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第一章 屍達の逆襲編
第一話 開催
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「さあやってまいりました!本日はお忙しい中お越しいただき誠にありがとうございます!南グループ主催の親睦会!司会の菱沼です!本日は楽しい一日にしていってくださいね!」
とある貸し切りのイベント会場において響き渡る一人の女性の声。彼女の名前は菱沼晶。南グループのC級舎弟。そしてその会場に集まる多くの参加者達。参加者の手首の腕にはそれぞれ番号が書かれており、俺の左手首には26と書かれたリストバンドの数字。そして俺の隣にいるのはパーティ用の赤いドレスを身にまとった赤い瞳で赤髪ロングをハーフアップで束ねている髪型の美女、彼女の右手首のリストバンドには25の数字が書かれている。
遡ること数日前…
「お嬢…今度は一体何をされるおつもりですか?あまりお嬢が表立って目立つようなことは控えるべきかと…。」
この『お嬢』とは南グループの一人娘で『南香歩』という名前だが、何やらイベント開催の作業をしているようで後ろから声をかけるとどうやら俺の発言に不満だったようで、後ろを振り向くと頬を膨らませていて不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「もう!黎ったら!私の考えてることは全部分かってるくせにわざわざそんなこと聞く必要ないでしょ!?親睦会よ!親睦会!次の日曜日に親睦会を開くの!私だって色んな人とおしゃべりして、仲良くなりたいんだから!これぐらいのことしたって別に大したことは起こらないんだからきっと大丈夫よ!あなたってばいつも私のこと心配しすぎなんだから!」
そう、お嬢はいつも真っ直ぐで思い立ったら直ぐ行動するところがある。だからこそ、俺には心配になることもあるんだ…。
「ですが南グループのトップがお嬢になってからまだ1年です。そう…あの事件が起きてからまだ1年しか経っていないのです…。お嬢のお気持ちを尊重したい気持ちもありますがもう少し慎重に行動すべきかと…。」
二人の間に空気が少し重たくなるのを感じた。しかしそれをすぐに打ち破るかのようにお嬢は切り出した。
「お父様のことなら…。もうちゃんと整理がついてるわよ…。だからこそこの組織を明るい方向に少しでも早く変えたいの。だから黎、お願い。私のわがままを許してほしいの。それに、いざというときは、私は黎のことを信じてるから…。」
「お嬢…。わかりました。この田本黎、お嬢の側近として何かあれば必ずお守りします。その代わり、無茶はしないと必ず約束しないでください。」
「わかったわ。ありがとう。で・も・ね・あなたは側近じゃなくて!しゃ!て!い!勘違いしないの!」
「ゴンッ!」俺の頭上に鉄球より重い鉄拳が落ちてきた。
「イテッ!!すみません。身の程をわきまえます…。」
「わかればいいのよ!わかれば!」
そう言ってお嬢はイベント開催準備の作業に再び取りかかった。
「まぁ…あなたなら側近、いや、それより近い関係になってあげてやらなくもないっていうのも悪くはないのかもね…。」
お嬢がボソッと何か言ったような気がした。
「…?何かおっしゃいましたか?」
「いえ、別になんでもないわ。私はもう少し作業を続けるから、あなたはそろそろ休みなさい。」
「かしこまりました。それでは、お嬢も無理しないでくださいね。おやすみなさい。」
「ええ、おやすみなさい。」
そして現在…
そう、25番のリストバンドしているのは俺のお嬢だ。そして親睦会は始まり、お嬢の提案により俺達は別行動することにした。一緒にいると初対面の人との交流がしづらいかもしれないのだと言うのだ。だが、何か嫌な予感がする。そしてその予感はすぐに的中し、お嬢は複数の男達に囲まれていた。俺はドミニオンでお嬢と記憶の共有ができるため、なんとか今のところ危機的な状況には陥っていないようだが少し見張っている必要がありそうだ。
しかしここで思わぬ邪魔が入った。
「お兄さん私達とお話しませ~ん?」
声をかけてきたのは若い女性の2人組の一人だった。
「っていうかお兄さん超イケメン~なんか運命感じちゃう~。」
そう言ってもう一人の女性が俺の左腕にしがみついてきた。
「あ、あの…すみませんが今ちょっと忙しくて…。」
「あ!桃香ずる~い!私もお兄さんと腕組みた~い!」
そう言ってもう一人の女性が今度は俺の右腕にしがみついてきた。
周囲の視線を感じる気まずさと同時にお嬢を見守らなくてはならないという責務でなんとかやり過ごすしかなかったが…。
すると遠くに見えるお嬢、いや、その周辺の様子が少しおかしかった。ある男と何やら言い争いをしており、その周りには先程いた男達に加えて更に多くの男がお嬢と言い争いの相手の男を中心にとり囲んでいる。
「すみません!ちょっと一旦離して頂けますか!?お嬢…いや!友人と待ち合わせしてるのを思い出したので!」
「ウフフフ…離さないわよ…。」
「あなた、あの南香歩っていう女の舎弟なんでしょう?私達はあなたがあの子を守るのを邪魔するためにあなたに近づいたのよ。」
すると突然全身の力が抜けてきた…!このままでは…お嬢が…危ない!
