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第十一章 Bの掟編
第五十八話 禁忌
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かつて八代花梨が使用していた書斎に4人が入り、長女の楓が花梨が読んでいた書物を物凄いスピードで漁って調べ物をし、三女の紅葉が花梨の組んだ難解なセキュリティコードを次々と突破してパソコンを起動させ、ロックのかかったファイルなどを開いていた。
しばらく姉妹が作業している姿をお嬢と黎は見届けていると、黎が紅葉の動作の違和感にすぐに気づく。
「お嬢、八代はこの間自分の全てのデータをUSBに保存してデスクトップ内の保存内容を消去したと言っていましたよね?」
「…!確かにそうよ!そんなこと言ってたわ!どうしてホーム画面にこれだけのアイコンがあるのかしら!?それに紅葉ちゃんが開いてるファイルとかって…。」
「八代が高柳グループとの抗争以降、データをUSBから元に戻したか、或いは…」
黎が続きを言いかけた時、楓がその続きを先読みしたかのように、
「花梨がそのときお前達に嘘をついていた。そうだろう?紅葉。」
と言う。すると紅葉は、
「うん、花梨お姉様の使っているパソコンにアクセスしたとき、南グループの情報が全部書かれてあったよ。だからボクは田本黎と遭遇したときお前の事も事前にわかってたんだ。」
と続ける。
「…花梨ちゃん…あの時嘘を…?」
お嬢は八代がUSBを摘んで皆にそれを見せながらあらゆる情報を共有していた時のことを思い出す。
「それと今回の通り魔事件、南グループの天宮が関わっていた様だがこの出来事、花梨はこの事件が起こることを分かっていた可能性が高い。」
「…!?どういう事!?」
「南香歩、いや、お嬢、南グループとは十の掟のもとに行動する団体であることに相違あるまいな?」
「ええ…その通りよ。」
「天宮はその十の掟を逆手に取られ何者かに動かされて起きた事件だと考えられる。それから…」
楓が紅葉のパソコン開いているパソコンの画面に目を向ける。
「あったか?紅葉。」
「うん、いかにもっていうのがね。」
そこに書かれていた画面のフォルダの名前にお嬢と黎は驚いた。
「『Bの掟』…?」
お嬢も黎もそんなもの知らなかった。
「『B』とは一体なんでしょうか…。」
「多分、十一番目という意味だと思うよ。プログラムでよく使われる十六進法とかの『11』に当たる数字が『B』だからね。」
「十一番目の掟…って…一体何なの…?」
「何かは分かりませんがこの状況、八代が俺たちに今まで何か隠し事をしていたという事なのでしょう。」
紅葉が『Bの掟』のファイルにカーソルを合わせる。
「まて紅葉。」
楓が紅葉を止める。
「どうしたの?」
「これを見てみろ。」
楓が3人に見せた古びた紙切れに何か書かれている。
『さらなるいにしえの掟に踏み込みし者、災い降りかからん。』
「…災い…これはパンドラの箱という事でしょうか…。因みにその紙切れはどこにあったのですか?」
「この本のページの隙間に挟まっていた。」
楓が見せた本の表紙にお嬢と黎がまさかと思った。
『i』
そのたった一文字だけが筆記体で表紙に大きく刻まれた古びた本であった。
「そんな…!花梨ちゃん…そんなこと…何も知らないって…!」
「お嬢、俺もこの書斎に何度か来たとき、こんな本ありませんでしたよ!」
お嬢と黎は動揺を隠せなかった。
「だが不思議なことにこの本、すべてのページが白紙なのだ。だが、その古びた紙切れだけが挟まっていた。」
「うーん、なんかここまで事が進むとまるで誰かにここまで全て読み通りと言わんばかりに、ボクたち誘導されてるみたいだね。」
「…誘導…まさか天宮も…」
そう黎が考えているとお嬢が黎に抱きついてきた。
「黎…怖い…。」
「お嬢、俺が絶対守ります。」
そう言って黎がお嬢を抱きしめる。
そして黎が楓と紅葉に、
「2人とも、まだ何か探せそうな情報はありそうですか?」
と問いかける。
「ああ。これだけの情報、アイツ1人で管理していたとはとても信じられない。」
「ボクもここまで苦戦したのは久しぶりだよ。なんか張り合いたくなっちゃうね。」
楓と紅葉、この2人ならばあの南グループの『裏の頭』と呼ばれた八代花梨に頭脳で匹敵するかもしれないと黎は思っていた。
花梨は全ての分野において天才的頭脳を持っていたが、楓の書籍の内容に関する情報理解の文系的強さ、紅葉の機械やプログラムに関する理系的強さ、この2人のチームワークにより引き出される力がもし南グループにあったなら…
