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第十章 人斬り編
第五十四話 才能
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「…紅葉さんは…楓さん以外の方にはずっと心を閉ざしているということですか…?」
「そうだな。ボスに対しても形式的には舎弟という立場だが心底信頼をおいてる訳では無い。オレもボスのやり方を全面肯定する訳ではないがな。」
「そんな…紅葉さんは…それで寂しくはないのですか…?」
「…寂しい…か。アイツにもそんな感情があるのだろうか…。アイツはいつも言っている。自分には友達がいるからそれでいいんだと…。」
「…友達…ですか…?」
「ああ、南香歩は会った事あるだろうが、E6(イーシックス)とE7(イーセブン)、戦いで負傷した2体をアイツは涙を流して自分はボロボロになりながら2体のコアを持ち帰り一夜漬けで修復したんだ。」
「友達って、あの機械兵士2体のことね。一夜漬けであんなに高度な機械を修復するなんて…天才ね。」
「…そんな…そんなのって…。」
そんな話をしていると、
「楓お姉様、見つけたよ。」
と紅葉が戻ってきた。
「…やはりそうか。」
「天宮の映像があったの!?」
「いや、最近の映像は見つからなかったが、高柳グループに潜入していた頃は普通に映像が映っていたと言いたいのだろう?」
「その通りだよ。」
「…それって…つまり…。」
「今は行方をくらまさなくてはいけない理由があるけれど、高柳グループに潜入していた頃はそんなことをする必要がなかったってことみたいね。」
お嬢がそんな推測をしていると、菱沼が突然立ち上がる。
「あの…紅葉さん…!」
「気安く呼ぶなよ。」
「どうやったらその…紅葉さんのお友達と…仲良くなれるんですか?」
「…は…?お前何言って…」
「私にも紹介して欲しいんです!紅葉さんの大切なお友達!私も仲良くなりたいんです!もちろん紅葉さんとも一緒に…」
「干渉するなよっ!!」
紅葉の叫び声によって病室が静まり返る。
「…ボクは…ボクには…あれしかないんだよ…。」
紅葉が怒りで震えている。
「人間なんてみんな自分勝手で、意味もなく行動して、それで何か嫌なことがあればそのバカな人間同士が傷を舐め合って…そんなつまらない集団の中に…ボクの居場所なんてあるわけないだろ!?」
菱沼がベッドに座って立ち上がり、紅葉のもとに歩み寄る。
「晶ちゃん!まだ安静にしてないと!それに…」
「なんだよ!来るなよ!」
紅葉が菱沼に叫びながら後ずさる。菱沼に戦闘力はない。それでも勇気を振り絞って菱沼は紅葉の元へ真剣な表情で歩み寄る。
「…っ!?」
菱沼が紅葉を抱きしめた。
「私のことを信じてくれとは言いません。ただ、紅葉さんのことも、紅葉さんのお友達のことも、私は知りたいです。私は皆さんと仲良くなりたいです。南グループの掟その十、みんな仲良くすること。です。掟なんてなくても私は仲良くしたいです。これは私のわがままですが、本当にそれだけです。」
紅葉は人に抱きしめられたことが初めてだった。
紅葉は人の温もりがこんなに温かいものだとは知らなかった。
本当は紅葉にもあったのかもしれない。
人の自分勝手から生まれる誰かと仲良くなりたいと思う願望。
孤独がつらいという感情。
そしてそれを打ち明けられる相手がいないという絶望。
色んな思いが人の温もりに初めて紅葉の中に一気に込み上げてくる。
「う…うわあはああああああん…」
今まで人前で決して見せることのなかった紅葉の号泣する姿。
それを温かく抱きしめる菱沼。
それを見たお嬢は、
「晶ちゃん…本当にあなたは優しいわね…。」
と呟いた。
「…南グループ…悪くないかもな…。」
楓がボソッと呟いた。
「そりゃそうよ。私の自慢の舎弟達なんだから。」
「そうですね…そんなお嬢の自慢の舎弟の1人であろう俺がこんなところでずっと寝てるわけにもいきませんね…。」
