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第五章 血縁編
第二十七話 撹乱
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「もう一回!作るんだゾ!」
千佳がムキきなっていた。
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…」
地響きがさらに重なる。
すると遠くから、
「お前か、こんなめんどくせーガラクタ作って遊んでんのは。」
と男の声が聞こえて猛スピードでこちらに向かってくる。
「お、お前は…」
千佳がそう言いかけたときだった。
「バコーーーンッッッ!!」
千佳が殴られ物凄い勢いで吹っ飛んでいった。
千佳の詠唱が止まってしまって城郭は築けなかった。
「千佳ちゃんっ!!」
お嬢が叫んでから千佳を殴った男を睨みつけるもお嬢は驚いた。
「あ、あなたは…」
お嬢がそう言った相手の男は白髪だった。
「海…」
「バシッ!」
お嬢が白髪の男に口元を掴まれた。
「んんん………!」
「それ以上言ったら、お前、沈めるよ?」
「ザシュッッッ!」
お嬢の口元を掴んだその腕が突然切られて出血し、思わず男はお嬢を手から離した。
「いってー…」
男は切られた右腕を左手で掴み、黎を睨みつけ、
「お前…沈める…!」
と言って黎に殴りかかる。
黎はかわす。
もう一度男が殴りかかる。
黎はかわす。
「お前、海斗の双子の弟なんですね。陸斗というのですか。」
その言葉に陸斗と呼ばれた男は怒りを覚えたのか目つきが変わる。
「アイツは海の底に沈んでるんだ。一緒にすんじゃねーよ!」
陸斗が殴りかかるも黎には決して当たらない。
黎には陸斗の考えてることが全て読めている。
「大人しく引いていただけませんか?これ以上抵抗するようでしたら…」
「ザシュッッッ!」
陸斗の左腕が切り裂かれ出血する。
「俺もお嬢との約束破りたくないんですよ。」
陸斗がお嬢に目を向け、
「お前…この女大事なのか。」
黎には分かる。この男がお嬢を人質にとろうとすることを。
「ザシュッッッッッッ!!!」
陸斗は黎にお嬢との間に先に入られ、顔を切られた。
「いってーーー………。」
陸斗が顔を下に向け手で傷を抑えるが血が地面にポタポタ垂れる。
「俺のお嬢に手を出さないで頂けますか?それとも…」
黎が不気味な笑みを浮かべる。
「大嫌いなお兄さんと区別がつかなくなるぐらい顔を切り裂かれたいのですか?」
黎がナイフを振り回して右腕を振り上げた瞬間後ろからお嬢が左手で抑える。
お嬢は分かっていた。
黎がやろうとしていることを。
黎と記憶を共有しているから。
「黎…やりすぎはダメよ。」
すると陸斗が顔の血を抑えながら、
「お前が南グループS級舎弟の黎…次は絶対に沈める…。」
と言って立ち去っていった。
「…お嬢…すみません。」
「全く!私が側にいないと危なっかしいんだから!それよりも千佳ちゃんの手当しないといけないわ!」
お嬢が千佳のもとへ駆け寄った。
「千佳ちゃん!しっかりして!」
お嬢が抱きかかえる。
千佳は気を失っていた。
そして黎は気がかりなことが一つあった。
八代の姿がなかったのだ。
その情報はお嬢にも共有された。
お嬢は千佳を彼女に与えていたベッドに寝かせて、黎と八代の行方を考えた。
そしてしばらくすると、
「申し訳ございません、ただいま戻りました。」
と八代が戻ってきた。
するとお嬢が、
「花梨ちゃん!どこ行ってたの!?心配したのよ!」
と駆け寄った。
「すみません、外部侵入に対する防衛プログラム強化のため、城郭を跳び越えても警報が作動するようにしてまわっておりました。」
「流石仕事が早いのね!それじゃあ私も直接見て確かめたいから案内してくれるかしら?」
「はい、かしこまりました。」
そして城郭に向かっている最中、突然お嬢が八代の服のエプロンのリボンを外し、背中のジッパーを下ろした。
「あなた、土屋ね。花梨ちゃんを何処にやったの?」
「な、何をおっしゃるのですか。私は…」
「花梨ちゃんは自分のことを私なんて言わないわ。彼女の一人称は『ワタクシ』よ。二度も同じ失敗で墓穴を掘るなんてバカね。それに花梨ちゃんの背中はあざだらけのはずなのにあなたは…」
「全く、勘の鋭いお嬢様ですね。クックックックック…。」
「それにしてもあなた生きていたなんて随分としぶといのね。」
お嬢が両腕を組んで言った。
「お褒めにお預かり光栄です。それと例の竜巻の襲撃、風にまつわる能力でしたら心当たりがあるのではございませんか?」
「…ッ!」
「まあこちらとしましては少々潜入させて頂いて色々調べさせて頂きたかったのですがそれも叶いませんことですし…」
