蛍火

真田晃

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39. *

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……はぁ、はぁ、はぁ、

怒りに満ちる声。
目は見開かれ、肩が怒りでわなわなと震えている。

「僕の帰りを健気に待ち侘び、疲れて帰ってきた僕を、可愛い笑顔で迎えて。一晩中僕に愛され、君も嬉しそうにそれに答え……そして、僕の愛に溺れていく。
……そういう関係になったんだよ、僕達は──!」
「……」

何の反応も示さない白川に、カッとなったんだろう。白川の両膝の裏に手を掛け、乱暴に持ち上げると、容赦なく白濁液が漏れる後孔に支配欲をぶち込む。

「一体、何が不服なんだ!
こんなに愛しているのに、愛してるのに、愛してるのに……!!」
「……」

ゆさゆさと、大きく揺れる身体。
持ち上げ肩に掛けた白川の足を下ろした両手が、白川の細い首に掛かる。

「……そんなに死にたいなら、殺してやるっ!
殺して……全部、僕のものにしてやる──!!」


──止めろ!


狂気にも似た行為。
それを止める事のできない、無力な僕。
情けない程動けなくて、悔しくて……涙が次々と溢れて止まらない。


やめろ、やめろ、やめろ……っ、!


もう、止めてくれ──!!




……ふわ……


黄緑色の蛍火が、ひとつ。

ふたつ、みっつ……


ふわりと舞い上がり、幾つもの幻想的な光を放つ。

それを浴びた白川の身体のラインが、黄緑色に光り……風もないのに揺らめいた毛先から、銀色へと変わっていく。


──瞬間。
白川を犯しながら、首を絞める教師の顔が変わり……現在の姿へと変貌していく。



「──!」


え……

息が、止まる。


そこにいたのは……紛れもなく、見慣れた人物。

殺意と憎しみの籠もったその形相は……今まで、見た事がない。
想像すら、した事なんて……ない。


「……」


……どう、して……

どうして、先生が………こんな……



言葉を失い、全身から力が抜け落ちる。
床にぺたんと尻をつき、茫然自失となった僕は……只の抜け殻と化す。


ズッ、ズッ、ズッ、ズッ……

揺れる視界の中。
透明なアクリル板のような膜の向こうに見えたのは──
僕の目の前で、白川を犯しながら首を絞め、絶頂に顔を歪めながら頬を紅潮させた……


──僕の尊敬する、溝口先生。




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