眠っていた黎が突然目を覚ました。
次回 第五十五話 終息
「そうだな。ボスに対しても形式的には舎弟という立場だが心底信頼をおいてる訳では無い。オレもボスのやり方を全面肯定する訳ではないがな。」
「そんな…紅葉さんは…それで寂しくはないのですか…?」
「…寂しい…か。アイツにもそんな感情があるのだろうか…。アイツはいつも言っている。自分には友達がいるからそれでいいんだと…。」
「…友達…ですか…?」
「ああ、南香歩は会った事あるだろうが、E6(イーシックス)とE7(イーセブン)、戦いで負傷した2体をアイツは涙を流して自分はボロボロになりながら2体のコアを持ち帰り一夜漬けで修復したんだ。」
「友達って、あの機械兵士2体のことね。一夜漬けであんなに高度な機械を修復するなんて…天才ね。」
「…そんな…そんなのって…。」
そんな話をしていると、
「楓お姉様、見つけたよ。」
と紅葉が戻ってきた。
「…やはりそうか。」
「天宮の映像があったの!?」
「いや、最近の映像は見つからなかったが、高柳グループに潜入していた頃は普通に映像が映っていたと言いたいのだろう?」
「その通りだよ。」
「…それって…つまり…。」
「今は行方をくらまさなくてはいけない理由があるけれど、高柳グループに潜入していた頃はそんなことをする必要がなかったってことみたいね。」
お嬢がそんな推測をしていると、菱沼が突然立ち上がる。
「あの…紅葉さん…!」
「気安く呼ぶなよ。」
「どうやったらその…紅葉さんのお友達と…仲良くなれるんですか?」
「…は…?お前何言って…」
「私にも紹介して欲しいんです!紅葉さんの大切なお友達!私も仲良くなりたいんです!もちろん紅葉さんとも一緒に…」
「干渉するなよっ!!」
紅葉の叫び声によって病室が静まり返る。
「…ボクは…ボクには…あれしかないんだよ…。」
紅葉が怒りで震えている。
「人間なんてみんな自分勝手で、意味もなく行動して、それで何か嫌なことがあればそのバカな人間同士が傷を舐め合って…そんなつまらない集団の中に…ボクの居場所なんてあるわけないだろ!?」
菱沼がベッドに座って立ち上がり、紅葉のもとに歩み寄る。
「晶ちゃん!まだ安静にしてないと!それに…」
「なんだよ!来るなよ!」
紅葉が菱沼に叫びながら後ずさる。菱沼に戦闘力はない。それでも勇気を振り絞って菱沼は紅葉の元へ真剣な表情で歩み寄る。
「…っ!?」
菱沼が紅葉を抱きしめた。
「私のことを信じてくれとは言いません。ただ、紅葉さんのことも、紅葉さんのお友達のことも、私は知りたいです。私は皆さんと仲良くなりたいです。南グループの掟その十、みんな仲良くすること。です。掟なんてなくても私は仲良くしたいです。これは私のわがままですが、本当にそれだけです。」
紅葉は人に抱きしめられたことが初めてだった。
紅葉は人の温もりがこんなに温かいものだとは知らなかった。
本当は紅葉にもあったのかもしれない。
人の自分勝手から生まれる誰かと仲良くなりたいと思う願望。
孤独がつらいという感情。
そしてそれを打ち明けられる相手がいないという絶望。
色んな思いが人の温もりに初めて紅葉の中に一気に込み上げてくる。
「う…うわあはああああああん…」
今まで人前で決して見せることのなかった紅葉の号泣する姿。
それを温かく抱きしめる菱沼。
それを見たお嬢は、
「晶ちゃん…本当にあなたは優しいわね…。」
と呟いた。
「…南グループ…悪くないかもな…。」
楓がボソッと呟いた。
「そりゃそうよ。私の自慢の舎弟達なんだから。」
「そうですね…そんなお嬢の自慢の舎弟の1人であろう俺がこんなところでずっと寝てるわけにもいきませんね…。」
眠っていた黎が突然目を覚ました。
次回 第五十五話 終息
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