シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

文字の大きさ
上 下
124 / 274
ハイジ編

124.

しおりを挟む

竜一なら、モルを手放したりなんかしないのに。

……もしかして、潜入してるとか……?
凌さんの時みたいに。


「……姫、シャワー浴びますか?」

通話を諦め、携帯をポケットに仕舞いながら近付くモルが、痛々しそうに僕を見下ろす。

「それとも、濡れタオルで身体を……」
「………モル」

徐に言葉を遮れば、モルの瞳が揺れた。

聞きたい事なら、まだある。
ハイジに連れてって貰ったクラブのVIPルームに、元チームのメンバーが揃う中……モルの姿が無かった。

竜一との関係をハイジに漏らした、お節介野郎って──

「……なっ、何スか?」
「僕の事、ハイジに言った……?」
「え?」

真っ直ぐモルを見上げていれば、目を丸くしたモルが真っ直ぐ僕を見返す。

「……僕が……竜一のオンナ、だって……」
「まさか! んな事言ったらヤベェ事になることぐらい、解ってますって!」

眉尻を下げ、モルが声を上げる。

「姫自身も危険かもしれないッスけど。俺も、ハイジの周りにいる奴らも……その腹いせに、殴り殺されるかもしれないんスから」
「……」

確かに……

殺すまではいかなくとも……無傷では、いられないかも。

それに……やっぱり、モルがそんな事をする筈ない。

「今のハイジは、チームやってた頃のハイジとは全然違うんスよ。
内部抗争があった頃に再会したんスけど……その時にはもう、“大友組の狂犬”って言われる程、ドス黒いオーラを放ってたッスから」


再会した時の事が思い出される。
何の躊躇もなく、ボルトグリッパーで作業員の頭をフルスイングしたハイジ。

確かに、別人のように変わっていたけど。以前と変わらない、優しいハイジも存在してたよ……

モルから視線を外して俯く。


「………聞いたんスよ。

龍成さん……あっ、ハイジの恩人で、大友組の若頭補佐をやってる方なんスけど。
その龍成さんから……ハイジが変わったのは、父親と再会してからだって」

「───!」


……ハイジの、父親……


『母親をレイプした男のDNAが、オレの体内なかで暴れ回ってんのかなって、思うんだよ』


ドクンッ……と大きな鼓動を打つ。


「そのハイジの父親なんスけど。

……コンクリート詰め事件って……姫、知ってますか?」





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

ヤクザに囚われて

BL
友達の借金のカタに売られてなんやかんやされちゃうお話です

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

BL団地妻on vacation

夕凪
BL
BL団地妻第二弾。 団地妻の芦屋夫夫が団地を飛び出し、南の島でチョメチョメしてるお話です。 頭を空っぽにして薄目で読むぐらいがちょうどいいお話だと思います。 なんでも許せる人向けです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

短編集

田原摩耶
BL
地雷ない人向け

神子様の捧げ物が降らす激雨の愛

岡本
BL
雨の神に愛された一族の神子様として生まれたルシュディー。ある日突然、彼は転生前の記憶を思い出す。 転生前の記憶を思い出したからか、それ以前の記憶を覚えておらず、困惑する。 それでも自由気ままに、転生前の趣味に没頭していると、国中に雨を降らすことが自分の仕事と判明し、雨乞いの儀式をすることに。 態度の悪い使用人との軋轢も絶えない日々の中、ルシュディーを神子として国に縛り付ける為、側室に迎え入れた第二王子とも仲は良くなくて――。 自分の事も、力の事も何も分からないルシュディーの、全てを捧げたお話。

処理中です...