「あなた、一体何が目的なのよ。」
中年で肥満体型の男に向かって香歩は聞いた。
「目的?そんなの決まっているだろう?お前をこの俺様の飼い犬にしてやると言ってるんだ。」
香歩は冷静だった。
「飼い犬?そもそも私は人間よ。あなたの目は節穴なのかしら?」
男はお嬢の言葉に耳を傾けずに続けた。
「この人数相手にいくら南グループの一人娘とは言えおなご一人で敵うわけないだろう?おまけにお前の舎弟は今や戦闘不能状態。ここにいる南グループで戦える者はお前しかいない。さぁ、大人しく言う事を聞けば痛いようにはしない。俺達についてこい。沢山可愛がってやろう。」
「あなた、話長いわよ。」
そして香歩は赤いドレスに忍び込ませていたトランシーバーのようなものを取り出し、
「B級舎弟、出番よ。」
というと身長2m程度のスーツを身にまといサングラスをかけた大男が突如会場の扉の向こうから二人現れ男の取り巻きを瞬く間に次々と制圧していった。片方の大男は取り巻きの一人を担いで別の取り巻きに投げつける。もう片方の大男は身体の大きさとは裏腹に素早いフットワークで次々と重いパンチで取り巻きを一撃でノックアウトさせていく。
そして一人取り残された男の顔は青ざめ、二人の大男を前に後ずさりした。
「あなた、私がどういう存在なのかちゃんと下調べした?ちょっと情弱すぎるわよ。リストバンドの番号は…20番ね。この会場出禁にするからさっさと出ていきなさい。」
そして男は「ひぃいいいい!!」と逃げるようにして出ていった。
俺のもとにお嬢と大男二人が近づいてきた。俺の両腕を握っていた女二人も俺の腕を離し、お嬢は
「あなたたちもあいつらとグルだったんでしょう?番号は55番と56番ね。出禁よ。出ていきなさい。」
女達は怯えた表情で会場を後にしていった。
「お嬢…すみません…俺がついていながら…。」
するとお嬢は俺を抱きしめて
「黎、ごめんね。私が別行動しようなんて言ったから…。私のわがままのせいであなたに心配をかけて悲しませるようなことまでしてしまって…。」
「お嬢…。」
言葉が出なかった。俺はお嬢を責める気持ちは全くなかった。でもお嬢は俺に対して責任を感じている。俺はただ自分の無力感に腹が立った。そして…。
「ダンテ、ライト、ありがとうございます。」
彼らはお嬢を助けてくれたB級舎弟の大男二人組で二人で常に行動をしており、二人同士でしか通じない独自の言語を話すため、他者と言葉は通じない。だからコミュニケーションを取るときは俺のドミニオンでいつも意思表示をすることにしているのだ。だが、お嬢の呼びかけにはB級舎弟で誰よりも素早く反応する二人。投げ技で敵を制圧していった大男はダンテ、素早くて重いパンチの打撃系で制圧していった大男がライトだ。
そしてお嬢は吹っ切れたように、
「さて!親睦会の仕切り直しといくわよ!みんな怖い思いさせちゃってごめんね!これから何かあったら私達が守ってあげるから安心して楽しんでね!」と高々と声を上げたのであった。
次回 第二話 襲撃
とある貸し切りのイベント会場において響き渡る一人の女性の声。彼女の名前は菱沼晶。南グループのC級舎弟。そしてその会場に集まる多くの参加者達。参加者の手首の腕にはそれぞれ番号が書かれており、俺の左手首には26と書かれたリストバンドの数字。そして俺の隣にいるのはパーティ用の赤いドレスを身にまとった赤い瞳で赤髪ロングをハーフアップで束ねている髪型の美女、彼女の右手首のリストバンドには25の数字が書かれている。
遡ること数日前…
「お嬢…今度は一体何をされるおつもりですか?あまりお嬢が表立って目立つようなことは控えるべきかと…。」
