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閑話 筍 生ず
1 ※東原視点
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クラスみんなでバス旅行なんて、しかも行先が遊園地なんて、それはもう大人たちからも一日はしゃいで来いって言われてるのとおんなじだ。
行先が決まった時からワクワクソワソワしてたけど、当日はもう楽しみ過ぎて早起きしすぎて、うちの親にも隣のソノにも怒られた。
「……お前、着く前から体力使ってどうするんだよ……。バスの中は寝とけよ、せっかくの遊園地で絶対バテるぞ」
昨日寝るギリッギリまで勉強してたらしいソノも今日は赤本も参考書もノートもペンも置いて、遊園地で遊ぶ一択になってくれたのに、ただでさえ高い俺のテンションは更にブチ上がる。
「だって、この時期に遊園地だよ!遊園地!テンション上げないと損じゃん!」
「あー、わかったわかった、みんな寝てるからバスの中は静かにしようなー」
朝早すぎたせいか、クラスのみんなはもちろん、モモもハヤシも藤谷もそろってぐっすり寝落ちている。
そう言えばソノもちょっと眠そうで、俺はなんとなくひじ掛けに置かれたソノの指をそろりと握った。
それで気づいたのか、重たそうな瞼を持ち上げて、ソノが俺を見て微笑んでくれる。
「……ごめん、ソノも眠いよな。……俺が昨日結構遅くまで通話してたし……。今日も朝一で突撃したし……」
自分で言ってて、上げ過ぎたテンションの反動みたいに沈んできた俺の頭をソノが柔らかく撫でてくれた。
「ほらみろ、はしゃぎすぎなんだよ、お前は。……とりあえず、次の休憩着いたら起こすから寝てろ」
そのまま、やさしい手でポンポンと頭を撫でてくれて、問答無用で俺の頭を自分の肩に引き寄せる。
普段はソノとの間でも一枚張ってる緊張感みたいなものが、それですっかり溶けてしまって、俺はそのままソノにくっついて眠りに落ちた。
「……どうして起こしてくれなかったんだよ、ソノ―!」
「起こしたろ、トイレいける時間あって良かったな」
ギャン泣きする俺を一瞥してのんきに飲み物を買うソノは、確かにサービスエリアにバスが付いた瞬間から起こしてはくれていたらしい。
ほぼほぼ、ソノに抱き着く形で寝ていた俺のせいで、本人もなかなか外に出れなかったみたいだから確かにソノのせいじゃないんだが。
「……サービスエリア、探検したかった……」
「……航太くん、まだゴネてるの? さっき、そこでしぼりたて牛乳ソフトクリーム売ってたけど、そろそろ時間になっちゃうよ?」
見かねたのか、ハヤシとオヤツか何かを買ってきたらしいモモが通りかかって、ソノと目を合わせてからとっておき情報を教えてくれた。
「……買う! 行くぞ、ソノ!俺が奢る!」
「え、俺別にいらな……しょうがねーな、もー」
俺が引きずるようにしてソノを連れてソフトクリームのキッチンカーにばく進すると、俺達より一足先に藤谷がソフトクリームを買っていた。あと既に土産を大量購入してるっぽい。
「……え、おま、もう土産そんな買ったの?遊園地の分は?」
「え、そりゃ着いたら買うけど。土産は一期一会だからいいの見つけたら即買えって、俺の親類が言ってたからさ。 ……しかし、ソノはずっと航太のお守で大変だなー。この構図すっげー久々に見た気するわ」
「うっせ、ソノも息抜きになるからいいんだよ! ……あ、ソフトクリーム2つください!しぼりたて牛乳のやつ!あ、待って、一個半分カフェオレのにしてください!」
「……藤谷もそろそろバス乗らないとおいてかれるぞ、俺達もこれ買ったら即戻る」
「……あ、いけね。 ン、もし遅れそうなら先生に言っとくわ、お先」
悠々と藤谷がバスに戻っていく後ろ姿を見ながら、ソノが時計を気にする様子に俺もちょっとソワソワしてきた。
先に支払いだけ済ませてしまって、なんとなくソノを眺めていた俺に気づいたのか、視線だけでソノがなに?と聞いてきた。
「……ん、何でもない。ただ、嬉しくてさ。ここのとこ、ソノと一緒になんかするってあんまなかったから」
渡されたソフトクリームのうち、半分カフェオレ味の方をソノに渡す。
「……ん。ありがとな、航太。なんだかんだ、お前には負担掛けてるとは思ってた」
「俺の方がずっとソノに迷惑かけてたから、ソノの世話できるのは俺としては嬉しいけどさ。やっぱ、最近は勉強集中してたから邪魔したくなかったんだ。俺だって、お前には行きたい大学行ってほしいし」
