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第一章 初恋の人
4.再会
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* * *
「……ねぇ、川口さん」
それは、三週間程前──
大学の講義室に入るなり、大山美紀子に声を掛けられた。
肩まで長い、艶やかなストレートの黒髪。ナチュラルメイク。清楚系の服を身に纏い、一見育ちの良いお嬢様といった印象の彼女。
そんな大山とは、同じサークルメンバーってだけで、一緒に連んでランチをするような仲ではない。
「今夜、予定ある?」
「……」
眉尻を下げ、上目遣いで尋ねてくる。猫なで声の時は、決まって好ましくない言葉が続く。
「ちょっとだけ、付き合ってくれない? 川口さんにしか頼めないのぉ。……ね、ね?」
軽く握った両手を顎の前で合わせ、首を少し傾げながら瞳を潤ませる。まるで、男に媚びているかのよう。
「……」
特定の友達がいない私は、彼女にとって都合のいい人間。
以前、何度か合コンに引っ張り出された事があったけど……結局私は単なる人数合わせであり、彼女の引き立て役でもあって。自己紹介さえ終われば、後は適当にあしらわれて、端に追いやられていた。
「……ほらぁ、何事も経験……でしょぉ?」
反応のない私の両手を取って包み込み、潤んだ瞳をわざとらしくパチパチとさせて、強引に引っ張り込もうとする。
「……うん」
いいよ、別に──
確かに私は、貴女を通してしか、他の人と同じ世界に触れる事ができないから……
「ほんとぉ?……嬉しい!」
パアァ、と華が咲いたような笑顔。周りに振り撒く幸せオーラ。
私とは、……全然違う人種。
「……じゃあ、また後でね!」
いつもの如く、去り際は早くて。
私に軽く手を振った後、私とは一線を引くように、友達グループの中に混ざっていった。
「……ねぇ、川口さん」
それは、三週間程前──
大学の講義室に入るなり、大山美紀子に声を掛けられた。
肩まで長い、艶やかなストレートの黒髪。ナチュラルメイク。清楚系の服を身に纏い、一見育ちの良いお嬢様といった印象の彼女。
そんな大山とは、同じサークルメンバーってだけで、一緒に連んでランチをするような仲ではない。
「今夜、予定ある?」
「……」
眉尻を下げ、上目遣いで尋ねてくる。猫なで声の時は、決まって好ましくない言葉が続く。
「ちょっとだけ、付き合ってくれない? 川口さんにしか頼めないのぉ。……ね、ね?」
軽く握った両手を顎の前で合わせ、首を少し傾げながら瞳を潤ませる。まるで、男に媚びているかのよう。
「……」
特定の友達がいない私は、彼女にとって都合のいい人間。
以前、何度か合コンに引っ張り出された事があったけど……結局私は単なる人数合わせであり、彼女の引き立て役でもあって。自己紹介さえ終われば、後は適当にあしらわれて、端に追いやられていた。
「……ほらぁ、何事も経験……でしょぉ?」
反応のない私の両手を取って包み込み、潤んだ瞳をわざとらしくパチパチとさせて、強引に引っ張り込もうとする。
「……うん」
いいよ、別に──
確かに私は、貴女を通してしか、他の人と同じ世界に触れる事ができないから……
「ほんとぉ?……嬉しい!」
パアァ、と華が咲いたような笑顔。周りに振り撒く幸せオーラ。
私とは、……全然違う人種。
「……じゃあ、また後でね!」
いつもの如く、去り際は早くて。
私に軽く手を振った後、私とは一線を引くように、友達グループの中に混ざっていった。
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