【R18】世界線Ⅱ〜恋するお嬢とその舎弟達〜

第七章 鉄葉編

第三十九話 機兵

　お嬢と黎が逃げた先は平原。

「お嬢…やはりこうなってしまった以上、高柳グループとの武力衝突は避けられないのではないでしょうか…。」

「………。」

「………。」

　黎にはわかる。

　お嬢はなんとしてでも平和的な解決を実現したいことを。

　和解できるのならそれが一番であることを。

「田本黎の言う通り、高柳グループを止めるにはもう武力で解決する以外に方法はないよ。」

　突然女の声がして振り向くとそこには紅葉と、その両脇にE6(イーシックス)とE7(イーセブン)、そしてその後ろに機械兵士の軍勢がいた。

「あなた…！ねぇあなた…どうしてあの男のもと
　につくのよ…？あんなところにいたらあなただっていつかは…」

「それを知りたければまずはボクたちの軍勢を壊滅させ、ボクを倒すことだね。ボクたちは実力主義だからさ。南グループのお嬢様、そしてS級舎弟の田本黎、君たちの本気をボクはまだ見ていない。そろそろ見せてもらってもいいんじゃないのかな？」

「…私は…そんなこと…」

「お嬢、相手は八代紅葉以外人間ではありません。人の命であれば多少の躊躇いはあるかもしれませんが、この状況を打破することも踏まえてそろそろ…。」

「………黎が…そこまで言うなら…わかったわ。」

「E6(イーシックス)…ターゲット…ロックオン…キル…アブソリュートリー…。」

「E7(イーセブン)…目標確認…最終決戦…始末…絶対遵守…。」

　そう言うとE6(イーシックス)とE7(イーセブン)を筆頭に機械兵士の軍勢が銃を構える者や、ドリルを装着したものがお嬢と黎の元へ接近してくる。

「お嬢、行きますよ。」

　黎がお嬢をお姫様抱っこして宙に跳ぶ。

「ドバババババババババ！！！！」

　E6(イーシックス)を含む機械兵士達がお嬢を担いだ黎に狙いを定めて狙撃する。

「アイツの手を借りるしかありませんね！」

　一方その頃…

「…！またしても俺様の優れた勘によれば俺様の愛しの妻が危機的な状況に陥っているようだ！こうしてはいられん！」

　リソスは腕枕をしている江戸村をそっと寝かせたまま部屋を後にし、竜化してお嬢達の元へ向かう。

　そして…

「ギャアアアアアアアオオオオン！！」

　お嬢と黎は遠くから轟くような声が響き渡る様な声が聞こえる。

「丁度いいタイミングですね。」

「ドバババババババババ！」

　黎は銃撃をかわしながらその声の方へ向かう。

　そして竜の様なものが近づいてくるのがわかる。

「おい黎テメェゴルァ！また俺様の妻とイチャイチャしやがって！いい度胸じゃねーか！俺様と勝負…」

「…ですが…こいつ誰でしたっけ…。」

「…さぁ、誰だったかしら。」

「ヒュウウウウウウウ…ズザアアアアアア…」

　竜の様な姿をした何かが急下降して地面に落ち、人間の姿をした。そしてその男は立ち上がって、

「リソスだコラァ！テメェらわざとやってやがるだろ！」

　と黎達に言ったその時だった、

「ドバババババババババ！！」

　リソスと名乗った男が弾丸の嵐を浴びた。

「あなた！？大丈…」

「あ？なんだコイツら？俺様と喧嘩してーのか？上等じゃねーか！こっちは腐れ縁の女と一方的なデートと称した訳のわからねー付き合いに時間を使いすぎて腕が鈍って丁度暴れてぇとこだったっんだ。まとめてかかって来やがれゴルァ！！」

　弾丸の嵐を浴びたリソスは無傷だった。

　リソスは腕を鳴らしながら軍団に近づき軍団の1体に殴りかかる。

「ドカッ！」

　軍団の1体は一撃で機能停止に陥った。

「オルァ！！」

「ドカッ！」「ドカッ！」

　1体、また1体と次々と殴って一撃で仕留めてゆく。

「キュイイイイイイン！」

　近接型の機械兵士がドリルをリソスの腹部に直撃させるが、

「ガシャンッ！」

　ドリルが壊れてしまい、

「あ？今なんかしたか？オルァ！！」

「ドカッ！」

　と近接型の機械兵士を呆気なく一撃で倒される。

「ふうん。こいつもS級舎弟か。なかなかやるじゃん。それにしても、お嬢様と田本黎にはタイミングをみられて逃げられてしまったみたいだね。」

　紅葉の言う通り既にその場にお嬢と黎の姿はなかった。

　次回　第四十話　圧倒