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第三章 パパ
65.交友関係
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* * *
AV出演の話が流れてから、悪戯に過ぎ去ってゆく日常。
貢ぐには全然足りないお金。ただホストクラブに行くだけでは、きっと祐輔くんに迷惑が掛かってしまう……
逢いたい。笑顔が見たい。声が聞きたい。直接逢って、御礼がしたい。
でも、どうやって手っ取り早くお金を稼げば良いのか、全然解らない。
一瞬過ったのは、ホストクラブにいたキャバクラ嬢──だけど、こんな私が出来るような気が全くしない。
それなら、他に何が……思考を巡らせてみるものの、今の私に出来る仕事が思い付かない。
出会い系サイトを覗いてみても、提示される金額は本当に安い。
これが一般的なのではなく、もしかしたら私だけのような気もしてきた。例えば一回五万の子がいたとして……私は、五人に身体を売らなければ、その金額を超える事は出来ない。
だけどもし、五万の子が五人とやったなら……
容姿や年齢で、価値が上下するのは仕方がないのかもしれない。それを含めたウリなのだから。
だから、こんな私を買いたいと思って貰えるだけ、有難いのかもしれない。
「……」
なんだろう。……疲れた。
稼げない現実も。価値のない自分も。
安藤先輩の取り巻き達による、陰湿な苛めも。安藤先輩自身も。
私に関わる全てから、少し離れたい。解放されたい。
もっと楽に、息がしたい──
「──!」
突然、携帯が震える。
私を思考の海から引っ張り上げ、現実の世界へと連れ戻す。
我に返った私はポケットから取り出し、光る画面を確認する。
──○×サイトから、一件の新しいメッセージがあります
画面の中央をハイジャックする、新着のお知らせ。
無機質な羅列文字。
期待せずにタップすると、直ぐに出会い系サイトのメッセージ欄に繋がった。
『三、ホ別で』──たったそれだけの、不躾な文字。
それでも三万円という条件は、美味しい方。きっと少し前の私だったら、後先考えずに飛び付いていた。
……だけど、今は違う。たった三万円。紙切れ三枚。
祐輔くんを後押しするには全然足りない。
高級なお酒を入れたり、派手なシャンパンタワーをしたり、アフターしたり……
太客や黒服に認められるには、それ位出来ないと駄目なのかもしれないのに。
「……」
でも、この容姿で金額交渉なんて……できる訳ない。
選択肢は二つ。
そのどちらかを選ぶなんて……今の私にその権限は、無いに等しい。
「……」
胸の奥がチクンと痛む。
好きで身体を売っている訳じゃない。その思いが、私の足を酷く重くさせる。
稼ぎたいという思いとの狭間で、どうしようもない中途半端な気持ちが揺れる。
──祐輔くんに逢いたい。
それならもう、答えなんか決まっているようなものなのに……
ふと、メッセージの上部にある、相手のHNに目が止まる。
『はかせ』──何処かで、見た覚えのある名前……
……あ。
思い出した。
返事に躊躇した私に、これからさせてくれるなら三万出すと、最初よりも高い金額を提示してきた人だ。
AV出演の話が流れてから、悪戯に過ぎ去ってゆく日常。
貢ぐには全然足りないお金。ただホストクラブに行くだけでは、きっと祐輔くんに迷惑が掛かってしまう……
逢いたい。笑顔が見たい。声が聞きたい。直接逢って、御礼がしたい。
でも、どうやって手っ取り早くお金を稼げば良いのか、全然解らない。
一瞬過ったのは、ホストクラブにいたキャバクラ嬢──だけど、こんな私が出来るような気が全くしない。
それなら、他に何が……思考を巡らせてみるものの、今の私に出来る仕事が思い付かない。
出会い系サイトを覗いてみても、提示される金額は本当に安い。
これが一般的なのではなく、もしかしたら私だけのような気もしてきた。例えば一回五万の子がいたとして……私は、五人に身体を売らなければ、その金額を超える事は出来ない。
だけどもし、五万の子が五人とやったなら……
容姿や年齢で、価値が上下するのは仕方がないのかもしれない。それを含めたウリなのだから。
だから、こんな私を買いたいと思って貰えるだけ、有難いのかもしれない。
「……」
なんだろう。……疲れた。
稼げない現実も。価値のない自分も。
安藤先輩の取り巻き達による、陰湿な苛めも。安藤先輩自身も。
私に関わる全てから、少し離れたい。解放されたい。
もっと楽に、息がしたい──
「──!」
突然、携帯が震える。
私を思考の海から引っ張り上げ、現実の世界へと連れ戻す。
我に返った私はポケットから取り出し、光る画面を確認する。
──○×サイトから、一件の新しいメッセージがあります
画面の中央をハイジャックする、新着のお知らせ。
無機質な羅列文字。
期待せずにタップすると、直ぐに出会い系サイトのメッセージ欄に繋がった。
『三、ホ別で』──たったそれだけの、不躾な文字。
それでも三万円という条件は、美味しい方。きっと少し前の私だったら、後先考えずに飛び付いていた。
……だけど、今は違う。たった三万円。紙切れ三枚。
祐輔くんを後押しするには全然足りない。
高級なお酒を入れたり、派手なシャンパンタワーをしたり、アフターしたり……
太客や黒服に認められるには、それ位出来ないと駄目なのかもしれないのに。
「……」
でも、この容姿で金額交渉なんて……できる訳ない。
選択肢は二つ。
そのどちらかを選ぶなんて……今の私にその権限は、無いに等しい。
「……」
胸の奥がチクンと痛む。
好きで身体を売っている訳じゃない。その思いが、私の足を酷く重くさせる。
稼ぎたいという思いとの狭間で、どうしようもない中途半端な気持ちが揺れる。
──祐輔くんに逢いたい。
それならもう、答えなんか決まっているようなものなのに……
ふと、メッセージの上部にある、相手のHNに目が止まる。
『はかせ』──何処かで、見た覚えのある名前……
……あ。
思い出した。
返事に躊躇した私に、これからさせてくれるなら三万出すと、最初よりも高い金額を提示してきた人だ。
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