白くて細い、項

真田晃

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「………」

瑠風がゲイで悩んでいたのは、解った。それをどうこう言うつもりはねぇ。
けど……

「……つまり俺は、当て馬にされた……って事だよな」

借りたこの服は、最初から瑠風らしくないとは思っていた。
だけど、これを俺に着せて夕飯まで出すって事は……やっぱそういう事だろ。
寂しさの埋め合わせだか、従兄弟の身代わりだか何だか知らねぇけど……とにかく俺は、瑠風に利用されたって訳だ。


「……違うよっ、!」


突然響く、瑠風の大きな声。
強い意思の籠められたその声が、燻っていた俺の心を貫く。

「違う……全然違う。
……さっき恭平が、家に来いって言ってくれた時……本当は、嬉しかった。
凄く、嬉しかったんだよ」
「……」
「……でも、こんな中途半端なまま、恭平の傍に行ったら……きっと辛くなる。
もし恭平が、女の子をアパートに連れ込んだり……彼女が、出来たりしたら──苦しいよ」
「……」
「……だって、僕……」

苦しそうに息をしながら、瑠風が懸命に声を絞り出す。
その様子を肩越しにチラリと盗み見れば、顔を伏せ、胸元を押さえていた。


「き、恭平の事が……、好き……だから」
「──っ、!」


はぁ……?!


驚いて……驚きすぎて、身体ごと瑠風の方へと向き直る。

「……」

伏せた瞳。小さく震える肩。
白く透き通った瑠風の肌が、綺麗な薄ピンク色に染まっていた。


「……好き、って……俺、を?」
「ん……」

こくん、と小さく縦に頭が揺れる。

「何でだよ。……お前、従兄弟が好きなんじゃねーの?」

再びこくん、と縦に小さく揺れると、俯いたままぽつりと呟く。


「………好き、だったよ。
恭平を、意識するまでは──」



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