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第七章 鉄葉編

第三十七話 逃亡

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 お嬢の手が震えているのを黎は感じていた。

「八代、E6(イーシックス)とE7(イーセブン)についてなにか知っていることを教えて頂けませんか?」

「はい。E6(イーシックス)は…」

 八代が説明しかけたその時だった。

「皆さん伏せてください!!」

「バキューン!バキューン!バキューン!」

 黎の掛け声の後に屋敷に銃声が鳴り響く。

 皆がテーブルの下に身を隠す

「この銃声はあの時の!」

 お嬢が倉庫で受けた襲撃を思い出す。

 そしてお嬢がトランシーバーを取り出そうとすると、

「いけません!お嬢様!機械類は全てハッキングされてしまいます!彼女たちに情報が漏れてしまいます!」

 と八代が叫ぶ。

「こ、これじゃあ戦闘員の舎弟も呼べないじゃない…!」

「皆さん、ここにいるのは危険なのでひとまず屋敷を出ましょう!」

「私、怖いです…!」

 菱沼が怯えている。

「大丈夫よ晶ちゃん、私たちがいるわ。」

 お嬢が菱沼をなだめる。

「お嬢、お2人を裏口まで誘導して頂けますか。銃撃は俺がひきつけます。」

「…わかったわ黎、ちゃんとすぐ合流するわよ。」

「はい。任せてください。」

 そう言って黎はテーブルの下から抜け出して表の玄関から勢いよく飛び出す。

「キュイイイイイイン!!!」

 黎が飛び出した途端回転したドリルが黎の体を貫こうとするが黎はそれをギリギリでかわす。

「E7(イーセブン)…目標確認…対象破壊…決行…。」

「E6(イーシックス)…ターゲット…ロックオン…エネミー…キル…。」

「2体同時…ですか…。」

 黎がナイフを取り出し右手に持つ。

 E7(イーセブン)と言っている方は右腕にドリルが装着されており、緑色の髪と瞳をしている。

 E6(イーシックス)と言っている方は左腕に銃が装着されており橙色の長い髪と瞳をしている。

 どちらも普通の人間とほとんど区別がつかない程の完成度だがれっきとした機械のようで、黎は感情を読み取ることができない。

「キュイイイイイイン!!!」

「バキューン!バキューン!」

 黎はE7(イーセブン)のドリルをかわしながらE6(イーシックス)の銃撃に気を配ることで精一杯であった。

 ナイフを目の前のE7(イーセブン)に振りかざすが、避けられてしまう。

「なかなか厳しい戦いになりそうです。」

 一方その頃お嬢は菱沼と八代を屋敷の裏口まで誘導し、屋敷を後にする。

「黎、絶対無事でいてよね…。」

「お嬢様!行き先はどうしましょう!?」

「あなたたちをひとまず安全な場所へ連れて行くわ。」

「お嬢様はどうされるのですか!?」

「………。」

 菱沼の問いかけにお嬢は黙っていた。

「お嬢様、それはなりません。」

 八代はお嬢のやろうとしていることがわかっているように言う。

「…彼らの狙いは私よ。舎弟の命の保障はされないなんて言われて黙ってるわけにはいかないの。」

「…ですが…。」

 3人はそのままある場所へと向かう。

 そこは竜の山だった。そこには千佳が建てた屍の塔2号が建っている。

 そして頂上までのぼる。

 すると、

「あー!お嬢ー!久しぶりー!今日は旦那さんと一緒じゃないの?」

「あ~♡お嬢様と晶ちゃんと~♡あとあの地味な子~?お嬢様のかれぴっぴはどうしたの~?♡」

「コラッ!あなた達!今はそれどころじゃないのよ!今私達命を狙われているの!だからこの2人の身の安全を守って欲しいのよ!」

「なんか知らないけど~お嬢様の久しぶりのお願いなら断れなくな~い?私達最近暇してたし~?晶ちゃんも久しぶり~。」

「桃香!市香!久しぶりだねっ!」

 菱沼は桃香と市香との久々の再会に嬉しそうだった。

「でもこの地味な子は~、何で桃香達が守らなくちゃいけないの~?♡」

「シュンッ!」

 桃香が八代の喉元にナイフを突きつける。

 お嬢が止めにかかろうとしたとき、

「だめだよ!桃香!八代さん私達がいじめてた頃も私達がいじめているってわかっていながら桃香を含めて私達南グループのことを一生懸命考えて行動してくれてたのよ!」

 と菱沼が桃香を止めようとする。

 すると桃香が八代にナイフを突きつけたまま菱沼に振り返り、

「なになに~?♡晶ちゃんこの地味子と仲良くなっちゃったの~?♡」

 と言う。

 そして暫く菱沼と桃香は見合う。

 やがて桃香はナイフを下ろす。

「まあ晶ちゃんがそこまで言うなら仕方ないね~♡地味子ちゃんも私達が守ってあげる~♡」

「…みなさま、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」

 八代が深々と頭を下げる。

「みなさんちゃんと仲良くするんですよ~。」

 お嬢は二階堂がいれば大丈夫だろうと信じていた。

 そしてお嬢は屍の塔2号を後にするのであった…。

 一方その頃…

「カキィンッ!」

 E7(イーセブン)に黎のナイフが次第に当たるようになっていた。しかし、

「俺のナイフではこの硬度には弾かれてしまいますね…。このままでは埒があきません。ダークネスブラスターもあまり効いてる様子はありませんし…。」

「E6(イーシックス)…ウィズE7(イーセブン)…エスケープ…。」

「E7(イーセブン)…退場…。」

 黎がそうこう考えていると、E6とE7が突然撤退し始めた。

「…?一体どういうことでしょうか…。」

 そう黎が呟いた瞬間だった。

「シュン…バババババババババババババン!!」

 黎は一瞬の光線の気配を察知して回避し、光線の軌跡に目をやるとそこには連続的な爆発が起きていた。

「ボクの最高傑作を2体同時に相手にここまでやれるとはさすが南グループのS級舎弟だね。」

 そして光線と爆発を避けたあと、声のする方へ黎が目を向けると、そこに現れたのは橙色の瞳とツインドリルの髪型をした女、あの時倉庫で出会った八代紅葉であった。


 次回 第三十八話 交渉
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