「ねぇ…2人の部屋…ちゃんと用意してるわよ。」
「…お嬢、まさか…。」
「2人とも、南グループの舎弟に正式に入らない?」
次回 第五十九話 嫉妬
しばらく姉妹が作業している姿をお嬢と黎は見届けていると、黎が紅葉の動作の違和感にすぐに気づく。
「お嬢、八代はこの間自分の全てのデータをUSBに保存してデスクトップ内の保存内容を消去したと言っていましたよね?」
「…!確かにそうよ!そんなこと言ってたわ!どうしてホーム画面にこれだけのアイコンがあるのかしら!?それに紅葉ちゃんが開いてるファイルとかって…。」
「八代が高柳グループとの抗争以降、データをUSBから元に戻したか、或いは…」
黎が続きを言いかけた時、楓がその続きを先読みしたかのように、
「花梨がそのときお前達に嘘をついていた。そうだろう?紅葉。」
と言う。すると紅葉は、
「うん、花梨お姉様の使っているパソコンにアクセスしたとき、南グループの情報が全部書かれてあったよ。だからボクは田本黎と遭遇したときお前の事も事前にわかってたんだ。」
と続ける。
「…花梨ちゃん…あの時嘘を…?」
お嬢は八代がUSBを摘んで皆にそれを見せながらあらゆる情報を共有していた時のことを思い出す。
「それと今回の通り魔事件、南グループの天宮が関わっていた様だがこの出来事、花梨はこの事件が起こることを分かっていた可能性が高い。」
「…!?どういう事!?」
「南香歩、いや、お嬢、南グループとは十の掟のもとに行動する団体であることに相違あるまいな?」
「ええ…その通りよ。」
「天宮はその十の掟を逆手に取られ何者かに動かされて起きた事件だと考えられる。それから…」
楓が紅葉のパソコン開いているパソコンの画面に目を向ける。
「あったか?紅葉。」
「うん、いかにもっていうのがね。」
そこに書かれていた画面のフォルダの名前にお嬢と黎は驚いた。
「『Bの掟』…?」
お嬢も黎もそんなもの知らなかった。
「『B』とは一体なんでしょうか…。」
「多分、十一番目という意味だと思うよ。プログラムでよく使われる十六進法とかの『11』に当たる数字が『B』だからね。」
「十一番目の掟…って…一体何なの…?」
「何かは分かりませんがこの状況、八代が俺たちに今まで何か隠し事をしていたという事なのでしょう。」
紅葉が『Bの掟』のファイルにカーソルを合わせる。
「まて紅葉。」
楓が紅葉を止める。
「どうしたの?」
「これを見てみろ。」
楓が3人に見せた古びた紙切れに何か書かれている。
『さらなるいにしえの掟に踏み込みし者、災い降りかからん。』
「…災い…これはパンドラの箱という事でしょうか…。因みにその紙切れはどこにあったのですか?」
「この本のページの隙間に挟まっていた。」
楓が見せた本の表紙にお嬢と黎がまさかと思った。
『i』
そのたった一文字だけが筆記体で表紙に大きく刻まれた古びた本であった。
「そんな…!花梨ちゃん…そんなこと…何も知らないって…!」
「お嬢、俺もこの書斎に何度か来たとき、こんな本ありませんでしたよ!」
お嬢と黎は動揺を隠せなかった。
「だが不思議なことにこの本、すべてのページが白紙なのだ。だが、その古びた紙切れだけが挟まっていた。」
「うーん、なんかここまで事が進むとまるで誰かにここまで全て読み通りと言わんばかりに、ボクたち誘導されてるみたいだね。」
「…誘導…まさか天宮も…」
そう黎が考えているとお嬢が黎に抱きついてきた。
「黎…怖い…。」
「お嬢、俺が絶対守ります。」
そう言って黎がお嬢を抱きしめる。
そして黎が楓と紅葉に、
「2人とも、まだ何か探せそうな情報はありそうですか?」
と問いかける。
「ああ。これだけの情報、アイツ1人で管理していたとはとても信じられない。」
「ボクもここまで苦戦したのは久しぶりだよ。なんか張り合いたくなっちゃうね。」
楓と紅葉、この2人ならばあの南グループの『裏の頭』と呼ばれた八代花梨に頭脳で匹敵するかもしれないと黎は思っていた。
花梨は全ての分野において天才的頭脳を持っていたが、楓の書籍の内容に関する情報理解の文系的強さ、紅葉の機械やプログラムに関する理系的強さ、この2人のチームワークにより引き出される力がもし南グループにあったなら…
「ねぇ…2人の部屋…ちゃんと用意してるわよ。」
「…お嬢、まさか…。」
「2人とも、南グループの舎弟に正式に入らない?」
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