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第二章 人と、金と…
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しおりを挟むあと少しで日付が変わる──
風邪で急遽バイトを休んでしまった為、代わりに出てくれた人とシフト交換をした事で、帰りが随分と遅くなってしまった。
当然、終電には間に合わず。タクシーを拾って帰る選択肢しか思い浮かばない。
だけど、今の私はそのタクシー代すら惜しくて。このまま歩いて帰ろうかと、考え倦ねながら帰路につく。
「……!」
住宅街の中にある公園──花壇やベンチ、運動トラックや雑木林等がある、割と広めの森林公園。
外灯の多い園内の遊歩道を歩いていれば、余り長くない藤棚トンネルの向こうから、サラリーマンが気怠そうに此方へ向かって歩いてきていた。
こんな時間に……?
身の危険を感じ、咄嗟に脇道に逸れて隠れる。
「……」
草臥れたスーツ姿の男性。抱っこ紐をし、缶ビール片手に赤ん坊をあやしている。
「……」
その光景は異様で。見開いた二つの瞳に、克明に焼き付く。
……そういう、家庭環境なのだろう。
奥さんに押し付けられて。或いは、シングルファザーで。
前向き抱っこをされた赤ちゃんは、目をぱっちりと開けながらも、まるで人形のように無表情で。両手両足が、だらんとしている。
一体、どんな気持ちでいるんだろう。こんな父親に、適当にあしらわれていたとしても……温もりを感じて安心しているんだろうか。
それとも。その空気ごと敏感に感じ取って、全てを諦め、感情を手放してしまったのだろうか。
私は……
施設に預けられる前、私はどんな気持ちでいたんだろう。
家族写真──あれをどんな気持ちで、両親は撮影したんだろう。
心の奥に広がる、深い闇。
繫がりや絆なんて、感じた事がない。
愛されたという実感も……ない。
私は両親に、本当に望まれて産まれてきたんだろうか……
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