そこまで喋った辺りで、ソノがハッとして時計を見、俺の手を掴んで走りだした。
「……え、何、あ……そか、出発時刻!」
「急げ航太、先生怒ってるぞ、あれ!」
その後、急いでバスに残り込んだものの、結局出発時刻を10分は遅れたせいで俺達は先生に散々叱られしゅんとなった。
それでも、絞りたてのソフトクリームは十分美味しかったけど。
「あー……、ようやく着いた!バスって結構体バッキバキになるな」
ぞろぞろとみんなでバスを降りて、とりあえず腕を伸ばしたり肩を回したりしてほぐす。
先生の注意は定時にはこの入り口に戻ってくるように、って事で、俺とソノの遅刻原因組には特に強めに時間厳守って言われた。
それでいつものメンツで、今はまっすぐジェットコースターに向かっている。
本当は俺が先生の小言が終わった瞬間にダッシュしかけたんだけど、しっかり手を繋いで捕まえていたソノに止められ、そのままみんなでのんびり移動することになった。
「すんげー高くてすんげ―怖いっていうから楽しみにしてたんだよなー。 そういや、みんな、ジェットコースター平気?」
「たぶん?あんま乗ったことねえけど」
「……俺も。遊園地自体初めて来る」
藤谷がなんとなく首を傾ぐのに、ハヤシもためらい気味に頷く。
モモは別に平気みたいで、ハヤシの背を励ますように軽く撫でていた。
だとすると後は……。
「じゃあ、どうする……? ソノは、ベンチで待っててもいいぞ」
「……みんな乗るなら乗るに決まってるだろ」
うん、ソノならそういうだろうって思ってたけど、代わりに俺と繋いでる方の手にギュッと力がこもってちょっと痛い。
でも、ちょっと頼られてるみたいで嬉しくて、俺はニコニコしながら列に並んだ。
「ソノ……やっぱ止めとく?なんかプルプルしてない?」
俺の隣で安全バーをが下りた辺りからソノの様子がおかしいので、完全に固定されてからソノに軽く手を差し出す。
とたんに、溺れてるヒトが掴むワラみたいな勢いで、がしっとわし掴まれた。
「大丈夫だけど……悪い、航太、とりあえず下りるまで握らせてくれ…………」
「う、うん……」
俺が様子を伺っているうちにジェットコースターが発射して一気にソノの顔が白くなった。
すんごい高い所から見える富士山とか周囲の景色とかは凄いキレイだったけど、ギュウギュウに握りしめられる手の痛みとソノの様子に気を取られて、とにかくすんごい急降下とぶん回されたことくらいしか下りた時の俺は覚えていなかった。
行先が決まった時からワクワクソワソワしてたけど、当日はもう楽しみ過ぎて早起きしすぎて、うちの親にも隣のソノにも怒られた。
「……お前、着く前から体力使ってどうするんだよ……。バスの中は寝とけよ、せっかくの遊園地で絶対バテるぞ」
昨日寝るギリッギリまで勉強してたらしいソノも今日は赤本も参考書もノートもペンも置いて、遊園地で遊ぶ一択になってくれたのに、ただでさえ高い俺のテンションは更にブチ上がる。
「だって、この時期に遊園地だよ!遊園地!テンション上げないと損じゃん!」
「あー、わかったわかった、みんな寝てるからバスの中は静かにしようなー」
朝早すぎたせいか、クラスのみんなはもちろん、モモもハヤシも藤谷もそろってぐっすり寝落ちている。
そう言えばソノもちょっと眠そうで、俺はなんとなくひじ掛けに置かれたソノの指をそろりと握った。
それで気づいたのか、重たそうな瞼を持ち上げて、ソノが俺を見て微笑んでくれる。
「……ごめん、ソノも眠いよな。……俺が昨日結構遅くまで通話してたし……。今日も朝一で突撃したし……」
自分で言ってて、上げ過ぎたテンションの反動みたいに沈んできた俺の頭をソノが柔らかく撫でてくれた。
「ほらみろ、はしゃぎすぎなんだよ、お前は。……とりあえず、次の休憩着いたら起こすから寝てろ」
そのまま、やさしい手でポンポンと頭を撫でてくれて、問答無用で俺の頭を自分の肩に引き寄せる。
普段はソノとの間でも一枚張ってる緊張感みたいなものが、それですっかり溶けてしまって、俺はそのままソノにくっついて眠りに落ちた。
「……どうして起こしてくれなかったんだよ、ソノ―!」
「起こしたろ、トイレいける時間あって良かったな」
ギャン泣きする俺を一瞥してのんきに飲み物を買うソノは、確かにサービスエリアにバスが付いた瞬間から起こしてはくれていたらしい。
ほぼほぼ、ソノに抱き着く形で寝ていた俺のせいで、本人もなかなか外に出れなかったみたいだから確かにソノのせいじゃないんだが。
「……サービスエリア、探検したかった……」
