2 / 19
2
しおりを挟む
†††
……白くて細い、項だな。
そんな事を思いながら、頬杖をつく。
それは、中学三年の初夏。
窓際一番後ろの特等席に座る俺の視界には、決まって前席にいる結城瑠風の後ろ姿が映り込んでいた。
少し長めの襟足から覗く項は、まるで女みたいに細くて長い。
……いや、細いのはそこだけじゃなくて。抱き締めたら骨まで折れてしまいそうな程、華奢に見える。
「……」
こう席が近いと、自然と喋るようになって仲良くなったりするもんなのに……結城とは、それが無い。
クラス全員を敵に回すつもりなのか。無口で無愛想で。住む世界が違うと言わんばかりに、周りとは一線を引いた態度を取っていた。……つまりは、お高く止まった『スカした野郎』。
それ故、結城と関わろうとする奴はいなかった。
しかし、よく見れば容姿端麗で。そのミステリアスな雰囲気から、一部の女子の間では人気があったらしい。
しかし別段興味の無かった俺は、取っつきにくい奴だな…位にしか感じていなかった。
変化があったのは、夏休みに入ってから。
少人数制の塾の夏期講習を受けに行った先に、結城がいた。
それも同室。しかも隣。
確か……千切った消しゴムをあげたんだっけ。
それがキッカケで、何となく話すようになって……気が付けば、一緒に受験勉強をする仲にまでなっていた。
丁度その頃だ。
結城の本命校が、俺と同じだと知ったのは。
「……え、動機? 不純だよ。由利と違って」
そう言って、少し照れたように笑う。
クールな印象だった結城の、人間らしい反応。それに、正直驚いたというか。安心したというか……
ああ、なんだ。結城もこんな風に笑うんだな、って。
「何だよそれ。教えろよ」
「……え……っとね。好きな人の傍に、いられるから……かな」
「ふぅーん。不純な動機、ねぇ……」
「……な、内緒だよ?!」
長い睫毛を伏せ、瑠風が頬を赤く染める。
「僕の好きな人。……5つ年上の、従兄弟なの。
もし合格したら、その人のアパートに居候させて貰える事になっててね……」
ぽつりぽつり……と、照れながら話し出す。
……白くて細い、項だな。
そんな事を思いながら、頬杖をつく。
それは、中学三年の初夏。
窓際一番後ろの特等席に座る俺の視界には、決まって前席にいる結城瑠風の後ろ姿が映り込んでいた。
少し長めの襟足から覗く項は、まるで女みたいに細くて長い。
……いや、細いのはそこだけじゃなくて。抱き締めたら骨まで折れてしまいそうな程、華奢に見える。
「……」
こう席が近いと、自然と喋るようになって仲良くなったりするもんなのに……結城とは、それが無い。
クラス全員を敵に回すつもりなのか。無口で無愛想で。住む世界が違うと言わんばかりに、周りとは一線を引いた態度を取っていた。……つまりは、お高く止まった『スカした野郎』。
それ故、結城と関わろうとする奴はいなかった。
しかし、よく見れば容姿端麗で。そのミステリアスな雰囲気から、一部の女子の間では人気があったらしい。
しかし別段興味の無かった俺は、取っつきにくい奴だな…位にしか感じていなかった。
変化があったのは、夏休みに入ってから。
少人数制の塾の夏期講習を受けに行った先に、結城がいた。
それも同室。しかも隣。
確か……千切った消しゴムをあげたんだっけ。
それがキッカケで、何となく話すようになって……気が付けば、一緒に受験勉強をする仲にまでなっていた。
丁度その頃だ。
結城の本命校が、俺と同じだと知ったのは。
「……え、動機? 不純だよ。由利と違って」
そう言って、少し照れたように笑う。
クールな印象だった結城の、人間らしい反応。それに、正直驚いたというか。安心したというか……
ああ、なんだ。結城もこんな風に笑うんだな、って。
「何だよそれ。教えろよ」
「……え……っとね。好きな人の傍に、いられるから……かな」
「ふぅーん。不純な動機、ねぇ……」
「……な、内緒だよ?!」
長い睫毛を伏せ、瑠風が頬を赤く染める。
「僕の好きな人。……5つ年上の、従兄弟なの。
もし合格したら、その人のアパートに居候させて貰える事になっててね……」
ぽつりぽつり……と、照れながら話し出す。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

なぜか大好きな親友に告白されました
結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。
ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる