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第十章 人斬り編
第五十二話 辻斬
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お嬢がひとまず黎を病室のベッドで寝かせる。
「黎…。」
お嬢が黎の寝ている横に座り顔を撫でながら黎を呼びかけるように呟く。
「…お嬢様…少々お伺いしたいことがあるのですが?」
「どうしたの?晶ちゃん。」
「黎様…いや…あの…八代さんの惚れ薬で手懐けられてしまった黎様の被害に遭った方々は、どうなってしまったのですか?市香と桃香はアンデッドなので蘇りますが…。」
「…全員亡くなったわ…。」
「………私だけ…助かってしまったんですね…。」
「全員病院に送られる前に致命傷を受けて即死だったことがわかったみたいよ。晶ちゃん、あなたが同じようにならなかった事を責めてはいけないの。亡くなった舎弟達が報われないわよ。私はあなたが生きてたことが凄く嬉しいのよ。」
菱沼は涙を流した。
「…お嬢様………はい…。」
「ピロンッ!」
突然菱沼の通信端末にメッセージが入る音がした。
送り主は二階堂だった。
そして内容を見て菱沼の顔が青ざめた。
「…お嬢…様…。」
「どうしたの!?晶ちゃん!?」
お嬢が黎のベッドを一度離れ、菱沼の元へ駆け寄る。
菱沼が二階堂から送られたメッセージ画面をお嬢に見せた。
そこには、
『晶、体調の方はいかがですか。市香と桃香も時間はかかりそうですが回復は順調に進んでいます。ところで、最近南グループ、高柳グループのメンバー、一般人の方を問わず無差別に何者かに突然外で斬りつけられる事件が起きているようです。もしかしたら晶を斬りつけた者とも関係しているのかと思い連絡させていただきました。お体の無理はせずゆっくり休んでください。』
と書かれていた。
「無差別に斬られる…通り魔ってことかしら…。」
「………天宮さん…。」
「まだそうと決まった訳ではないわ。天宮はわざわざお屋敷に出向いてあなたを斬ったのよね。無差別に人が斬りつけられるのは辻斬のように道端でたまたまその者に出くわしたものが斬られることだから、あなたを斬った天宮とはちょっと性質が違うような気がするわ。」
「…確かに変ですね…。ですが、天宮さんって、いつも何考えてるかわからないところがあるといいますか…。」
「それについては同感ね…。」
……………
「ヒュオオオオオオオ…」
「チャキインッ!」
「ザシュッ!」
「…斬り捨て御免…。」
……………
「それにしても、天宮はあなたの致命傷を避けた訳よね。もし仮に通り魔の犯人が天宮だとしたら、本当に辻斬で相手を殺すつもりなのか、目的が何なのかは気になるところよね。」
「もし通り魔が致命傷を避けてるのであれば、これから南病院に私のような外傷を負って入院される患者様が運ばれてこられるのではないでしょうか?」
「確かにそうね…。外へ出て調べようにも、私はこの場を離れる訳にはいかないわね。晶ちゃんがこれから狙われないという保障もないし…」
「何より黎様、ですよね。私もお嬢様がお側にいらっしゃるべきだと思います。」
お嬢が黎の方に視線をやると黎は眠っていた。
お嬢が再び黎の方へ向かってゆき、黎のベッドに座った。
「もう…いつまで寝てるのよ…。」
そうお嬢が呟いていると、突然病室の扉が開く音がした。
そして病室の入口にお嬢と菱沼が目をやると、2人は驚いた。
「やっぱりここにいたんだ。南グループのお嬢様。」
「オレ達はお前に用があって来た。南香歩。」
次回 第五十三話 駆引き
「黎…。」
お嬢が黎の寝ている横に座り顔を撫でながら黎を呼びかけるように呟く。
「…お嬢様…少々お伺いしたいことがあるのですが?」
「どうしたの?晶ちゃん。」
「黎様…いや…あの…八代さんの惚れ薬で手懐けられてしまった黎様の被害に遭った方々は、どうなってしまったのですか?市香と桃香はアンデッドなので蘇りますが…。」
「…全員亡くなったわ…。」
「………私だけ…助かってしまったんですね…。」
「全員病院に送られる前に致命傷を受けて即死だったことがわかったみたいよ。晶ちゃん、あなたが同じようにならなかった事を責めてはいけないの。亡くなった舎弟達が報われないわよ。私はあなたが生きてたことが凄く嬉しいのよ。」
菱沼は涙を流した。
「…お嬢様………はい…。」
「ピロンッ!」
突然菱沼の通信端末にメッセージが入る音がした。
送り主は二階堂だった。
そして内容を見て菱沼の顔が青ざめた。
「…お嬢…様…。」
「どうしたの!?晶ちゃん!?」
お嬢が黎のベッドを一度離れ、菱沼の元へ駆け寄る。
菱沼が二階堂から送られたメッセージ画面をお嬢に見せた。
そこには、
『晶、体調の方はいかがですか。市香と桃香も時間はかかりそうですが回復は順調に進んでいます。ところで、最近南グループ、高柳グループのメンバー、一般人の方を問わず無差別に何者かに突然外で斬りつけられる事件が起きているようです。もしかしたら晶を斬りつけた者とも関係しているのかと思い連絡させていただきました。お体の無理はせずゆっくり休んでください。』
と書かれていた。
「無差別に斬られる…通り魔ってことかしら…。」
「………天宮さん…。」
「まだそうと決まった訳ではないわ。天宮はわざわざお屋敷に出向いてあなたを斬ったのよね。無差別に人が斬りつけられるのは辻斬のように道端でたまたまその者に出くわしたものが斬られることだから、あなたを斬った天宮とはちょっと性質が違うような気がするわ。」
「…確かに変ですね…。ですが、天宮さんって、いつも何考えてるかわからないところがあるといいますか…。」
「それについては同感ね…。」
……………
「ヒュオオオオオオオ…」
「チャキインッ!」
「ザシュッ!」
「…斬り捨て御免…。」
……………
「それにしても、天宮はあなたの致命傷を避けた訳よね。もし仮に通り魔の犯人が天宮だとしたら、本当に辻斬で相手を殺すつもりなのか、目的が何なのかは気になるところよね。」
「もし通り魔が致命傷を避けてるのであれば、これから南病院に私のような外傷を負って入院される患者様が運ばれてこられるのではないでしょうか?」
「確かにそうね…。外へ出て調べようにも、私はこの場を離れる訳にはいかないわね。晶ちゃんがこれから狙われないという保障もないし…」
「何より黎様、ですよね。私もお嬢様がお側にいらっしゃるべきだと思います。」
お嬢が黎の方に視線をやると黎は眠っていた。
お嬢が再び黎の方へ向かってゆき、黎のベッドに座った。
「もう…いつまで寝てるのよ…。」
そうお嬢が呟いていると、突然病室の扉が開く音がした。
そして病室の入口にお嬢と菱沼が目をやると、2人は驚いた。
「やっぱりここにいたんだ。南グループのお嬢様。」
「オレ達はお前に用があって来た。南香歩。」
次回 第五十三話 駆引き
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