「あら、こっちは二度は同じ手にはかからないわよ。」
「シュッ!」
突然お嬢の姿が土屋の前から消え、
「ドカーーーーーーーーーンッッッッ!!!」
その場では大爆発が起こり土屋の姿が消えた。
「全く、俺が側にいないと危なっかしいんですから。」
お嬢は黎に抱きかかえられて屋敷に戻った。
「あなたに言われたくないわよ!それにしても、やっとしてくれたわね…お姫様だっこ…。」
「…?最後の方がよく聞き取れませんでした。」
「なんでもないわよ!あなたは女心をちゃんと勉強することね!」
「いえ、俺にはお嬢がいるのでそんなもの必要ありませんよ。」
お嬢の顔が赤くなった。
「もう!わかったから!助けてくれてありがとね!」
……………
「こいつが隠し玉ってやつかぁ?思っていたよりも随分いたいけなお嬢ちゃんじゃねぇか?なぁ?天宮ぁ?」
「………。」
「…天宮様…。」
「それにしても随分と派手にやられたなぁ?陸斗ぉ?どこのどいつの仕業だぁ?」
「アイツ…うぜぇ…ムカつく…絶対に沈める…黎…。」
八代には分かっていた。陸斗が黎にやられて戻ってきた事を。
「ただいま戻りました。あの南香歩とかいうお嬢様、中々勘が鋭いですね…。」
「キッキッキッキッキ…。そりゃあそうさ。なんてったってあの方は…」
「今はその時ではない…。影山よ…。」
「おぉ!珍しぃじゃねぇか天宮ぁ!おめぇが口出しするなんてよぉ!キッキッキッキッキ!まぁ南グループのことは全部このお嬢ちゃんに聞いてみりゃあいいだけだなぁ?」
「………ッ!」
……………
「それにしても八代が攫われるとは不覚でした。あの陸斗とかいう男は戦闘に夢中で、考えている内容も相手を倒すという意志しか感じられなかったので、裏で動いているものがいた事までは考慮していませんでした。」
「そうね…花梨ちゃんは南グループの情報を多く握ってる事を土屋が事前に知っていたから初めから土屋が仕組んでいた事なのよね…早く助けに行かないと…!でも…何処にいるかまでは…」
お嬢は慌てていた。
「とりあえず、舎弟総出で捜索して頂くようにしましょうか。」
「そうね…。」
お嬢がトランシーバーを取り出して舎弟達に事の次第を告げようとした時だった。
「あの!」
菱沼が声を上げて部屋から出てきた。
「八代さんが攫われたんですよね!彼女、自分が誘拐されることも想定してGPSをつけています!ですから、それで彼女の居場所が分かると思います!」
次回 第二十八話 再開
千佳がムキきなっていた。
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…」
地響きがさらに重なる。
すると遠くから、
「お前か、こんなめんどくせーガラクタ作って遊んでんのは。」
と男の声が聞こえて猛スピードでこちらに向かってくる。
「お、お前は…」
千佳がそう言いかけたときだった。
「バコーーーンッッッ!!」
千佳が殴られ物凄い勢いで吹っ飛んでいった。
千佳の詠唱が止まってしまって城郭は築けなかった。
「千佳ちゃんっ!!」
お嬢が叫んでから千佳を殴った男を睨みつけるもお嬢は驚いた。
「あ、あなたは…」
お嬢がそう言った相手の男は白髪だった。
「海…」
「バシッ!」
お嬢が白髪の男に口元を掴まれた。
「んんん………!」
「それ以上言ったら、お前、沈めるよ?」
「ザシュッッッ!」
お嬢の口元を掴んだその腕が突然切られて出血し、思わず男はお嬢を手から離した。
「いってー…」
男は切られた右腕を左手で掴み、黎を睨みつけ、
「お前…沈める…!」
と言って黎に殴りかかる。
黎はかわす。
もう一度男が殴りかかる。
黎はかわす。
「お前、海斗の双子の弟なんですね。陸斗というのですか。」
その言葉に陸斗と呼ばれた男は怒りを覚えたのか目つきが変わる。
「アイツは海の底に沈んでるんだ。一緒にすんじゃねーよ!」
陸斗が殴りかかるも黎には決して当たらない。
黎には陸斗の考えてることが全て読めている。
「大人しく引いていただけませんか?これ以上抵抗するようでしたら…」
「ザシュッッッ!」
陸斗の左腕が切り裂かれ出血する。
「俺もお嬢との約束破りたくないんですよ。」
陸斗がお嬢に目を向け、
「お前…この女大事なのか。」
黎には分かる。この男がお嬢を人質にとろうとすることを。
「ザシュッッッッッッ!!!」
陸斗は黎にお嬢との間に先に入られ、顔を切られた。
「いってーーー………。」
陸斗が顔を下に向け手で傷を抑えるが血が地面にポタポタ垂れる。
「俺のお嬢に手を出さないで頂けますか?それとも…」
黎が不気味な笑みを浮かべる。
「大嫌いなお兄さんと区別がつかなくなるぐらい顔を切り裂かれたいのですか?」
