125 / 242
ハイジ編
125.
しおりを挟む………コンクリート詰め、事件……?
モルを見上げたまま、小さく首を横に振る。
「今から、20年くらい前ッスかね。
コンクリート詰め事件は──当時、世間を震撼させた事件らしく、今でも『世紀の大事件』なんて言われてるんッスよ」
「……」
都内某所。
むしゃくしゃしていたという理由だけで、帰宅途中の女子高生──ハイジの母親を襲い、三度もレイプした翌日。ハイジの父親は、同級生である女子高生を拉致。
当時連んでいた、ガラの悪い仲間と用意したプレハブ小屋に閉じ込め、そこに女子高生を監禁。拘束し、飼育を始める。
性奴隷小屋──次々と男達を連れてきては、思い付く限りのプレイや憂さ晴らしの暴力行為の数々を、一ヶ月半に渡って楽しんでいたという。
「その光景は、反吐が出る程残酷で、悍ましかったそうッス……」
「……」
ゾクッ……と背筋が震える。
溜まり場で、太一らに輪姦された時の光景と、あの時の感覚が否応なしに引き出される。
……それが、一ヶ月半も続いた事を思うと……胸が苦しい。
「殆ど飲まず食わずの状態で、精神的にも肉体的にも衰弱しきっていた女子高生を、今度はどう処分するか困った連中は……ドラム缶とモルタルを用意して……」
……生きたまま、コンクリート詰めに──
「その主犯格が、ハイジの父親……だったんッス」
「───!」
『お前……何処までも、オレと似てンな』
──あの時……ハイジが本当に言いたかったのは、この事だったんだ……
“犯罪者”の息子、じゃない。
“凶悪犯罪者”の息子。
それ故の、差別。苛め。虐待。
──宿命。
そして、連鎖。
「それ知って、……ハイジは変わったんだと思うんス」
「……」
『……オレ、すげぇ……自分が怖ぇよ……』
ハイジが暴力に怯える理由は……自分が、父親のような残忍な人間に変わってしまう事。
人を平気で傷つけて、殺すことも厭わない……冷徹な精神に染まって、感覚が麻痺して……
『オレ、……さくらを失うかと……本気で……』
『……もう、傷つけたくねぇのに……』
僕から離れた本当の理由は、……そういう、事なんじゃ……
「……」
ケットを強く握り締める。
再び涙腺が緩んでしまい、顔を伏せ瞼を固く閉じる。
「……姫、大丈夫ッスか……?」
僕の事情を知らないモルが、丸めた僕の背中を擦ってくれる。
優しく、宥めるように……
「………モル」
濡れた睫毛を持ち上げモルを見上げると、心配そうに眉尻を下げたモルに向かって口を開く。
「変わってなんか、ない。
……ハイジは、ハイジだ……」
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる