【R18】世界線Ⅱ〜恋するお嬢とその舎弟達〜

第四章 別世界編

第二十三話 現実

「花梨ちゃん！その世界線Ⅰというのはどういう世界なの！？」

「はい。源蔵様がいらしたのはその地球と呼ばれる星で、その中で『日本』と呼ばれる『国」にいらしたそうです。国というのはいわば一定の領土のようなものが世界的に設けられたようで、長い時を経てその領土は変動を繰り返しているようです。特に戦争によって軍勢同士が争い、その結果によって領土を取り決めたり、ある領土を『植民地』と呼ばれる場所の原住民に生産を一方的に促させる事をさせたりしたこともあったようです。資料の限りでは源蔵様の出身地は過去に植民地になることはなかったとの事ですが、戦争によって大規模な犠牲者が出ることや、現在でも裏社会の組織や一定の人々が国で定められた『法』、つまりルールを無視しているとのことで、社会的な問題になっている様です。その他にも…」

「か、花梨ちゃん、ストップストップ！！」

　お嬢は両手をあげた。

「は、はい！どうしましたでしょうか！？」

　お嬢はあげた両手を頭に乗せ、

「む、難しい…あの…複雑すぎて…。」

　お嬢はパニックだった。

　そんなやり取りをしていると、風呂から上がり、ドライヤーで髪を乾かし終えた黎がやってきた。

「八代、物事を丁寧に説明することは素晴らしい事ですが、お話してる相手がしっかりと自分のペースについてこれてるか考慮することも大事ですよ。別世界の話なんて本人が体験したことがない以上ただでさえ分からないことだらけなんですから。」

「も、申し訳ございませんお嬢様！」

　八代がお嬢に深々と頭を下げる。

「お嬢、大丈夫ですよ。今の話、ちゃんと俺にも共有されてましたから。分からないことはゆっくり理解していきましょう。」

　黎がお嬢のもとによると、

「…うん…。」

　お嬢が黎の元にすり寄る。そして黎がお嬢の背中に手を回す。

「八代、問題は源蔵様がどうしてこの世界に存在するようになったのか、そしてこの世界での目的はなんだったのかです。何か考えられる事はありますか？」

「ワタクシの予想ですが、源蔵様のいらした世界では前提としてワタクシ達の世界のように魔法というものは空想上のものでしかなかったとされておりまして、召喚魔法の類も例外ではございません。ですのでどのような方法でこちらの世界にいらしたのかはわかりかねますが、目的は恐らく南グループの勢力拡大による一党支配の可能性が高かったと思われます。」

　すると黎は疑問に思った。目的のためならは手段を選ばない武力による圧政や独裁によって世界を統一することは支配される側の反感を多く買う可能性が高いため不可能に近いからだ。それは黎は身を持って知っていた。

「…源蔵様の世界線Ⅰでの生い立ちなどについてはなにか資料はありましたか？」

「はい。生まれながらにして組織の裏社会に所属していた様です。反社会勢力とも呼ばれる組織の家系であった源蔵様は法の門を上手くかいくぐって武力や財力によってその組織を維持させて行くための方法を受け継がれてきたそうです。」

「…わかりました。貴重な情報ありがとうございます。また何かわかりましたら教えてください。」

「かしこまりました。あ、それに加えてこのような資料がございました。恐らく源蔵様のいた世界に対して抱いていた感情のようなものだと思われます。」

　そう言って八代は資料の原本を黎に見せた。するとそこには、

『あんな意味のない世界で何故みな忙しなく生きているのか私には到底理解できない。あの世界の現実というものは非常にくだらないものだった。』

　と書かれてあった。


　次回　第二十四話　共鳴