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第四章 別世界編
第二十五話 衝突
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「待ちなさい咲ッ!」
「問答無用ッ!」
「チャキィンッ!」
咲が居合をお嬢に放った途端金属が砕ける音がした。
「俺のお嬢に、何か用ですか?」
「黎!?大丈夫!?」
黎の右腕が出血していた。
「ええ、勿論です。お嬢の側を離れないって約束しましたからね。」
黎の右肩の力が抜けていた。
「フンッ。とんだ邪魔が入りましたわね。まあいっそのこと南香歩はその田本黎と一生を共にしていただければ私にとっても都合がいいんですの。」
すると倒れているリソスの右指がピクッと動き、
「黎!テメェ俺様と勝負しやがれ!」
と起き上がった。
「お前は誰ですか?」
「ズザアアアア………」
リソスがずっこけた。
そして起き上がり、
「リソスだゴルァ!二度と忘れるな!」
「そうですかリソス、ですが今はお前と争ってる場合ではないのです。」
「俺様から逃げようってのか?」
リソスが腕を鳴らす。
「俺はお前達がどうしてS級舎弟なのか聞きたいのですが教えていただけませんか?」
「私達を侮辱してるんですの?」
江戸村が黎に険しい表情を向ける。
「いえ、言葉足らずですみません。お前達は南源蔵様からS級舎弟の推薦を頂いたんですよね?その理由についてお聞きしたかったのです。」
「そんなの俺様がこの世界で最強だからに決まってんだろ!」
「私は海を統べる者として、海中を支配してほしいと頼まれましたが、正直あまり気乗りはしませんでしたわ。仕事はほとんど海斗に任せていましたの。」
陸と海の支配、そして南源蔵が黎に言っていたあの言葉…。
「やはり…そうでしたか…。」
「どういうことですの?」
江戸村は首を傾げる。
「お嬢、S級舎弟に昇格するための条件は、現在の南グループにはないですよね?」
「…ええ、S級舎弟はそもそもお父様の独断で南グループ内の推薦によって現在にまで存続している階級だもの。」
そして黎にはもう一つ引っかかることがあった。
「S級舎弟は四天王と呼ばれるからには4人いる可能性がありますが、お嬢は俺達3人以外を把握していらっしゃいますか?」
「………」
お嬢の様子がおかしい。
S級舎弟の3人は各々に自分達を上回る何かが存在するのではないかと一瞬頭をかすめる。
「おい、俺様よりもつえーやつがいるってのか!?そいつはどんなやつだ!?ぶっ飛ばしてやるぞ!」
「私もリソス様がこの世界で一番だと思っておりますのよ。まさかそんな方がおられるとは思いませんわ。」
「テメェに言われると何故だか寒気がするぜ…。」
お嬢がしばらく黙っていると遂に口を開く。
「…わからないの…。」
「…え…。」
「私も花梨ちゃんとそのことについて話合ったことがあるんだけどね。花梨ちゃんの南グループの過去の資料にも何処にもないみたいだし、そもそも3人しかいないのか、認識されていないだけで残りの1人がいるのか、私達にもわからないの…。」
お嬢がそう言うと、しばらくの静寂の中、風の吹く音だけがした。
そしてお嬢はしばらくの沈黙のあと話を続けた。
「そして花梨ちゃんが言ってたの。もし仮に残りの1人が存在するとして、その者の名前を想像上の人物として『imaginary(イマジナリー)』の頭文字を取って花梨ちゃんはこう呼ぶの。『i(アイ)』と。」
……………
「ヒュオオオオオ…」
「…風の赴くままに…」
……………
「フン!どんなやつだろうと俺様よりつえーやつはいねえ!」
「その通りですの。私にとってリソス様が一番であり私がリソス様に嫁入りするんですの。」
