153 / 199
菊地編
153.
しおりを挟むゴリッゴリッ……
痛めつけるような律動。
腹の奥で感じる、鈍い音と感触。
これは、性処理なんかじゃない。
支配する為の、暴力行為──
……ああ、死ぬ………死ぬんだ……
竜一でもない。ハイジでもない。
今日初めて会ったこの男に。
犯されながら……死ぬ……
今まで僕は、ろくな死に方なんてしないだろうと思ってた。
竜一との幸せな時間の中にいながらも、何処か現実離れしていて……不安な影に怯えていて……これは幻想なんだ、錯覚なんだと、何度も思い直した事もあった。
だからなのか……
何だか、しっくりくる。
こんな形で命を終わらせる事に。
──そうだ。母に首を絞められた時のような、あの感覚。
やりきれないけれど、逃れようのない運命に、身を任せてる感じ……
後孔の痛みが、次第に麻痺していく。
足裏や腕の内側がビリビリと微量な電気を流されたように痺れ、指先から感覚を失っていく。
意思とは違う。快感とも違う。
よく解らない感覚───陸に上がった魚のように、身体がビクンビクンと大きく跳ねる。凄く滑稽だな、なんて思ったり。
それを上から押さえつけられ、尚も僕の体を支配しようと……男に:内臓(はら)の奥へズンッ、と楔を打ち込まれる。
頭が鉛の様に重い。
後頭部からじわ…、と冷たい感覚が広がっていく。
意識が遠退きそうになりながらも、何とか抗い、瞼を押し上げた───その時だった。
「………っ!」
──ハイ、ジ……?
涙で歪む膜の向こうに見えたのは、逆光の中で鋭く光る、邪鬼を孕んだ双眸。
既に力が入らないし、意識は殆どぶっ飛んでいたけれど……僅かな力を振り絞って、何とか左手の指を動かす。
良かっ……た……
……生きて、て……
僕の首を絞める手に触れ、その先を辿って、伸ばせるだけ手を伸ばす。
愛しさが胸の奥から込み上げ、とろりと瞳が蕩けていくのを感じた。
ごめんね、ハイジ……
……ありがとう……
僕の事……愛して、くれて……
「……おま…え、」
首に掛かる指の力が弱まる。
その刹那──バチンッ、と電球が切れた時の如く真っ白に弾け、目の前が真っ暗になる。
ドクドクと脈打つ頭痛が一瞬激しくなったのを最後に……
僕の意識が、プツリと切れた───
10
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる