蛍火

真田晃

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13.

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「……あれ。さっきまで、白川くんいたよね」
「うん。いたいた!」
「……もう、帰っちゃったのかなぁ」


解散後。いつものメンバー──麻生と山口、そして婦人組の三人が集まって、井戸端会議を始めていた。

「……なんか、雰囲気違ってたよねぇ~!」
「うん。お洒落だし、いい感じだったよね」
「ねー!」

「──えっ、俺の事?!」

いつもの如く、婦人組が話に花を咲かせていると、興味を示した長田が千明を引き連れて混じる。

「違いますよー!」
「最近転校してきた、白川くんの事です」
「背が低くて、女子より細くて、こ~んな小っちゃい顔してて……」
「モデルみたいにすっごい綺麗で。……飛び抜けて、美人さんなんです」
「……美人?!」
「はい。もう、すっごい美人です!」

彼女達の言葉に、長田が食いつく。
チラッと、千明を横目で確認しながら。

「……へぇ。どんな子なの?」
「えっと、ですね。何考えてるか解らなくて、近寄りがたいんですけど……」
「ミステリアスな雰囲気が、逆にいいなって」
「──解る! 私も、さっきそう思った!!」

キャーッ、と一斉に、婦人組がお互いの手を叩いて燥ぐ。

「……確かに格好良かったよね。紗栄子も、そう思うでしょ?」

そんな三人を眺めていた山口が、腕を絡ませながら、麻生の顔を覗き込む。窪塚と同じ、探るような目付きで。
それに気付いた麻生は、困惑したように笑顔を取り繕った後、泳がせた視線を真っ直ぐ此方に向けた。


「……うん、そうだね」


ドクンッ──

少しだけ、はにかんだ声。
向けられた視線が、もし僕を捉えているのだとしたら……


「やっぱ、紗栄ちゃんもそう思う?」
「格好いいよねぇー!」
「……って、あれあれぇ? 紗栄ちゃんの顔、真っ赤になってなぁい?!」

麻生の台詞や態度に反応した三人が、麻生を取り囲んでキャアキャアと揶揄う。


「──!!」

バッ、
慌てて頬を、両手で隠す。

「……そ、そんなんじゃ……」
「嘘だぁ。ちゃあーんと顔に書いてあったの、見たんだからねぇ~!!」
「どれどれ」
「見せてぇー!!」

逃れるように顔を伏せるものの、執拗に麻生の顔を覗き込む三人は、次第にヒートアップしていき……


「てゆーか。麻生さんが狙ってたのって、……透じゃねーの?!」


その空気を読まない長田の放った一言で、しん、と静まり返る。

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