シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

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ハイジ編

81.

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『……ハイジはよォ……俺らをよくここに呼び集めて、これと同じ首輪わっかをしたオンナを輪姦させてんだぜ』

──クラブで太一に言われた台詞が蘇る。

大音量の音楽が鳴り響き、多彩なディスコライトが踊り狂う中……後ろから抱き締められ、耳元で吐息混じりに囁かれた低い声まで、一緒に。


もし、一年前の僕なら……
ハイジがそんな事する訳ないって、突っぱねてたのに。

今のハイジでは、容易に想像できてしまう……


それが何だか、悔しい。


「……」
「じゃあさ、なんかあったら連絡して」

そう言ってホストが内ポケットから取り出したのは、一枚の名刺。

「これ、渡したい所だけど……証拠残す訳にはいかないから。
番号、今ここで覚えてよ」

その藍色の名刺には、プラチナ色した小さな月と宝石のように輝く星が散りばめられ、真ん中には同系色で『麗夜』の文字。
その下には、携帯番号とアドレス。

その11桁の数字の羅列を、何度も目でなぞりながら頭の中に入れ込む。


「……そういえば、復帰するんだってね。アゲハ」
「え……」

見開いた目を、麗夜に向ける。
アゲハが、芸能界に復帰?

「来期のドラマと、来年公開予定の映画に急遽出る事になったらしい」
「………」


夢の中では、血塗れだった──


でも、思い返してみれば……約束したピアスを、返して貰っていたんだっけ。


……そっか……

良かった。


「………!」


ホッと胸を撫で下ろし、安堵の溜め息をつく僕の頭に、麗夜の手がそっと乗せられる。

なんでそんな事をされたのか……解らない。


でも……


麗夜は僕を見ながら、僕の中のアゲハを見ているような気がする。

同期とか友達とか……僕にはそういった類の相手はいないし、いた経験もない。

……でも。アゲハの周りには沢山の友達がいて、慕ってくる仲間がいて……


やっぱり、羨ましい。



「……アゲハに、会ったの?」

目を伏せ、麗夜から視線を外す。
苦し紛れに、吐いた言葉。僕とアゲハの差を、見せ付けられた気分。

だけど、もう前みたいに妬んだり恨んだりなんかしない。

「……いや。たまに生存確認するくらいかな。もう俺とは、住む世界が違うしね」

麗夜が電話を掛けるジェスチャーをしてみせる。

「じゃなくても、俺の所にアゲハの話題なら舞い込んでくるし。
一応これでも、ナンバースリーで。太客の中に芸能関係者がいるしね」
「………」

僕には、友達という感覚が解らない。
だから、凄く:単純《バカ》な事を思ってしまうんだけど……


多分、この人

アゲハの事、好きなんだな……


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