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第十二章 唯一神編
第六十二話 神話
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神。
黎の体験したあの出来事、会話をした相手と内容は確かに神と呼ばれるのに相応しいものであったと感じた。
……………
「その昔、とある世界の在り方に憂いていた1人の男が、自分の住む世界の他に別の世界があるのではないかと、そんな事を考えても無駄だと分かっていながらも心のどこかでは可能性を抱いており、それがもし存在するのならばそこに身を投じてみたいと思う切なる願望がありました。そしてそれを少しだけ手伝ってみようと神が新たに創り出したもう1つの世界。それが『世界線Ⅱ』。その男は神によって導かれ、新しく生まれ直した神が創りし世界に対してどんな感情を抱いたのでしょうか。」
……………
「それにしても気がかりです。八代花梨がこの世界を創ったとして、この世界について全てを知っているとしたのなら、どうしてこの世界の事について勉強したりする必要があったのでしょうか?」
「それは確かに引っかかるな。あの書籍の量、この世の全てのことを把握しているのなら必要ないな。」
「セキュリティの突破も何か今思えば簡単すぎた…ような…。」
「ねぇ、皆でもう一度書斎に行ってみない?」
「そうですね。何か手がかりが見つかるかもしれません。」
そして4人は八代が使っていた書斎へと向かう。
……………
「男は新たな世界への一歩を踏み出しました。そこには元いた世界の様に多くの人が忙しなく生きている様子が見受けられ、男は落胆しました。元の世界だろうと異世界だろうと何も変わらない、と。しかし生まれ直した世界で男は不思議な出来事を体験しました。頭の中に何か呼びかけるような声がしたのです。『汝、我が力の一部を授けん。我、汝に仕えし第一の舎弟とならむ。されどこの記憶、消去すべし。』、と。」
……………
楓と黎は書斎にある本をもう一度見てみる。
楓はパソコンを操作し、お嬢はその画面を横で眺める。
「『i』…八代と何か関係があるような…。」
そう言って黎が『i』の書を手にしてパラパラ捲る。
どこのページも白紙のままである。
しかしあることに疑問を持つ。
「楓、この間俺達に見せた紙切れはこの本のページの隙間に戻しました?」
「ああ、間違いなく戻したはずだ。」
黎は何度も捲るがどこにもない。
「ねぇ紅葉ちゃん、『Bの掟』のファイル、ショートカットに保存してたわよね?」
「うん、ボクも気になって元の場所を探してるんだけど…。」
「…どこにもないの?」
……………
「男は授かった声が途絶えた途端声の内容の記憶はありませんでした。まるで眠っている間に夢を見ているときに目が覚め、寝ていた時の夢の内容が思い出せないかのように。しかし、声を聞いた後の自身の感覚に違和感がありました。この世の者のあらゆる者の存在を認識し、意思疎通することができるようになったのです。そしてそれがこの世界最大の組織を創り上げるための初めの一歩になったのでした。」
……………
次回 第六十三話 写像
黎の体験したあの出来事、会話をした相手と内容は確かに神と呼ばれるのに相応しいものであったと感じた。
……………
「その昔、とある世界の在り方に憂いていた1人の男が、自分の住む世界の他に別の世界があるのではないかと、そんな事を考えても無駄だと分かっていながらも心のどこかでは可能性を抱いており、それがもし存在するのならばそこに身を投じてみたいと思う切なる願望がありました。そしてそれを少しだけ手伝ってみようと神が新たに創り出したもう1つの世界。それが『世界線Ⅱ』。その男は神によって導かれ、新しく生まれ直した神が創りし世界に対してどんな感情を抱いたのでしょうか。」
……………
「それにしても気がかりです。八代花梨がこの世界を創ったとして、この世界について全てを知っているとしたのなら、どうしてこの世界の事について勉強したりする必要があったのでしょうか?」
「それは確かに引っかかるな。あの書籍の量、この世の全てのことを把握しているのなら必要ないな。」
「セキュリティの突破も何か今思えば簡単すぎた…ような…。」
「ねぇ、皆でもう一度書斎に行ってみない?」
「そうですね。何か手がかりが見つかるかもしれません。」
そして4人は八代が使っていた書斎へと向かう。
……………
「男は新たな世界への一歩を踏み出しました。そこには元いた世界の様に多くの人が忙しなく生きている様子が見受けられ、男は落胆しました。元の世界だろうと異世界だろうと何も変わらない、と。しかし生まれ直した世界で男は不思議な出来事を体験しました。頭の中に何か呼びかけるような声がしたのです。『汝、我が力の一部を授けん。我、汝に仕えし第一の舎弟とならむ。されどこの記憶、消去すべし。』、と。」
……………
楓と黎は書斎にある本をもう一度見てみる。
楓はパソコンを操作し、お嬢はその画面を横で眺める。
「『i』…八代と何か関係があるような…。」
そう言って黎が『i』の書を手にしてパラパラ捲る。
どこのページも白紙のままである。
しかしあることに疑問を持つ。
「楓、この間俺達に見せた紙切れはこの本のページの隙間に戻しました?」
「ああ、間違いなく戻したはずだ。」
黎は何度も捲るがどこにもない。
「ねぇ紅葉ちゃん、『Bの掟』のファイル、ショートカットに保存してたわよね?」
「うん、ボクも気になって元の場所を探してるんだけど…。」
「…どこにもないの?」
……………
「男は授かった声が途絶えた途端声の内容の記憶はありませんでした。まるで眠っている間に夢を見ているときに目が覚め、寝ていた時の夢の内容が思い出せないかのように。しかし、声を聞いた後の自身の感覚に違和感がありました。この世の者のあらゆる者の存在を認識し、意思疎通することができるようになったのです。そしてそれがこの世界最大の組織を創り上げるための初めの一歩になったのでした。」
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