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第一章 初恋の人
36. *
しおりを挟む駅裏のホテル。
グレードの落ちる、安っぽい外観。
高い金額を提示してくる割りには、ホテルにはお金を掛けたくない……らしい。
内装も家具も時代を感じる。辛気臭さ。
お風呂も、今までに比べると狭いし、古くて安いビジネスホテル並みに劣る。
何だか、凄く嫌な気分。
普通のカップルだったら、きっと興醒めして行為どころじゃないかも……
「……」
言葉なんて、ない。
ただベッドに沈められて、愛撫もそこそこに挿れられる。
ギシギシとベッドの軋む音。
今までの相手と比べれば、若いし顔も身体もいい方だとは思う。……けど、終始私を突き刺す様なこの視線……
「そんなに、気持ち良くない……?」
「……え……」
「そんなんで、よくウリやれてるね」
──ズンッ
わざとらしく、深く腰を打ち付けてくる。
「こっちは金払うんだからさ。演技でも何でも、少しは善がったらどうなの」
「……」
それは、そうかもしれない。
でも……
「声、出ないの……?」
「……」
「じゃあ、出せるように、手伝ってやろうか……?」
「──!」
口の片端を持ち上げ、男が乱暴に私のバスローブの前を左右に開いた。
露わになった、二つの膨らみ。
そのピンク色の頂に、いきなり貪りつく。
「……っやめ、……」
「お、いいねぇ。……こういうプレイも好きだよ」
嫌悪で身体中に悪寒が走る。
舐められ、吸われ、両手で揉みしだかれ……
濡れそぼつそこが、気持ち悪い。
……やだ……
止めて……イヤ……
蘇る、遠い記憶。
ただただ気持ち悪いのを、必死で堪えてた──11歳の、私……
「………あーあ。余計、声出なくなっちゃったか。
まぁいいや。怯えてる娘を犯すのって、強姦ぽくて面白いし」
「……」
片手で私の顎を持ち上げ、喉元に埋められる男の唇。
チュ、チュ、……と何度もリップ音がし、熱い舌が這わされる。
そうされながら、右胸の膨らみを男の手のひらが鷲掴み、下から上へと大きく強く揉みしだく。
「……」
嫌だ。……怖い。
やだ……止めて……
止めて、許して……やめて……
目の前にいるのは、見知らぬ男なのに。
恐怖の影だけは……あの時と同じ。
心と体を、切り離さなくちゃ……
早く、
早く……
……壊れる。壊される。
ズッズッズッ……
静かに見下ろす、酷く冷めた目。
こんな援交は、望んでない。
──止まらない、震え。痺れる指先。
男の背後に見える天井が揺れ、涙の膜でぐにゃりと歪む。
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