「……航太くん、まだゴネてるの? さっき、そこでしぼりたて牛乳ソフトクリーム売ってたけど、そろそろ時間になっちゃうよ?」
見かねたのか、ハヤシとオヤツか何かを買ってきたらしいモモが通りかかって、ソノと目を合わせてからとっておき情報を教えてくれた。
「……買う! 行くぞ、ソノ!俺が奢る!」
「え、俺別にいらな……しょうがねーな、もー」
俺が引きずるようにしてソノを連れてソフトクリームのキッチンカーにばく進すると、俺達より一足先に藤谷がソフトクリームを買っていた。あと既に土産を大量購入してるっぽい。
「……え、おま、もう土産そんな買ったの?遊園地の分は?」
「え、そりゃ着いたら買うけど。土産は一期一会だからいいの見つけたら即買えって、俺の親類が言ってたからさ。 ……しかし、ソノはずっと航太のお守で大変だなー。この構図すっげー久々に見た気するわ」
「うっせ、ソノも息抜きになるからいいんだよ! ……あ、ソフトクリーム2つください!しぼりたて牛乳のやつ!あ、待って、一個半分カフェオレのにしてください!」
「……藤谷もそろそろバス乗らないとおいてかれるぞ、俺達もこれ買ったら即戻る」
「……あ、いけね。 ン、もし遅れそうなら先生に言っとくわ、お先」
悠々と藤谷がバスに戻っていく後ろ姿を見ながら、ソノが時計を気にする様子に俺もちょっとソワソワしてきた。
先に支払いだけ済ませてしまって、なんとなくソノを眺めていた俺に気づいたのか、視線だけでソノがなに?と聞いてきた。
「……ん、何でもない。ただ、嬉しくてさ。ここのとこ、ソノと一緒になんかするってあんまなかったから」
渡されたソフトクリームのうち、半分カフェオレ味の方をソノに渡す。
「……ん。ありがとな、航太。なんだかんだ、お前には負担掛けてるとは思ってた」
「俺の方がずっとソノに迷惑かけてたから、ソノの世話できるのは俺としては嬉しいけどさ。やっぱ、最近は勉強集中してたから邪魔したくなかったんだ。俺だって、お前には行きたい大学行ってほしいし」
そこまで喋った辺りで、ソノがハッとして時計を見、俺の手を掴んで走りだした。
「……え、何、あ……そか、出発時刻!」
「急げ航太、先生怒ってるぞ、あれ!」
その後、急いでバスに残り込んだものの、結局出発時刻を10分は遅れたせいで俺達は先生に散々叱られしゅんとなった。
それでも、絞りたてのソフトクリームは十分美味しかったけど。
「あー……、ようやく着いた!バスって結構体バッキバキになるな」
ぞろぞろとみんなでバスを降りて、とりあえず腕を伸ばしたり肩を回したりしてほぐす。
先生の注意は定時にはこの入り口に戻ってくるように、って事で、俺とソノの遅刻原因組には特に強めに時間厳守って言われた。
それでいつものメンツで、今はまっすぐジェットコースターに向かっている。
本当は俺が先生の小言が終わった瞬間にダッシュしかけたんだけど、しっかり手を繋いで捕まえていたソノに止められ、そのままみんなでのんびり移動することになった。
「すんげー高くてすんげ―怖いっていうから楽しみにしてたんだよなー。 そういや、みんな、ジェットコースター平気?」
「たぶん?あんま乗ったことねえけど」
「……俺も。遊園地自体初めて来る」
藤谷がなんとなく首を傾ぐのに、ハヤシもためらい気味に頷く。
モモは別に平気みたいで、ハヤシの背を励ますように軽く撫でていた。
だとすると後は……。
「じゃあ、どうする……? ソノは、ベンチで待っててもいいぞ」
「……みんな乗るなら乗るに決まってるだろ」
うん、ソノならそういうだろうって思ってたけど、代わりに俺と繋いでる方の手にギュッと力がこもってちょっと痛い。
でも、ちょっと頼られてるみたいで嬉しくて、俺はニコニコしながら列に並んだ。
「ソノ……やっぱ止めとく?なんかプルプルしてない?」
俺の隣で安全バーをが下りた辺りからソノの様子がおかしいので、完全に固定されてからソノに軽く手を差し出す。
とたんに、溺れてるヒトが掴むワラみたいな勢いで、がしっとわし掴まれた。
「大丈夫だけど……悪い、航太、とりあえず下りるまで握らせてくれ…………」
「う、うん……」
俺が様子を伺っているうちにジェットコースターが発射して一気にソノの顔が白くなった。
すんごい高い所から見える富士山とか周囲の景色とかは凄いキレイだったけど、ギュウギュウに握りしめられる手の痛みとソノの様子に気を取られて、とにかくすんごい急降下とぶん回されたことくらいしか下りた時の俺は覚えていなかった。
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