「頼むからテメェは黙っててくれ…。」
陸…海…闇…そして残る可能性は…。
「お嬢様!大変です!」
八代が慌てた様子で屋敷の玄関から出てきた。
「花梨ちゃん!?どうしたの!?」
「気象情報機関によると、竜巻がこの近辺で発生した模様で、間もなくこちらに向かってきます!お屋敷から離れた住宅街の被害もないこともあり、恐らくこれは自然にできたものではなく魔法によって人為的に形成されたものだと思われます!」
「…!そんな!このままではお屋敷が!」
「おい!咲!」
「はい♡なんでございましょうリソス様ぁ♡」
江戸村が先程の緊張感からは想像できないデレデレした表情をしている。
「あのバカを連れてこい!俺様のいる竜の山の何処かにいるはずだ!テメェが一番早い!」
すると江戸村の表情が一変して険しくなる。
「バカってあのバカですの?あいつはいつもいつもリソス様と一緒にいてイチャイチャしてて私は気に食わないんですのよ。」
「テメェ俺様の言う事が聞けねぇっていうのか!?」
「いくらリソス様の言う事とはいえそれはいたしかねますのよ。それに私からすればこんなアマのボロ屋敷なんぞ今すぐにでも吹き飛んでしまったほうが寧ろ好都合ですの。」
リソスはお嬢の泣きそうな表情をみて手段を選んではいられなくなった。
「わかった!もしあのバカを連れてきたら…俺様が…お前と1日…いや1時間デートしてやる!」
「え~♡リソス様と1日中デートできるのでしたら考えなくもないですのよ~?♡」
リソスはお嬢の表情を見て言う。
「わかった!1日だぞ!」
「もう一声~♡」
「3日!3日でどうだ!」
「もう一声~♡」
「1ヶ月!」
「えへへ♡了解したんですの♡約束ですのよ♡」
すると江戸村は姿を消したと思いきやすぐに千佳を抱えて現れ、
「あわわわわわわわわ!一体なんなんだゾ!?」
「おい千佳!屋敷の前に世界一頑丈な壁を建てやがれ!あの竜巻に負けないぐらいのとびっきりのやつをな!」
リソスが目の前まで近づいてくる竜巻を指差して千佳に指示する。
「要するにあれよりデカくて頑丈な壁を作ればいいのカ?そんなの楽勝だゾ!」
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴドーーーーーーンッッッッッッ!!」
地響きと共に一瞬にして天高い壁がそびえ立つ。
「流石俺様の部下だ!フハハハハ…」
「それではリソス様ぁぁぁ♡今日から一ヶ月お泊まり付きでデートに行きますのよ~♡」
リソスは江戸村に連れられて姿を消した。
「お嬢…。」
「…ええ…そうね…。」
するとお嬢が千佳に向かって、
「千佳ちゃん、どうもありがとう。それとちょっとお願いがあるんだけど…。」
「ん?なんだゾ?」
「皆様!気象情報機関によると、竜巻が形を崩していった模様です!千佳様の形成された壁のおかげかと思われます!」
「実は表面だけじゃなくてあの竜巻を四方から囲うようにして壁を作ってたんゾ!」
「なるほど、考えましたね。」
「偉いわね、千佳ちゃん。」
お嬢は千佳の頭を撫でた。
「千佳は偉いゾ!」
そしてお嬢と黎は千佳を屋敷に招き入れた。
「おー!なかなか立派な屋敷だゾ!」
千佳がはしゃいでいる。
「あなたの部屋も用意してあるわよ。」
「わーいだゾ!」
「千佳様、ようこそいらっしゃいました!菱沼です!今回は大変ご活躍頂きありがとうございました!」
菱沼が広間で千佳を招き入れる。
「晶ちゃん、千佳ちゃんをお風呂に入れてあげて。」
「かしこまりましたお嬢様!」
「千佳はお風呂嫌いなんだゾ。」
確かに千佳からは泥のような臭いが漂っている。ずっと風呂に入っていないのだろう。
「千佳ちゃん、お風呂はちゃんと入らないとダメよ。」
千佳が菱沼に連れて行かれる。
