崇められる対象にあるべきだと言うことの一点張りなんです。」

「場所は協会…偶像崇拝ということでしょうか…。」

 …………

「お前ら萌美の事をどう思っているのだ?」

「あのお方は教祖様です。そのような失礼な呼び方をされる方には神罰を下されるべきです。」

 祭司の1人が楓に矛を突き刺そうとする。

「カキンッ」

「なっ!」

「悪いがお前らのなまくらの武器ではオレの防御魔法に到底敵うことはない。ここで一つ提案してやろう。オレが萌美にかわって教祖になってやる。」

「!?卑しいあなたがあの方の代わりになるはずなど…」

「待ってください。この方からはただならぬオーラを感じます。これは新たなる神のお告げかもしれません。」

「オレは萌美のように薬で眠らされる必要はない。何をされても抵抗しない。好きにするがいい。」

「それでは決まりですね。ついてきて下さい。」

「イストル、ここはオレに任せておけ。」

「主殿のお姉様、どうかご武運を。」

 そして楓は神殿の奥の祭壇に案内される。

「それではこちらに横になっていただきます。」

 楓は祭壇の中心にある寝具のような所に寝かせるように指示された。

「ああ、わかった。」

「…それでは、儀式を始めます。」

 すると楓の元に複数の男の信者の手が楓の肌に触れようとする。

 しかし、

「カキンッ」

「うわっ!?なんだこれは!?」

 と楓の肌に触れようとした1人の男の手が強く弾かれる。

「何をしている。儀式とやらを早く続けるが良い。」

 他の男が恐る恐る楓の肌に触れようとする。

「カキンッ」

「うわっ!?どうなってるんだ!?」

「お前らは一体何がしたいのだ?」

 楓が起き上がる。

 信者たちが後ずさる。

「くッ!この者は反逆者だ!総員っ!かかれっ!」

「カキンッカキンッカキンッカキンッカキンッ」

 祭司達の楓に向けられた矛が全て弾かれる。

「い…一体どういうことですか!?」

「先も言ったがそのようななまくらな武装でオレの防御魔法を貫くことは出来ない。お前らの萌美にしていた事はよくわかった。この事は南グループの者たちに情報共有させてもらおう。」

「み…南グループ…!そ、それだけはご勘弁ください!」

「それならこれ以降萌美にはオレにしたように今後は手を出さないと約束しろ。アイドルは元の意味こそ偶像だが萌美の想い描く理想像は一般市民に普及したアイドルという意味での活動を続けるという夢にあるのだ。今後もその活動を邪魔をするのならばオレ達はお前達に容赦はしないだろう。そして死にたくなければこの協会からは出ていけ。近い内にこの協会はなくなる。」

「…協会が…なくなる…?どういう意味ですか…?」

「言葉通りの意味だ。お前らは南グループで一番怒らせてはいけない者を怒らせることになるだろうからそれだけの覚悟はしておけ。そうだな…推奨する出ていくタイミングは…今すぐだな。」

 そして楓は通信機器を取り出して紅葉と連絡を取り事の経緯を説明した。

 ……………

 紅葉が事の経緯を理解してそれをお嬢、黎に共有されて真っ先に行動したのはお嬢だった。

 お嬢は左手を前に掲げ目を瞑る。

「…それをやるのは久しぶりですね…お嬢。」

 そしてしばらくしてお嬢が手をおろし目を見開く。

「これで萌美ちゃんはあの協会に行かなくて済むわよ。」

「え?そうなんですか?でもどうして…」

「協会の信者たちが南グループで一番怒らせてはいけない人を怒らせてしまったからですね。」

「ちょっと黎っ!それどういう意味よっ!!」

「プ…プハハハッ!」

「…萌美?」

「お2人はとても仲が良いですね♡」

「それはそうよ!なんてったって私達は…」

「お嬢!紅葉!伏せてください!!」

「シュバババババババババババババ!!」

 萌美の右腕が禍々しく筒状に変形した後、ピンクの弾丸が放たれる。

「南グループの接触はこれで出来たし、萌美もファン達からのエールを集め続けたことと信者たちから崇拝を受けたことで十分あなた達に太刀打ちできる。あなた達は…やっぱり、下手クソね!♡」

 萌美の裏切りにいち早く気づいた者がもう1人いた。

「バキューン!バキューン!バキューン!」

 イルックスの銃声が鳴り響いたのだ。

「ステルスアンシフト。シューティングでは負けません。マイマスター、お嬢様、黎様、ここはイルックスが引き受けます。」

 紅葉が萌美を監視するためにステルス状態のイルックスを傍にいさせたのだ。


 次回 第七十四話 言魂
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