黎がナイフを振り回して右腕を振り上げた瞬間後ろからお嬢が左手で抑える。
お嬢は分かっていた。
黎がやろうとしていることを。
黎と記憶を共有しているから。
「黎…やりすぎはダメよ。」
すると陸斗が顔の血を抑えながら、
「お前が南グループS級舎弟の黎…次は絶対に沈める…。」
と言って立ち去っていった。
「…お嬢…すみません。」
「全く!私が側にいないと危なっかしいんだから!それよりも千佳ちゃんの手当しないといけないわ!」
お嬢が千佳のもとへ駆け寄った。
「千佳ちゃん!しっかりして!」
お嬢が抱きかかえる。
千佳は気を失っていた。
そして黎は気がかりなことが一つあった。
八代の姿がなかったのだ。
その情報はお嬢にも共有された。
お嬢は千佳を彼女に与えていたベッドに寝かせて、黎と八代の行方を考えた。
そしてしばらくすると、
「申し訳ございません、ただいま戻りました。」
と八代が戻ってきた。
するとお嬢が、
「花梨ちゃん!どこ行ってたの!?心配したのよ!」
と駆け寄った。
「すみません、外部侵入に対する防衛プログラム強化のため、城郭を跳び越えても警報が作動するようにしてまわっておりました。」
「流石仕事が早いのね!それじゃあ私も直接見て確かめたいから案内してくれるかしら?」
「はい、かしこまりました。」
そして城郭に向かっている最中、突然お嬢が八代の服のエプロンのリボンを外し、背中のジッパーを下ろした。
「あなた、土屋ね。花梨ちゃんを何処にやったの?」
「な、何をおっしゃるのですか。私は…」
「花梨ちゃんは自分のことを私なんて言わないわ。彼女の一人称は『ワタクシ』よ。二度も同じ失敗で墓穴を掘るなんてバカね。それに花梨ちゃんの背中はあざだらけのはずなのにあなたは…」
「全く、勘の鋭いお嬢様ですね。クックックックック…。」
「それにしてもあなた生きていたなんて随分としぶといのね。」
お嬢が両腕を組んで言った。
「お褒めにお預かり光栄です。それと例の竜巻の襲撃、風にまつわる能力でしたら心当たりがあるのではございませんか?」
「…ッ!」
「まあこちらとしましては少々潜入させて頂いて色々調べさせて頂きたかったのですがそれも叶いませんことですし…」
「あら、こっちは二度は同じ手にはかからないわよ。」
「シュッ!」
突然お嬢の姿が土屋の前から消え、
「ドカーーーーーーーーーンッッッッ!!!」
その場では大爆発が起こり土屋の姿が消えた。
「全く、俺が側にいないと危なっかしいんですから。」
お嬢は黎に抱きかかえられて屋敷に戻った。
「あなたに言われたくないわよ!それにしても、やっとしてくれたわね…お姫様だっこ…。」
「…?最後の方がよく聞き取れませんでした。」
「なんでもないわよ!あなたは女心をちゃんと勉強することね!」
「いえ、俺にはお嬢がいるのでそんなもの必要ありませんよ。」
お嬢の顔が赤くなった。
「もう!わかったから!助けてくれてありがとね!」
……………
「こいつが隠し玉ってやつかぁ?思っていたよりも随分いたいけなお嬢ちゃんじゃねぇか?なぁ?天宮ぁ?」
「………。」
「…天宮様…。」
「それにしても随分と派手にやられたなぁ?陸斗ぉ?どこのどいつの仕業だぁ?」
「アイツ…うぜぇ…ムカつく…絶対に沈める…黎…。」
八代には分かっていた。陸斗が黎にやられて戻ってきた事を。
「ただいま戻りました。あの南香歩とかいうお嬢様、中々勘が鋭いですね…。」
「キッキッキッキッキ…。そりゃあそうさ。なんてったってあの方は…」
「今はその時ではない…。影山よ…。」
「おぉ!珍しぃじゃねぇか天宮ぁ!おめぇが口出しするなんてよぉ!キッキッキッキッキ!まぁ南グループのことは全部このお嬢ちゃんに聞いてみりゃあいいだけだなぁ?」
「………ッ!」
……………
「それにしても八代が攫われるとは不覚でした。あの陸斗とかいう男は戦闘に夢中で、考えている内容も相手を倒すという意志しか感じられなかったので、裏で動いているものがいた事までは考慮していませんでした。」
「そうね…花梨ちゃんは南グループの情報を多く握ってる事を土屋が事前に知っていたから初めから土屋が仕組んでいた事なのよね…早く助けに行かないと…!でも…何処にいるかまでは…」
お嬢は慌てていた。
「とりあえず、舎弟総出で捜索して頂くようにしましょうか。」
「そうね…。」
お嬢がトランシーバーを取り出して舎弟達に事の次第を告げようとした時だった。
「あの!」
菱沼が声を上げて部屋から出てきた。
「八代さんが攫われたんですよね!彼女、自分が誘拐されることも想定してGPSをつけています!ですから、それで彼女の居場所が分かると思います!」
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