シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

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ハイジ編

111.

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……違う。
違うよ……

そんな事、一度も……



視線で訴えるも、僕を捕らえたハイジは……それを許さない。


「……なぁ、さくら」


ガラス玉のような眼が尖り、ハイジの口角が片方だけ吊り上がる。
ただ、それだけで……勝手に身体が震えてしまう。


「オレと別れた後も、ずっと待ってたって……言ったよな?」

「………」


──そうだ。

ここに捕らえられて直ぐ、風邪を引いてハイジに看病された時──

竜一との関係を打ち明けるタイミングを見失って。怖さも相まって。
誤解、させたままになっていた……


「嘘、ついたんだろ?
本当の事を言ったら、オレに殺されるとでも思ったンだよな。

───なァ!?」


寄せられる眉根。鋭く尖る目尻。

首に掛かったハイジの手が、黒革の首輪の下に潜り込む。と、首輪が上へと押し上げられ、必然的に顎先が天へと向けられる。
もう一方の手──僕の腕を摑んでいた方の手が外れ、萎え縮んでいる僕の肉茎へと伸びる。


「……」


殺されるかもしれない……って思ったのは、本当……

……でも……嘘、ついた訳じゃない。
ハイジを待ってたのは……本当だよ……


溜まり場を出た後、行き場を失い……そのまま風に流されて、泥水の中に散って沈んでいく僕を掬い上げてくれたのが……竜一だった。


僕は竜一と、一緒になった……けど……

……ハイジと再会して、ここで一緒に過ごしていくうちに、愛おしさが増して……
ハイジの事を知っていくうちに……深い所で繋がっているんだって、気付かされて……


本気、……だったよ。


ハイジとなら、何もかも捨てて。
一緒に逃亡して。

一生、ハイジに添い遂げようと……



「………っ、!」


強く握られたソレを、乱暴に擦り上げられる。
皮を強く引っ張られ。乾いた指で痛めつける様に、何度も何度も──


「何とか言えよっ……、!」


千切れるような鋭い痛みが、脳天を突き抜けていく。


……ッ、痛……ぁ、……!


戦慄く身体。
何度も乱暴に扱かれるソコが、ヒリヒリと痛んで熱を持つ。

「……、っ」

その痛みを逃すように、歯を食いしばりながら息を吐く。意識を他の場所──締められてる首元へと向ければ、少しずつ感覚が麻痺していく。


その刹那──



ぽたぽたぽたっ、……



零れ落ちる、大粒の涙。
ガラス玉のような、綺麗な瞳から。

僕の頬に当たり、既に自身の涙で濡れていたそれと混ざり合う。


……ハイジ……


鋭く尖った眼。
それは、涙で濡れていて。

何処か哀しげに見えて……


手錠のかかった両手をゆっくりと持ち上げ……折り曲げた人差し指の背で、涙に濡れた頬を拭おうと、そっと寄せた。



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