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第三章 教師たるものが生徒に責任を持った発言をできない現実が残念なんです。

第十六話 少なくとも俺はそっちが干渉しなければこっちからも干渉するつもりないから。

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「光、それどうしたの?」

「帰ってから家にある家電品分解して作ってみたんだ…。時間がなかったから威力は強くないんだけどね…。」

「ちょっと俺に試してみて。」

「うん…分かった…。」

「バチバチッ!」

「………。」

「ガタッ…。」

 伊織は膝をついた。

「確かにスタンガンとしてはまだまだ改良の余地があるかもね。でも光ならもっといいもの作れるよ。」

「そうだよね…。でも…伊織くんにそう言ってもらえて嬉しい…。」

「ちょっと…スタンガンって…学校になんてもの持ってきてるんですか…!没収します!」

「わかりました…。」

 光は教卓の方に行ってスタンガンを恵に渡す。

「それと!伊織くんのカッターナイフも!そんな使い方をするなら没収です!」

「わかりました。」

 伊織も教卓の方に行ってカッターナイフを恵に渡そうとした。

「どうしました?受け取らないんですか?」

「刃をしまいなさい…!」

 恵は刃先を向けられたまま伊織に渡されたのであった。

「自分でしまえばいいじゃないですか。教卓に置いておきますから。それに早くホームルーム終わらせないと授業始まってしまいますよ。」

 そう言って伊織は教卓にカッターナイフを置いて自分の席に戻る。

 光も自分の席に戻る。

 金森はまだ床に座ったままだった。

「金森さん…立てますか…?」

「ふざけんな…。」

「え…?」

「あいつに殺される所だったんだよあたし!何であんた助けてくれないの!?」

 金森が光に指を差しながら恵に強く訴えかける。

「ッ…。」

 恵は言葉に詰まる。

「それはお前らが光をいじめてた時に先生が光を助けなかった事を考えれば当然だろ。それにあの程度の電圧で腹部を制服越しに当てられたぐらいで人は死なない。殺されそうになったとか話を大袈裟にするな。」

「黒田…!あんたら一体なんなのよ…!」

 伊織は参考書を開き始める。

「わからないならわからないまま一生を終えろよ。こっちだってお前に使ってる時間は勿体ないんだよ。少なくとも俺はそっちが干渉しなければこっちからも干渉するつもりないから。」

「…ッ!」

 金森はゆっくり立ち上がって席に着く。

「…そう…少なくとも俺は…な。」

 伊織は静かに呟く。

「…伊織くん…言ったよね…行動しない奴は失敗も成功もしない一生つまらない奴だって…。私…伊織くんに…つまらない奴って思われるのも嫌だし…何より好奇心を失うなって…伊織くんが教えてくれたから…」

 光は静かに笑みを浮かべて伊織にもらった教科書を開く。

「私…やってみるよ…。」

 伊織は自分の参考書を、光は伊織にもらった教科書に伊織に言われた心に刺さった言葉のメモをもとに、それぞれの勉強にはげむのであった。


 次回 第十七話 力は加速度と質量の積である。知ってた?光。
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