この『お嬢』とは南グループの一人娘で『南香歩』という名前だが、何やらイベント開催の作業をしているようで後ろから声をかけるとどうやら俺の発言に不満だったようで、後ろを振り向くと頬を膨らませていて不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「もう!黎ったら!私の考えてることは全部分かってるくせにわざわざそんなこと聞く必要ないでしょ!?親睦会よ!親睦会!次の日曜日に親睦会を開くの!私だって色んな人とおしゃべりして、仲良くなりたいんだから!これぐらいのことしたって別に大したことは起こらないんだからきっと大丈夫よ!あなたってばいつも私のこと心配しすぎなんだから!」
そう、お嬢はいつも真っ直ぐで思い立ったら直ぐ行動するところがある。だからこそ、俺には心配になることもあるんだ…。
「ですが南グループのトップがお嬢になってからまだ1年です。そう…あの事件が起きてからまだ1年しか経っていないのです…。お嬢のお気持ちを尊重したい気持ちもありますがもう少し慎重に行動すべきかと…。」
二人の間に空気が少し重たくなるのを感じた。しかしそれをすぐに打ち破るかのようにお嬢は切り出した。
「お父様のことなら…。もうちゃんと整理がついてるわよ…。だからこそこの組織を明るい方向に少しでも早く変えたいの。だから黎、お願い。私のわがままを許してほしいの。それに、いざというときは、私は黎のことを信じてるから…。」
「お嬢…。わかりました。この田本黎、お嬢の側近として何かあれば必ずお守りします。その代わり、無茶はしないと必ず約束しないでください。」
「わかったわ。ありがとう。で・も・ね・あなたは側近じゃなくて!しゃ!て!い!勘違いしないの!」
「ゴンッ!」俺の頭上に鉄球より重い鉄拳が落ちてきた。
「イテッ!!すみません。身の程をわきまえます…。」
「わかればいいのよ!わかれば!」
そう言ってお嬢はイベント開催準備の作業に再び取りかかった。
「まぁ…あなたなら側近、いや、それより近い関係になってあげてやらなくもないっていうのも悪くはないのかもね…。」
お嬢がボソッと何か言ったような気がした。
「…?何かおっしゃいましたか?」
「いえ、別になんでもないわ。私はもう少し作業を続けるから、あなたはそろそろ休みなさい。」
「かしこまりました。それでは、お嬢も無理しないでくださいね。おやすみなさい。」
「ええ、おやすみなさい。」
そして現在…
そう、25番のリストバンドしているのは俺のお嬢だ。そして親睦会は始まり、お嬢の提案により俺達は別行動することにした。一緒にいると初対面の人との交流がしづらいかもしれないのだと言うのだ。だが、何か嫌な予感がする。そしてその予感はすぐに的中し、お嬢は複数の男達に囲まれていた。俺はドミニオンでお嬢と記憶の共有ができるため、なんとか今のところ危機的な状況には陥っていないようだが少し見張っている必要がありそうだ。
しかしここで思わぬ邪魔が入った。
「お兄さん私達とお話しませ~ん?」
声をかけてきたのは若い女性の2人組の一人だった。
「っていうかお兄さん超イケメン~なんか運命感じちゃう~。」
そう言ってもう一人の女性が俺の左腕にしがみついてきた。
「あ、あの…すみませんが今ちょっと忙しくて…。」
「あ!桃香ずる~い!私もお兄さんと腕組みた~い!」
そう言ってもう一人の女性が今度は俺の右腕にしがみついてきた。
周囲の視線を感じる気まずさと同時にお嬢を見守らなくてはならないという責務でなんとかやり過ごすしかなかったが…。
すると遠くに見えるお嬢、いや、その周辺の様子が少しおかしかった。ある男と何やら言い争いをしており、その周りには先程いた男達に加えて更に多くの男がお嬢と言い争いの相手の男を中心にとり囲んでいる。
「すみません!ちょっと一旦離して頂けますか!?お嬢…いや!友人と待ち合わせしてるのを思い出したので!」
「ウフフフ…離さないわよ…。」
「あなた、あの南香歩っていう女の舎弟なんでしょう?私達はあなたがあの子を守るのを邪魔するためにあなたに近づいたのよ。」
すると突然全身の力が抜けてきた…!このままでは…お嬢が…危ない!