「花梨ちゃんもすぐに報告に来てくれてありがとう。」
「いえ、とんでもございません。お屋敷が守れたのはみなさまの力があってのことです。」
そしてお嬢は黎を見つめる。
「そして黎。」
「はい。」
「あなたは私の部屋についてきなさい。」
黎はお嬢に左腕を掴まれ部屋に連れてかれた。
「そこに座りなさい。」
ベッドに座らされた。
「どうして呼ばれたかわかる?」
「…いえ、今回は…すみません…心当たりが…」
するとお嬢が救急用具を持ち出して黎の右側に座り右腕を手当した。
「…全くあなたはすぐ無茶するんだから…。」
「あ…すみません…これぐらい大丈夫ですよ…」
「大丈夫じゃないわよ!咲の居合をナイフで受け止めたつもりかもしれないけど、ずっと出血が止まってないじゃない!取り敢えず一時的に止血して、南病院行くわよ!」
「いえ…ですから本当に大丈…」
「黎、今回は本当に死んでたかもしれないのよ。」
お嬢が黎の言葉を遮る。
2人は見つめ合う。
お嬢の表情は真剣だかその心の内は心配そのものだった。
黎にはわかる。記憶を共有しているから。
黎にはわかる。お嬢が黎に対して本当に望んでいるもの。感情を読み取れるから。
そして黎はお嬢に精一杯応えようと決意する。
そして黎は全てを見透かしたように微笑む。
「お嬢、わかりますか?」
「…な、なにが…?」
お嬢が慌てる。
「借りたものは返さなくてはいけませんよね?」
黎がお嬢の左耳に顔を近づける。
「…黎…な…なに…?」
「俺はお嬢に対してこれからしようとしてることの全ての記憶を渡したのでわからないはずがないのです。」
「……ほ、本気…なの…?」
「抵抗しないということは…それが答えということでよろしいですか?」
「………ッ待ッ…」
「ドンッ!」
そのままお嬢は黎にベッドに押し倒された。
「待ったはなしですよ、お嬢。側から離れないと約束しましたから、もう離しませんよ。」
第四章 別世界編 ~完~
次回 第二十六話 沈没
「問答無用ッ!」
「チャキィンッ!」
咲が居合をお嬢に放った途端金属が砕ける音がした。
「俺のお嬢に、何か用ですか?」
「黎!?大丈夫!?」
黎の右腕が出血していた。
「ええ、勿論です。お嬢の側を離れないって約束しましたからね。」
黎の右肩の力が抜けていた。
「フンッ。とんだ邪魔が入りましたわね。まあいっそのこと南香歩はその田本黎と一生を共にしていただければ私にとっても都合がいいんですの。」
すると倒れているリソスの右指がピクッと動き、
「黎!テメェ俺様と勝負しやがれ!」
と起き上がった。
「お前は誰ですか?」
「ズザアアアア………」
リソスがずっこけた。
そして起き上がり、
「リソスだゴルァ!二度と忘れるな!」
「そうですかリソス、ですが今はお前と争ってる場合ではないのです。」
「俺様から逃げようってのか?」
リソスが腕を鳴らす。
「俺はお前達がどうしてS級舎弟なのか聞きたいのですが教えていただけませんか?」
「私達を侮辱してるんですの?」
江戸村が黎に険しい表情を向ける。
「いえ、言葉足らずですみません。お前達は南源蔵様からS級舎弟の推薦を頂いたんですよね?その理由についてお聞きしたかったのです。」
「そんなの俺様がこの世界で最強だからに決まってんだろ!」
「私は海を統べる者として、海中を支配してほしいと頼まれましたが、正直あまり気乗りはしませんでしたわ。仕事はほとんど海斗に任せていましたの。」
陸と海の支配、そして南源蔵が黎に言っていたあの言葉…。
「やはり…そうでしたか…。」
「どういうことですの?」
江戸村は首を傾げる。
「お嬢、S級舎弟に昇格するための条件は、現在の南グループにはないですよね?」
