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……竜一が……僕を……?


『愛してる』──電話越しに聞いたあの言葉は、不純なものなんかじゃなかった。

アゲハの弟だからじゃない。
竜一は最初から、僕の事を──


「お前は覚えてねぇかもしれねぇが──まだ中学ガキん頃、野郎数人で工藤ん家に行く羽目になった時だ。気乗りしなかった俺は、早々に抜けようと考えていたが、奴の部屋に人数分の茶を持って入ってきたお前を見て、……な」
「……」
「どうにかお前との接点を持ちたくてよ。工藤を介してお前に近付こうとしたが、拒まれちまって。キメぇ話だが、せめて俺が大切にしてるピアスだけでもお前に持ってて欲しくてな。工藤に頼んだんだ。
……それを奴は、てめぇの耳に付けて、何食わぬ顔で俺の目の前に現れやがった!」


……え……

そんなの、知らない……


目を大きく見開いたまま、首を横に振る。

「だろうな。あれは俺への当て付けだ。──いや、宣戦布告だ。
だからよ。俺は、奴が一番傷つくやり方で、報復してやろうと決めたんだよ」

竜一の視線が離れ、睨みつけるように真っ直ぐ前を見据える。

「……」

あの日──僕の家の前に立って、玄関先を睨みつけていたのは、その決意を固めていたから……?

「お前を傷付けちまう、ってのは解ってた。何度も頭の片隅にチラついてたからな。……けど、かなりドタマにキててよ。どうせ手に入らねぇなら、お前らの異常な関係をぶっ壊してやろうと思ったんだよ」
「……」
「でも、お前……工藤に何も言わねぇし。俺を拒みもしねぇ。
それに、守りてぇモンがあるって言ったお前の台詞も、妙に引っ掛かっちまってよ」
「……」

……ああ……
だから、背後から抱き締められた瞬間──大きなものに包み込まれるような温かさと、心と心が触れ合うような心地良さを感じたんだ。

ずっと欲しいと思っていた温もり──僕は、それを守りたかった。
アゲハなんかに、これ以上奪われたくなかった。

だから、わざと見せ付けて──


「アゲハの傷付く顔を、見たかったんだ……」


そう呟いた後、ふと我に返って竜一を見上げる。


「………ふっ、」

口角を持ち上げた竜一が、視線を此方に向ける。

「なんだ、そりゃ……」

その眼は、少し呆れたような笑みを含み、僕を愛おしむように見つめた。








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