「あなた、一体何が目的なのよ。」
中年で肥満体型の男に向かって香歩は聞いた。
「目的?そんなの決まっているだろう?お前をこの俺様の飼い犬にしてやると言ってるんだ。」
香歩は冷静だった。
「飼い犬?そもそも私は人間よ。あなたの目は節穴なのかしら?」
男はお嬢の言葉に耳を傾けずに続けた。
「この人数相手にいくら南グループの一人娘とは言えおなご一人で敵うわけないだろう?おまけにお前の舎弟は今や戦闘不能状態。ここにいる南グループで戦える者はお前しかいない。さぁ、大人しく言う事を聞けば痛いようにはしない。俺達についてこい。沢山可愛がってやろう。」
「あなた、話長いわよ。」
そして香歩は赤いドレスに忍び込ませていたトランシーバーのようなものを取り出し、
「B級舎弟、出番よ。」
というと身長2m程度のスーツを身にまといサングラスをかけた大男が突如会場の扉の向こうから二人現れ男の取り巻きを瞬く間に次々と制圧していった。片方の大男は取り巻きの一人を担いで別の取り巻きに投げつける。もう片方の大男は身体の大きさとは裏腹に素早いフットワークで次々と重いパンチで取り巻きを一撃でノックアウトさせていく。
そして一人取り残された男の顔は青ざめ、二人の大男を前に後ずさりした。
「あなた、私がどういう存在なのかちゃんと下調べした?ちょっと情弱すぎるわよ。リストバンドの番号は…20番ね。この会場出禁にするからさっさと出ていきなさい。」
そして男は「ひぃいいいい!!」と逃げるようにして出ていった。
俺のもとにお嬢と大男二人が近づいてきた。俺の両腕を握っていた女二人も俺の腕を離し、お嬢は
「あなたたちもあいつらとグルだったんでしょう?番号は55番と56番ね。出禁よ。出ていきなさい。」
女達は怯えた表情で会場を後にしていった。
「お嬢…すみません…俺がついていながら…。」
するとお嬢は俺を抱きしめて
「黎、ごめんね。私が別行動しようなんて言ったから…。私のわがままのせいであなたに心配をかけて悲しませるようなことまでしてしまって…。」
「お嬢…。」
言葉が出なかった。俺はお嬢を責める気持ちは全くなかった。でもお嬢は俺に対して責任を感じている。俺はただ自分の無力感に腹が立った。そして…。
「ダンテ、ライト、ありがとうございます。」
彼らはお嬢を助けてくれたB級舎弟の大男二人組で二人で常に行動をしており、二人同士でしか通じない独自の言語を話すため、他者と言葉は通じない。だからコミュニケーションを取るときは俺のドミニオンでいつも意思表示をすることにしているのだ。だが、お嬢の呼びかけにはB級舎弟で誰よりも素早く反応する二人。投げ技で敵を制圧していった大男はダンテ、素早くて重いパンチの打撃系で制圧していった大男がライトだ。
そしてお嬢は吹っ切れたように、
「さて!親睦会の仕切り直しといくわよ!みんな怖い思いさせちゃってごめんね!これから何かあったら私達が守ってあげるから安心して楽しんでね!」と高々と声を上げたのであった。
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