「…ええ、S級舎弟はそもそもお父様の独断で南グループ内の推薦によって現在にまで存続している階級だもの。」
そして黎にはもう一つ引っかかることがあった。
「S級舎弟は四天王と呼ばれるからには4人いる可能性がありますが、お嬢は俺達3人以外を把握していらっしゃいますか?」
「………」
お嬢の様子がおかしい。
S級舎弟の3人は各々に自分達を上回る何かが存在するのではないかと一瞬頭をかすめる。
「おい、俺様よりもつえーやつがいるってのか!?そいつはどんなやつだ!?ぶっ飛ばしてやるぞ!」
「私もリソス様がこの世界で一番だと思っておりますのよ。まさかそんな方がおられるとは思いませんわ。」
「テメェに言われると何故だか寒気がするぜ…。」
お嬢がしばらく黙っていると遂に口を開く。
「…わからないの…。」
「…え…。」
「私も花梨ちゃんとそのことについて話合ったことがあるんだけどね。花梨ちゃんの南グループの過去の資料にも何処にもないみたいだし、そもそも3人しかいないのか、認識されていないだけで残りの1人がいるのか、私達にもわからないの…。」
お嬢がそう言うと、しばらくの静寂の中、風の吹く音だけがした。
そしてお嬢はしばらくの沈黙のあと話を続けた。
「そして花梨ちゃんが言ってたの。もし仮に残りの1人が存在するとして、その者の名前を想像上の人物として『imaginary(イマジナリー)』の頭文字を取って花梨ちゃんはこう呼ぶの。『i(アイ)』と。」
……………
「ヒュオオオオオ…」
「…風の赴くままに…」
……………
「フン!どんなやつだろうと俺様よりつえーやつはいねえ!」
「その通りですの。私にとってリソス様が一番であり私がリソス様に嫁入りするんですの。」
「頼むからテメェは黙っててくれ…。」
陸…海…闇…そして残る可能性は…。
「お嬢様!大変です!」
八代が慌てた様子で屋敷の玄関から出てきた。
「花梨ちゃん!?どうしたの!?」
「気象情報機関によると、竜巻がこの近辺で発生した模様で、間もなくこちらに向かってきます!お屋敷から離れた住宅街の被害もないこともあり、恐らくこれは自然にできたものではなく魔法によって人為的に形成されたものだと思われます!」
「…!そんな!このままではお屋敷が!」
「おい!咲!」
「はい♡なんでございましょうリソス様ぁ♡」
江戸村が先程の緊張感からは想像できないデレデレした表情をしている。
「あのバカを連れてこい!俺様のいる竜の山の何処かにいるはずだ!テメェが一番早い!」
すると江戸村の表情が一変して険しくなる。
「バカってあのバカですの?あいつはいつもいつもリソス様と一緒にいてイチャイチャしてて私は気に食わないんですのよ。」
「テメェ俺様の言う事が聞けねぇっていうのか!?」
「いくらリソス様の言う事とはいえそれはいたしかねますのよ。それに私からすればこんなアマのボロ屋敷なんぞ今すぐにでも吹き飛んでしまったほうが寧ろ好都合ですの。」
リソスはお嬢の泣きそうな表情をみて手段を選んではいられなくなった。
「わかった!もしあのバカを連れてきたら…俺様が…お前と1日…いや1時間デートしてやる!」
「え~♡リソス様と1日中デートできるのでしたら考えなくもないですのよ~?♡」
リソスはお嬢の表情を見て言う。
「わかった!1日だぞ!」
「もう一声~♡」
「3日!3日でどうだ!」
「もう一声~♡」
「1ヶ月!」
「えへへ♡了解したんですの♡約束ですのよ♡」
すると江戸村は姿を消したと思いきやすぐに千佳を抱えて現れ、
「あわわわわわわわわ!一体なんなんだゾ!?」
「おい千佳!屋敷の前に世界一頑丈な壁を建てやがれ!あの竜巻に負けないぐらいのとびっきりのやつをな!」
リソスが目の前まで近づいてくる竜巻を指差して千佳に指示する。
