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ハイジ編
127.
しおりを挟む「………思い出したんだよ。
お前、俺と山本がアゲハの部屋に行った時、茶ァ出してたよな?」
「──!」
……え……
この人、もしかして……アゲハの友達………?!
『会ったことあるかな? 工藤くんの友人の、山本くんと辻田くんも、よく一緒に来ていたんだよ』──化学教師の優しげな声が、ふと脳裏を過る。
「……辻田、龍成……」
「おぅ、何だ」
その名前を口にすれば、再び龍成の口角が片方だけ吊り上がる。
「……姫。龍さんと、知り合い……だったんスか……?」
「……」
龍成から目を逸らせないでいると、戸惑いながらモルが小声で呟く。
その様子が可笑しかったんだろう。顎先を弄りながら、龍成が鼻で笑う。
「龍さん……っ、!」
その時、金髪にスカジャン姿の男が部屋に飛び込む。ベッドに腰掛けた龍成の傍に駆け寄り、腰を低く落として耳打ちする。
「………そうか」
スカジャンの男から受け取った何かを見つめ、ニヤリと口元を歪める。
「ハイジを探し出して、始末しろ」
「……!」
始末──龍成から飛び出した不穏な言葉が、未だにベッドから下りられずにいる僕の耳にまで届く。
「……」
「……ま、待って下さい! なんで、ハイジなんッスか……!」
その声は、モルにも届いていたんだろう。睨むだけで精一杯の僕に代わり、僕を庇うようにして身を乗り出し、龍成に食い付下がる。
…その手が、少しだけ震えているのが解った。
「噛み付いたんだよ。……この俺にな」
僕に投げて寄越したのは、スカジャン男の手から受け取った──『何か』。
それが僕の太腿辺りに当たり、ベッド下に落ちる。
視線を落として足元を見れば、そこに映っていたのは……
「……マジ……っすか……」
小さな袋に入った、乾燥大麻。
「それと、さくら。……お前、ハイジに寵愛されて、卸されてなくて良かったな。その件に関しては、俺もハイジに感謝してるぜ」
「……」
スカジャン男を片手で払い、ベッドから腰を上げる。
「実は最近、昔世話んなった人から、『工藤若葉に会わせろ』『抱かせろ』って……しつこく言われててな。
……ちょっくら会って、代わりに抱かれてきてくんねぇか……?」
「……」
「お前、若葉の息子なんだろ?」
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