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「ちょっとちょっと……!」


その時、僕を囲む男達の向こうから、彼らを制する声が聞こえた。

「朝から何やってんの? 近所からクレーム来てるよ」

驚いた男達が振り返る。つられて僕も視線を向ければ、そこにいたのは一人の警察官。
大柄でガタイも良く、体育会系の顔立ちをしていた。

「……チッ」
「ども、」

訝しげな顔をし、軽く頭を下げ、散り散りに去って行くジャーナリスト達。

「……大丈夫?」

腰に手を当て、その後ろ姿を見送った警察官が僕に尋ねる。

「若葉さんに、君の事を頼まれていたんだよ。昨日の事もあって、心配だからってね」
「……」

昨日──じゃあこの人が、あの時暴漢から助けてくれた、警察官……
連行する時、擦れ違った若葉に軽く頭を下げた光景が思い出される。

「……ああ。若葉さんとは、友達というか。その……」

じっと相手の顔を見つめていたせいか。言い訳めいた事を口にしながら目を伏せ、照れたように頬を赤く染める。

「……」

堅い職種の人が……しかも、筋肉隆々で強そうな人が、色気のある若葉の虜になっているのかと思うと、何だか滑稽に映る。

「まぁ、あれだ。また何かあったら、遠慮なく言ってくれ。
俺は、駅前の派出所にいる岩瀬だ」
「……はい」

羞恥を隠すように咳払いをした岩瀨に、頭を軽く下げた。





ジャーナリストの襲撃により、登校する気力が完全に削がれてしまう。

テーブルに置かれたリモコンを拾ってテレビを付け、静かすぎる空間に音を響かせる。朝の情報番組。アナウンサーの女性が、固い表情で原稿を読み上げる。
ふと、画面右上にあるテロップを見れば、そこには──

「……!」

『被害者は、黒咲アゲハの弟』の文字。


映像がモザイク掛かった校舎に切り替わり、足元だけを映した学生にインタビューする様子が映る。


──『被害者Fについて』

『あー、殆ど(学校)来ない。
来たと思ったら、色んな所にキスマークついてて、マジ受ける』

『少し前に、彼氏っぽい人と校門の前まで一緒に来てた。
その時は毎日、人目を気にせず、ぎゅーって抱き締め合ってて。……え? うん、ゲイ』

『(顔は)可愛い。女の子みたい。
でも、俺は……そういうシュミはないから』


「……」

……え……
なんで、被害者である僕が……晒し者になってるの?


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