「要するにあれよりデカくて頑丈な壁を作ればいいのカ?そんなの楽勝だゾ!」
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴドーーーーーーンッッッッッッ!!」
地響きと共に一瞬にして天高い壁がそびえ立つ。
「流石俺様の部下だ!フハハハハ…」
「それではリソス様ぁぁぁ♡今日から一ヶ月お泊まり付きでデートに行きますのよ~♡」
リソスは江戸村に連れられて姿を消した。
「お嬢…。」
「…ええ…そうね…。」
するとお嬢が千佳に向かって、
「千佳ちゃん、どうもありがとう。それとちょっとお願いがあるんだけど…。」
「ん?なんだゾ?」
「皆様!気象情報機関によると、竜巻が形を崩していった模様です!千佳様の形成された壁のおかげかと思われます!」
「実は表面だけじゃなくてあの竜巻を四方から囲うようにして壁を作ってたんゾ!」
「なるほど、考えましたね。」
「偉いわね、千佳ちゃん。」
お嬢は千佳の頭を撫でた。
「千佳は偉いゾ!」
そしてお嬢と黎は千佳を屋敷に招き入れた。
「おー!なかなか立派な屋敷だゾ!」
千佳がはしゃいでいる。
「あなたの部屋も用意してあるわよ。」
「わーいだゾ!」
「千佳様、ようこそいらっしゃいました!菱沼です!今回は大変ご活躍頂きありがとうございました!」
菱沼が広間で千佳を招き入れる。
「晶ちゃん、千佳ちゃんをお風呂に入れてあげて。」
「かしこまりましたお嬢様!」
「千佳はお風呂嫌いなんだゾ。」
確かに千佳からは泥のような臭いが漂っている。ずっと風呂に入っていないのだろう。
「千佳ちゃん、お風呂はちゃんと入らないとダメよ。」
千佳が菱沼に連れて行かれる。
「花梨ちゃんもすぐに報告に来てくれてありがとう。」
「いえ、とんでもございません。お屋敷が守れたのはみなさまの力があってのことです。」
そしてお嬢は黎を見つめる。
「そして黎。」
「はい。」
「あなたは私の部屋についてきなさい。」
黎はお嬢に左腕を掴まれ部屋に連れてかれた。
「そこに座りなさい。」
ベッドに座らされた。
「どうして呼ばれたかわかる?」
「…いえ、今回は…すみません…心当たりが…」
するとお嬢が救急用具を持ち出して黎の右側に座り右腕を手当した。
「…全くあなたはすぐ無茶するんだから…。」
「あ…すみません…これぐらい大丈夫ですよ…」
「大丈夫じゃないわよ!咲の居合をナイフで受け止めたつもりかもしれないけど、ずっと出血が止まってないじゃない!取り敢えず一時的に止血して、南病院行くわよ!」
「いえ…ですから本当に大丈…」
「黎、今回は本当に死んでたかもしれないのよ。」
お嬢が黎の言葉を遮る。
2人は見つめ合う。
お嬢の表情は真剣だかその心の内は心配そのものだった。
黎にはわかる。記憶を共有しているから。
黎にはわかる。お嬢が黎に対して本当に望んでいるもの。感情を読み取れるから。
そして黎はお嬢に精一杯応えようと決意する。
そして黎は全てを見透かしたように微笑む。
「お嬢、わかりますか?」
「…な、なにが…?」
お嬢が慌てる。
「借りたものは返さなくてはいけませんよね?」
黎がお嬢の左耳に顔を近づける。
「…黎…な…なに…?」
「俺はお嬢に対してこれからしようとしてることの全ての記憶を渡したのでわからないはずがないのです。」
「……ほ、本気…なの…?」
「抵抗しないということは…それが答えということでよろしいですか?」
「………ッ待ッ…」
「ドンッ!」
そのままお嬢は黎にベッドに押し倒された。
「待ったはなしですよ、お嬢。側から離れないと約束しましたから、もう離しませんよ。」
第四章 別世界編 ~完~
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