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ハイジ編
94.
しおりを挟むそれが、ホストクラブのオーナー。
大友組の龍成が経営する会員制SMクラブの雇われ店長と裏で繋がっていて、乾燥大麻を安価で横流ししているという。
栽培から乾燥まで、手間の掛かるその作業を請け負わないか、と持ち掛けられ、二つ返事で引き受けたらしい。
「……ハナから信用なんかしてねぇ。
向こうはどうせ、陰で龍成さんの“飼い犬”って呼ばれてるオレに、同情するフリして近寄いて来たヤツだ。……餌付けして、上手いコト手懐けるつもりでいたんだろ」
「……」
「でも、利害一致っつーの?
オレも龍成さんにバレねぇように、手っ取り早く金貯めたかったしな……」
『………クスリだよ』
『オーナーを介して、その知り合いに売り捌いてるんだよ。奴隷として飼育した女性も一緒にね』
麗夜が僕に教えてくれた情報は、強ち間違いじゃなかった……
「まだ二人分には、全然足りねぇ。けど………もう、時間がねぇ……」
「………」
……奴隷嬢。
黒革の首輪に手をやり、そっと触れる。
その様子に気付いたハイジが小さく息を飲み……躊躇いながら、僕のその手の甲にそっと掌を重ねた。
「………痛かった、よな」
ビクンッ、と身体が勝手に震える。
怯えるつもりなんて、全然無かったのに……
「悪ぃかった。………疑って、こんなに傷つけちまって。
……さくらがオレを、裏切る筈なんてねぇのにな」
「………」
ハイジの指先が、僅かに震えている。それを隠すかのように、重ねた僕の手を包んで優しく握る。
嫉妬……だけじゃない。
きっとハイジは、麗夜にある事無い事吹き込まれた僕が、隠れてコソコソと物的証拠を探し出し、ハイジを陥れようとしているのではないかと勘ぐったのだろう。
「……」
それなら、ハイジは……?
指に触れた黒革の首輪の感触を確かめる。
「……ハイジ」
「ン?」
柔く開いた僕の瞳を、潤んだハイジの瞳が優しく包み込むようにして見下ろす。それに縋りつくように、僕は唇を小さく動かした。
「………本当は、僕を……奴隷にするつもり……だったの……?」
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