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14.
しおりを挟む「……え」
信じられないとばかりに、半歩下がる山口。必然的に、麻生の腕から両手が離される。
ゆっくりと、麻生から僕へと向けられる、視線。
その眼光は嫉ましさと攻撃を含み、刺すように鋭い。
「……」
湿気を含んだ生温かい空気。
さわさわと、木々の葉が擦れる音。揺れる提灯。
地上にまで届いた風が、麻生さんの横髪を揺らした後、僕の頬を不気味に撫でる。
「………ち、違うわよっ!!」
ピシャリと言い切る、麻生の叫び声。
その大声と、明らかな拒絶に驚きながらも、真っ直ぐ麻生さんを見る。……瞬きもせず。
だけど、それすら嫌だったんだろう。
気まずそうに視線を泳がせた後、麻生さんが顔を伏せ──
「私は、……丸山くんも、白川くんも、どっちも好きじゃないから……!」
タッ……
そう言い残して、走り去る麻生。
外灯の殆どない暗闇へと、自ら飛び込んでいくかのように。
「……」
その後ろ姿を──長田は勿論、揶揄っていた婦人組の三人も、手を離してしまった山口も。勿論、僕も。
追い掛けられず……その場に立ち尽くしていた。
ミーンミンミン……
それから、一週間が経ち
夏祭り本番の日を迎えた。
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